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否定された九電・原発周辺活断層評価
― 意図的に過小評価した疑いも

2013年3月25日 11:00

川内原発 政府の地震調査研究推進本部が今年2月に公表した「活断層再評価」で、九州電力による川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)近辺の活断層評価を大幅に見直す結果を出していた。
 同本部地質調査委員会長期評価部会の分科会は、議論の基礎資料となった九電の地質調査結果を厳しく批判しており、事実上九電の活断層評価を否定した形だ。 
 関連資料から、川内原発付近の活断層評価について、何がどう変わったのかを2回に分けて検証していくが、まずは陸域から海へと延びる「市来断層帯」(五反田川断層)についてである。
(写真は川内原発)
 
市来断層帯
 文部科学大臣を本部長とする地震調査研究推進本部は、平成22年に次のような新たな評価手法を取り入れ、同本部地質調査委員会長期評価部会の分科会で議論を行っていた。

  • 対象地域に分布する活断層で発生する地震を総合的に評価する「地域評価」の導入
  • 評価対象とする活断層の見直し
  • 地表の長さが短い活断層における、地質や地球物理学的情報を用いた地下の震源断層の位置・形状(長さなど)の評価等を含めた新たな評価

 こうして対象とする地域ごとに総合的に評価され、2月に公表されたのが九州地域の活断層地域評価である。
 
 当初HUNTERが注目したのは、今回初めて評価対象とされた川内原発近くの陸域から西側海域に延びる「市来断層帯」だった。そのため、文部科学省に同断層帯について議論した折の関連資料を情報公開請求し、平成24年5月から7月にかけて行われた第16回、第17回、第18回の地質調査委員会長期評価部会の分科会議事録を入手した。
 その結果、分科会で批判対象となったのが、議論のための基礎資料にもなった九電が平成21年に国に提出した『川内原子力発電所敷地周辺・敷地近傍の地質・地質構造(補足説明:その2)』(以下、「九電資料」)であることが分かった。

 九電資料では、川内原発近辺の活断層を、F-A、F-B、F-C、F-D、五反田川断層、F-E、F-Fの7つに分けて評価していた。下の図、左が九電資料にある川内原発付近の活断層分布図、右が地震調査研究推進本部が公表したものである。

九電資料にある川内原発付近の活断層分布図  市来断層帯

 比べて分るように、地震調査研究推進本部がひとくくりに「市来断層帯」として再評価したのが、九電資料にあるF-C断層、F-D断層、五反田川断層の3つの活断層で、それぞれを推進本部の公表結果に当てはめると次のようになる。
F-C断層=甑海峡中央区間
F-D断層=吹上浜西方沖区間
五反田川断層=市来区間

再評価―延びた活断層
 公表された再評価結果で最も分かりやすかったのが九電資料でいう五反田川断層、すなわち地震調査研究推進本部が「市来区間」と名づけた断層の長さの違いである。

五反田川断層  市来区間

 従来の「五反田川断層」が、再評価結果では、灰色の帯部分も含め大幅に西の海上側に延びており、甑海峡中央区間の断層と交わる形となっている。これによって九電が19キロとしていた活断層の長さが、再評価では「25キロ」となっているのである。

 分科会の議論では、九電の活断層評価について「参考資料3-1-2の解釈はとにかくひどいものである」と酷評、「最もひどいのは、地表面(海底面)にまで断層変位が及んでいるにも関わらず、断層の存在を全く無視していることである」とまで言い切っていた。

再評価―倍に延びた活断層の存在
 市来断層帯を形成する他のふたつの活断層についても、九電の評価と地震調査研究推進本部の再評価結果には大きな違いがある。

 九電はF-C断層について、《F-C断層については、活動性を考慮し、北東部は断層が認められないs17測線まで、南西部は後期更新世以降127の地層に変位・変形が認められないs25測線まで延長した長さ約16kmとして評価する》としていたが、推進本部はF-C断層を「甑海峡中央区間」とした上で、次のように再評価している。


《薩摩半島の西方沖合の甑海峡の南に分布する北東-南西走向に延びる断層で、北西側が相対的に隆起する正断層である可能性がある。全体の長さは38 km 程度の可能性がある》。

 活断層の長さについて、九電は16キロとしているのに対し、国はその2倍以上の38キロと結論付けているのだ。

 F-D断層=吹上浜西方沖区間も同様で、活断層の長さが倍以上に延ばされている。
九電―《F-D断層については、活動性を考慮し、北東部は後期更新世以降の地層に変位・変形が認められないNo21測線まで、南西部は後期更新世以降の地層に変位・変形が認められないNo26測線まで延長した長さ約10kmとして評価する。》。


再評価―《吹上浜西方沖区間は、薩摩半島の西方沖に分布する北東-南西走向に延びる断層で、南東側が相対的に隆起する正断層である可能性がある。全体の長さは20 km 程度以上の可能性がある》。

 地震調査研究推進本部が「市来断層帯」として新たに評価し直した三つの活断層は、いずれもその区間が大幅に延びており、九電側が、活断層の長さを意図的に短くしていたとしか思えない結果だ。

拡大した地震規模
 活断層の長さは、引き起こす地震の規模に直結する。公表された地震調査研究推進本部の再評価結果には、次のように記されている。

活動時の地震規模
 地下の断層の長さなどに基づくと、市来区間、甑海峡中央区間、吹上浜西方沖区間のそれぞれが活動した場合、市来区間ではマグニチュード(M)7.2 程度、甑海峡中央区間ではM7.5 程度、吹上浜西方沖区間ではM7.0 程度以上の地震が発生する可能性がある》。

 これまで国や九電は、川内原発の安全性を強調し、地震に対する備えは万全であると言い続けててきた。しかし、判断の前提となる周辺の活断層調査が、杜撰―もしくは虚構だった場合、話が変わってくることは言うまでもない。
 じつは、地震調査研究推進本部の再評価で否定された九電の活断層調査は、市来断層帯に関するものだけではなかった。



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