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鹿児島・県営住宅増設 なかった事業収支の試算

2013年2月13日 09:35

 鹿児島県が鹿児島市松陽台町で進める県営住宅増設が、事業として成り立つかどうかの見通しさえ立っていない杜撰な計画に基づくものであることが明らかとなった。
 
 地元住民の反対をよそに強引に計画を進めてきた伊藤祐一郎知事だが、計330戸もの県営住宅建設にともなう事業収支の試算をまったく行っておらず、県民への説明責任さえ果たせない状況だ。

県営住宅増設問題の経緯
 問題の住宅増設計画は、平成15年から鹿児島県住宅供給公社が販売している分譲住宅地「ガーデンヒルズ松陽台」の土地を鹿児島県が取得し、新たに県営住宅330戸を建設するというもの。
ガーデンヒルズ松陽台 もともと、「商業施設ができます」などといった嘘八百の勧誘文句を並べて、約11haの予定地に戸建用地470区画を販売する計画だったが、170区画程度(平成23年2月までの実績)を売却したところで、方針を大きく変える。
 「店舗等用地」などと説明してきた3区画の土地に加え、ガーデンヒルズ松陽台で最大の面積を占める戸建用区画約5.6 haを、すべて「県営住宅」にすると伊藤祐一郎知事が発表したのだ。
 騙された形の松陽台町の住民は、県営住宅増設を白紙に戻すよう運動を続けてきたが、県や鹿児島市はこうした声を無視して強引に計画を進めてきたという経緯がある。

事業収支の試算がない!
 HUNTERは先月、松陽台における県営住宅増設が事業として成り立つのかどうかを確認するため、鹿児島県に対し以下の内容で情報公開請求を行った。県営住宅建設は県の単独事業だからだ。
鹿児島市松陽台町に計画されている県営住宅建設計画(事業主体=県住宅供給公社)における収支の試算に関するすべての文書
 これに対し、鹿児島県が開示したのは平成22年度から24年度にかけて作成された年度ごとの部内の予算説明資料。そこに記されているのは、松陽台の土地を県住宅整備公社から買い上げるにあたっての予算額だけだった。

 開示された文書が請求の趣旨と合致していなかったため、県営住宅増設を所管する鹿児島県建築課住宅政策室に確認を求めたところ、事業収支の試算は一切行っていないと明言。土地代金だけが明確になっているだけで、総事業費や維持費、さらには賃料の予測さえ存在しないという。つまりは、赤字になるのか黒字になるのかまるで分からないまま、計画だけが進んでいるということになる。しかも、住民の反対意見を無視してだ。

まかり通る霞が関の手法
 県側は、「(増設される予定の)県営住宅の賃料も決っていないし、もともと低所得者のための住宅整備計画」だと説明しているが、それでは到底まともな公共事業とは言えない。
 松陽台には既存の県営住宅が存在しており、そこの賃料が新たに県営住宅を増設する際の一定の基準となることは明らか。他地区の県営住宅の賃料も参考にするなら、事業として成り立つかどうかの試算くらいは十分に行うことが可能なはずだ。また、試算がなければ県民への説明責任も果たせない。

 事業収支の見通しも立てないまま、巨額な公費を投入するバカな首長がいるとは思ってもみなかったが、霞が関官僚(総務省)出身の伊藤祐一郎鹿児島県知事は、収支のことなど意に介さなかったのだろう。結局、はじめに公共事業ありきの霞が関的手法がまかり通る格好となっている。

住宅供給公社の杜撰な販売計画 
 ガーデンヒルズ松陽台を販売してきた外郭団体「鹿児島県住宅供給公社」は県と一体の組織だが、現在の伊藤県政を象徴するかのような杜撰な態勢であることが、地元住民の情報公開請求によって明らかとなっている。

 下の文書は、松陽台の住民が県住宅供給公社に情報公開請求して入手した公社内の事業計画だが、年度ごとの資料のうち「ガーデンヒルズ松陽台」の欄に並んでいるのは、希望的観測に基づく販売戸数であり、実際にはまったくといって良いほど売却が進んでいない。平成22度からは、県が購入を決めた県営住宅用地の売却益を計上して数字を膨らませているが、戸建用地は一向に売れていないのだ。
 架空の数字を並べることに何の意味があるのか分からないが、鹿児島県の住宅供給公社は、こうした杜撰な仕事で給料をもらえる組織らしい。

分譲事業 (1)

分譲事業 (2)

 県営住宅の建設は鹿児島県が行う事業であるため、土地を売るだけの公社には試算など必要ないのは分かる。しかし、言葉巧みに戸建分譲地を買わせた以上、県と一体の組織として住民の疑問に答えるだけの準備をしておくのはあたり前のことではないのだろうか。
 杜撰な土地売却計画を見せられた地元住民が、呆れているということを付け加えておきたい。
 公社の売却計画を見た地元住民がつぶやいた―「これじゃ(分譲地は)売れないわな」。

「低所得者のための住宅」―知事発言との矛盾 
 気になるのは、HUNTERの質問に答えた県職員の「低所得者のための住宅整備計画」という一言である。
 これまで県は、松陽台に建設する県営住宅について「低所得者のための住宅」などと主張したことはない。伊藤知事自身、昨年2月の記者会見で松陽台の県営住宅増設について次のように述べている。

「我々のプランをしっかりと見ていただければありがたいと思うのですが、あそこにこれから建てようとする県営住宅は、従来の団地型の住宅では全くありません。クラスターゾーニングに近いような形で、2~3階建ての施設を入れていきますので、非常にハイグレードの居住群になります。そしてそこに緑を入れ込んで、県営住宅でありますから、それは子どもたちを持った世代の方々が中心という事かと思いますが、原良団地との総体の問題もありますので全てがそういう事ではありませんが、そういう意味で新しいコミュニティーを作る。そして、しかも鹿児島市へのアクセスは極めて良いかと思いますので、そういう意味での新しい県営団地として造るとなると、戸数が足りている中での県営団地の計画というのは、一部はこれから当然に都心型ではなくて郊外型にシフトすると思うのです。従来からあるご老人のものはご老人のもので都心にキープしながら、周辺の郊外型に展開していくという、そういう過程をたどらざるを得ないと思いますのでそういう対応を住んでおられる方々にも一生懸命説明したいと思います」。

 この発言のどこにも、「低所得者のための住宅整備計画」のにおいはしない。むしろ子育て世代向けの住宅建築計画であるかのような説明だ。
 それでは松陽台の県営住宅増設は、低所得者のためか、子育て世代のためか?

 答えが前者であることは、今月4日に報じた記事(⇒『踏みにじられる住民の声』の中の松陽台の主婦の話を再読すれば分かるだろう(以下、一部を抜粋)。
「行政は、子ども会の活動がどれだけ大変かご存知でしょうか。毎回自宅から約3km離れた小学校体育館、教室を借りて行なってるんです。参加者や協力者も当然少なく、これでどうやって絆を育み、子どもを守れと言うのでしょうか。
 これから20年後、30年後、この地域でも否応なく高齢化が進みます。住宅しか存在しない地域が、果たして幸せな街でしょうか。
 店舗、公共機関、金融機関、医療機関など一切なく、子育てを含め、社会環境が整っていないのです」。

 伊藤知事の説明が真っ赤な嘘であることは、地元の住民が一番よく知っているのである。鹿児島県の職員が正直であるということが分かっただけでも、救いがあると言うべきだろうか・・・。



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