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福岡市広報戦略室 公文書毀棄の疑い
~業者選定の採点表を廃棄

2013年3月29日 09:05

 福岡市発注の業務委託をめぐり、市広報戦略室が業者選定の折の委員の採点表を廃棄していたことが明らかとなった。
 廃棄されたのは、高島宗一郎市長の友人で市顧問を務める会社社長・後山泰一氏が選考委員となった3件の業者選定に関する採点表。このうち1件は、後山氏が代表を務める会社の取引先である外資系広告代理店が選ばれた業者選定におけるものだった。
 市側は採点表が廃棄されたことを認めているが、採点表は市の業務の一貫として作成されたものであることから、公文書毀棄(きき)罪にあたる可能性が高い。
(写真は、問題の3件の業務委託に関する契約書)

廃棄された採点表
 採点表が廃棄されたのは、次の3件の業務委託における選考においてだ。

「電子掲示板コンテンツ整備等業務委託」
  契約日:平成23年10月11日
  契約金額:8,570,100円

「テレビを活用した広報業務委託」
  契約日:平成24年7月1日
  契約金額:13,041,000円

「歴史資源とさくらまつりを活かした舞鶴公園の広報・集客事業業務委託」
  契約日:平成25年1月31日
  契約金額:9,999,990円

 HUNTERが福岡市に情報公開請求して入手したのは、昨日報じた後山氏がらみの9件の業務委託に関する文書(参照記事⇒「『腐敗の温床』-歪められた市業務委託の業者選定」 だ。

業者選定における関連文書 通常、市が行う業者選定や指定管理者の選定では、「選考委員会」あるいは「選定委員会」といった名称の業者選定組織を立ち上げ、複数の委員を選んで組織ごとに内規を定める。業者選定を行なった際は、選考過程の正当性を確認するために採点結果の一覧表が残されるが、同時に選考委員個々の採点表も保存されるのが普通だ。事実これまで市が開示してきた様々な業者選定における関連文書には、選定に関わった個人の採点表がきちんと保存されている(右の写真参照)。しかし、開示された9件の業務委託に関する文書のうち、上記3件については選考委員が記した採点表がなかった。

 なぜ採点表がないのか―市長室広報戦略室の職員に尋ねたところ、業者選定の際にその場で採点表の数字をデータにしたため、個別の採点表は必要ないと判断したという。だが、それでは採点結果が正しいかどうかの確認が取れない。採点表はどうしたのか―何度も問い質すうち、渋々ながら採点表を廃棄したことを認めた。

採点表は「公文書」
 福岡市情報公開条例は、公文書について次のように定義している。
実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの》

 業者選定における個々の採点表が、《職員が職務上作成し、又は取得した文書》であることは紛れもない事実だ。さらに、業者選定における採点結果の一覧表は、個々の採点表に基づき作成されたものであり、この段階で採点表が「組織的に共有」されたと見なすべきである。当然、《保有》していなければならない。

 一方、刑法は、公的機関が保管している文書や電磁的記録を捨てたり破壊した場合について、公用文書等毀棄(きき)罪(一般的には『公文書毀棄』)として、『公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、3月以上7年以下の懲役に処する』と規定している。採点表を廃棄した市広報戦略室の行為は、この公文書毀棄にあたる可能性が高い。

市民オンブズマン福岡・児嶋研二代表幹事の話
 公文書の専門家である「市民オンブズマン福岡」の児嶋研二代表幹事は次のように話している。
「市の業務の一貫として業者選定が行なわれており、採点表はこの過程で作成されたものだ。間違いなく公文書にあたる。さらに、採点結果の一覧表を作るためには個々の採点表が必要だったはずで、この段階で組織的に共有されたものと見なすべきだ。
 問題は、採点表がなければ選考結果が正しいかどうかの判断が下せず、行政としての説明責任が果たせなくなることだ。採点表は単なるメモ、などという言い訳が通用しないのは言うまでもない。
 トップである市長の姿勢次第で行政は変わる。不適切な業者選定が行なわれ、公文書が捨てられるなど市役所全体が弛緩した状態になっているのは、市長の責任が大きい」。



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