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文書開示に1年、2年はあたり前 際立つ防衛省の隠蔽体質

2018年5月14日 08:50

0423_jieitai-thumb-250xauto-24294.jpg 防衛省は今月8日、統合幕僚監部の30代の3等空佐が、野党議員に「国民の敵」などと暴言を吐いた問題の最終報告を公表した。一部の暴言については認めたものの、私的な立場の言動だったとして「シビリアンコントロール(文民統制)を否定するものではない」との結論。自衛隊法に規定する“品位を保つ義務”違反を理由に、内部規定に基づく訓戒処分でお茶を濁している。
 私的な立場というが、問題を起こした3等空佐は現職の自衛官。政治家のような都合の良い公私の使い分けは、この組織の上層部が、かつての大本営と同じ方向性を持っていることを示している。隠蔽を繰り返すのも旧軍と同じ。日報問題で露呈した防衛省の隠蔽体質は、救いようのない酷い状況となっている。

■自衛隊機事故の記録、開示は「1年後」の非常識
 今年2月、佐賀県神埼市の民家に、陸上自衛隊目達原駐屯地所属の攻撃ヘリ「AH-64D(通称:アパッチ・ロングボウ)」が墜落し、自衛隊機の安全性に疑念が生じる事態となった。昨年来、沖縄県における米軍普天間基地所属のオスプレイやヘリの事故が相次いでいるが、自衛隊機も同じだ。絶対にあってはならない事故を、これまでに何度も起こしている。

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 第2次安倍政権が発足したのは2012年。この年以降、自衛隊機の事故は増加傾向にある。集団的自衛権や改憲といった政治課題が登場し、右寄りの風潮が強まるにつれ、自衛隊機の大きな事故が増えているということだ。

 それでは、「部品落下」などまで入れた自衛隊機の事故は、どの程度起きているのか――。今年3月、防衛省に対して情報公開請求し、『平成19年度から本年度にかけて起きた陸・海・空自衛隊の航空機(ヘリコプター含む)の事故(部品落下含む)の報告書』の開示を求めていた。これに対する同省の対応が、下の通知である。

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 通常30日の開示決定期限を2週間以上遅らせておきながら、さらに延長。請求から80日かかって一部の報告書だけ開示し、残りはまだ先になるのだという。最終期限はなんと来年の4月。請求から1年というふざけた対応である。

 通知文書で、期限延長の根拠とした“法の11条”とは、情報公開法(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」)の11条にある(開示決定等の期限の特例)の規定。条文は次のようになっている。
《開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため、開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、前条の規定にかかわらず、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし、残りの行政文書については相当の期間内に開示決定等をすれば足りる。この場合において、行政機関の長は、同条第一項に規定する期間内に、開示請求者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない》

 “航空機事故に関する文書が著しく大量”であるため、期限を1年間延長するということなのだが、この主張は信用できない。防衛省では、都合の悪い情報について開示決定期限を大幅に遅らせることが常態化しているからだ。

■日報の開示は「2年後」
 昨年2月、南スーダンの自衛隊PKO部隊がどのような状況の中で活動を行ってきたのか確認するため、防衛省に対し平成28年度分の日報とモーニングレポート及び両文書に関する省内の決裁文書を開示するよう求めていた。この時の防衛省側の対応が下の文書である。

1-日報 通知.jpg

 第一段階は期限を守るものの、最終的な決定を平成31年3月1日まで延期するという内容。なんと2年間も、開示決定をしないというのである。昨年、国会で追及されて、渋々出したのが4か月分の日報。この作業には1か月とかからなかった。残り8か月分の日報を開示するのに、2年もかかるはずがない。つまりは、時間稼ぎによる「隠蔽」。南スーダンから自衛隊部隊を撤退させてしまえば、他の事案に追われて世論も沈静化すると考えた結果だろう。

 南スーダンに派遣されたPKO部隊の日報も、人道復興支援のイラク派遣(03年12月~09年2月)の日報も、防衛省が「ない」と断言した後に見つかった。当然あるべき自衛隊機事故の記録は、1年待たなければ出さないという。一連の同省の行為は、「隠蔽」に他ならない。情報公開制度の形骸化は明らか。安倍政権と防衛省への信頼は、薄れる一方だ。この状態で自衛隊を憲法に明記することが許されるのか――?国民に問う前に、防衛省内部の掃除が必要だろう。



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