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政府機関、「甑断層」の九電評価も否定 
再評価で指摘された危険性 ― 問われる九電の見識

2013年3月26日 08:30

20111130_h01-01t.jpg 今年2月に公表された政府・地震調査研究推進本部の「活断層再評価」に至る分科会の議論において、否定された形となった九州電力による川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)近辺の活断層に対する評価。昨日までに報じたのは「市来断層帯」に関する評価の違いだったが、新たに、川内原発付近の別の活断層についても、九電の評価が否定されていたことが分かった。
 再評価結果と九電の資料を見比べていくと、全ての活断層の長さを過小評価し、川内原発の地震に対する脅威を隠そうとしていた九電側の思惑が浮かび上がる。

甑断層帯
川内原子力発電所敷地周辺・敷地近傍の地質・地質構造(補足説明:その2) HUNTERが文部科学省に情報公開請求して入手した地震調査研究推進本部地質調査委員会長期評価部会の分科会議事録や同本部事務局の説明によれば、活断層再評価にあたって基礎資料となったのは、九電が平成21年に国に提出した『川内原子力発電所敷地周辺・敷地近傍の地質・地質構造(補足説明:その2)』(右が表紙。以下「九電資料」)である。

 九電資料は、川内原発周辺の活断層をF-A、F-B、F-C、F-D、五反田川断層、F-E、F-Fの7つに分けて評価しているが、昨日までに報じた通り、地震調査研究推進本部ではF-C断層、F-D断層、五反田川断層をそれぞれ甑海峡中央区間、吹上浜西方沖区間、市来区間と呼んで再評価していた(参照記事⇒「否定された九電・原発周辺活断層評価」)。

 残るF-A、F-B、F-E、F-Fの活断層は、地震調査研究推進本部の再評価では上甑島北東沖区間、辻の堂断層を含む区間および甑区間の三つに区分され、「甑断層帯」として再評価されていた。下左が九電の資料、右が推進本部の公表資料にある図面である。

九電資料にある川内原発付近の活断層分布図  推進本部の公表資料にある図面

否定された九電の活断層評価
 それぞれの断層についての九電側の評価と、再評価結果は大きく違っている。
 まず、九電資料における評価である。

【F-A断層】
 F-A断層については、活動性を考慮し、北東部は断層が認められないs14測線まで、南西部は後期更新世以降の地層に変位・変形が認められないNo21m測線まで延長した長さ約18kmとして評価する。

【F-B断層】
 F-B断層については、活動性を考慮し、北東部は後期更新世以降の地層に変位・変形が認められないs24測線まで、南西部は断層が認められないs30測線まで延長した長さ約15kmとして評価する。

    【F-A断層とF-B断層の連続性について】
    • F-A断層及びF-B断層はそれぞれ累積的な変位・変形構造が認められ、F-B断層の北東側の伏在断層については後期更新世以降の活動は認められない。
    • ブーゲー異常においては、F-A断層及びF-B断層周辺では連続する構造が認められるものの、前期更新世の地層であるC層の層厚分布の形態等からは、両断層が連続する構造は認められない。
    • 後期更新世以降の活動が認められる両断層の離隔は5km以上である。

     以上のことから、F-A断層及びF-B断層は連続しないものと判断した。

    F-A断層とF-B断層の連続性について

     一方、地震調査研究推進本部の再評価ではこうなる。

    【地震調査研究推進本部の再評価】
     甑区間の北東端の位置及び南西端の位置については九州電力株式会社(2009)に示されている。九州電力株式会社(2009)は、本評価の甑断層が上甑島の南方海域において途切れ、これより北東側をF-A 断層、南西側をF-B 断層とした。九州電力株式会社(2009)は、この活断層が途切れるとした区間における構造について、地下でF-A 断層とF-B 断層をつなぐように伏在するものの、海底に近い部分にみられる反射面の不連続は不整合面であり、活断層ではないとした。
     ところで、甑断層は重力異常の勾配の大きい領域に一致し、この領域は九州電力株式会社(2009)が活断層ではないとした区間でも認められる。また、この不整合面とされた区間を含む甑断層の南西部分の音波探査断面には、海底に窪地状の地形が存在し、さらに、九州電力株式会社が不整合面とした反射面の不連続の上盤側では地層に引きずり状の変形が認められることから、甑区間の活動を示している可能性がある。
     以上のことから、甑区間は上記の北東端から南西端にかけて途切れることなく断層が連続して分布しているものと推定した。

     九電の活断層評価は、完全に否定された形だ。

    意図的に過小評価の可能性も
     この結果、甑断層帯全体の長さは約39 kmとされている。九電側が主張するようにF-A断層とF-B断層が別の活断層であるなら、それぞれを震源として発生する地震の規模は小さくなる。しかし、地震調査研究推進本部の再評価に従えば、F-A断層とF-B断層は連続した活断層で、39キロという長大な区間を持つ活断層となる。当然、発生する地震の規模はかなりの大きさとなる。九電は、川内原発の危険性に対する世論の高まりを恐れ、意図的に断層の規模を過小評価したとしか思えない。

    川内の.jpg 地震調査研究推進本部の活断層再評価には、「今後の課題」として、次のように記されている。

    《甑断層帯においては、過去の断層活動に関する調査研究が行われておらず、現状では地震後経過率等の評価を行うことができない。今後、最新活動時期や平均活動間隔など、過去の断層活動を明らかにするための調査が必要である。甑区間は、推定される活動時の地震規模がM7.5 程度と大きいうえ、上下方向のずれを伴う沿岸海域の活断層であることから、津波の発生を検討する必要がある》。

     「M7.5」、「津波の発生」― 政府機関が甑断層帯について大きな危険性があることを指摘した形だが、これは川内原発の安全性に警鐘を鳴らしたも同然だ。
     右上の写真は、川内原発の現在の状況である。川内原発の温排水を放出する「放水口」近くの砂浜から撮影した一枚だが、一帯に樹木が生い茂るだけで、防潮堤などの整備は行なわれていない。これで本当に安全と言えるのか?
     今後は、原子力規制委員会が、地震調査研究推進本部による活断層再評価を受けてどう動くのかが注目されるが、まず問われるべきは、杜撰な活断層評価で川内原発の危険性を糊塗してきた九電の見識である。



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