政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

傀儡の証明
―突出する麻生副総理関連団体から小川福岡知事側への寄附―

2013年1月11日 09:05

報告書.jpg 平成23年4月の選挙で初当選した小川洋福岡県知事の政治団体に、麻生太郎副総理兼財務・金融相の二つの関連政治団体が、計700万円の寄附をしていたことが明らかとなった。

 昨年11月に公開された平成23年分の政治資金収支報告書の記載からわかったもので、知事側への個別の寄附としてはもっとも高額。副総理と麻生前知事を後ろ盾に知事への階段を駆け上った小川氏に対する、「傀儡」との批判を資金面で裏付けた形だ。

副総理関連政治団体から700万円
収支報告書 麻生副総理の関連政治団体「九州素淮会」と「麻生太郎後援会(麻生太郎と21世紀の会)」から寄附を受けていたのは、小川知事を支援する政治団体「福岡県の未来をつくる会」。

 福岡県選挙管理委員会に提出された平成23年分の政治資金収支報告書によれば、同団体は、平成23年2月15日に九州素淮会から500万円、同年3月2日に麻生太郎後援会(麻生太郎と21世紀の会)から200万円の寄附を受けていた。
(右は収支報告書の該当ページ。クリックすると拡大。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

 福岡県の未来をつくる会が同年中に得た総収入は、1億2,043万8,237円。その内訳は次の通りだ。

・政治資金パーティ「おがわ洋さんを励ます会」収入 7,946万4,851円
・政治団体からの寄附 1,140万円
・その他の寄附・収入 42万3,129円
・小川知事本人による同会への貸付 2,915万257円

 貸付金を除くそれぞれの収入を確認したところ、個別の寄附で最大のものが九州素淮会からの500万円で、次いで麻生太郎後援会(麻生太郎と21世紀の会)からの200万円となっていた。
 麻生副総理側からの寄付金合計は700万円となり、他の団体からの寄附額から突出した格好だ。

つくる会.jpg 麻生氏側からの寄附に大きな意味があったことは、福岡県の未来をつくる会が設立された日と寄附の実行日から分かる。(右がつくる会の設立届)

 つくる会の設立は平成23年2月10日で、九州素淮会からの寄附はそのわずか5日後である15日。この間、他団体などからの寄附は一切なく、次に大きな寄附があるのは3月2日。これが麻生太郎後援会(麻生太郎と21世紀の会)からの200万円だ。
 麻生副総理側からの寄付700万円が、つくる会の“運転資金”になったことがうかがえる。

 つくる会はこの後、東日本大震災が発生した3月11日からわずか1週間後の18日、批判をよそに政治資金パーティ「おがわ洋さんを励ます会」を開催し、8,000万円あまりの資金を得ていた。
(参照記事⇒「福岡知事選出馬予定者陣営が「資金パーティ」 震災への配慮なし」)

小川知事―ダブル麻生・九電前会長との蜜月
 小川知事には、就任以来「傀儡」との批判が付きまとってきた。理由は知事の誕生過程にある。

 小川知事の関連政治団体はふたつで、つくる会のほかに「小川洋後援会」がある。両団体の代表は九州電力の前会長・松尾新吾氏だ。
 福島第一原発の事故によって電力会社に対する厳しい視線が集まっていた中、九電は“やらせメール事件”で信用を失墜させた。九電にかつての威光はなくなったが、それでも小川知事は松尾氏を後援団体のトップに据えたままだ。松尾氏を切ることができないのは、次のような経過があったからに他ならない。

 平成22年10月、麻生前知事が引退を表明。その直後から、麻生太郎副総理と現職知事(麻生渡氏)による小川氏擁立劇が幕を開ける。小川氏は、副総理にとっての元部下(小川知事は麻生内閣時代の広報官)、前知事からすれば年次がモノをいう霞が関の後輩だったのだ。

 しかし、「地方主権」が叫ばれながら中央省庁のキャリア官僚を知事に据えることは明らかに矛盾している。自民県連内部からは同党県議団の実力者である元議長を推す動きがあったが、ダブル麻生は小川氏擁立に固執する。ふたりが頼りにしたのは経済界だった。

 候補者が小川氏に収斂されていくまでの過程で、リードオフマンを務めたのは、ダブル麻生の意を受けた当時の九電会長・松尾新吾氏。九州経済界トップの九州経済連合会会長でもあった松尾氏は、麻生前知事や副総理と極めて近い関係にあることが知られている。

 ダブル麻生の要請を受けた松尾氏と周辺の経済人たちは、まず連合福岡と創価学会の幹部を説き伏せ、「支持」を取り付けることに成功する。これによって公明の議員は学会に呼応し、民主の各級議員らが独自候補擁立に関して腰砕けとなったことは言うまでもない。
 流れは一気に小川氏へと向かい、多党相乗りが実現したが、呆れた有権者が棄権に回った結果、選挙は投票率41.52%で過去最低、「無効票」を約84,000票も出すという結果を招いていた。

 副総理、前知事、そして前九電会長。3人と小川知事との関係を示すかのように、知事選においては松尾氏が選対本部長に就いたほか(後援会長も兼任)、副総理と前知事の事務所スタッフが総出で小川選対を支えていたことが分かっており、傀儡批判が出るのは当然の成り行きだった。知事と3人の蜜月は、現在も続いている。

 昨年暮の総選挙で、自民党が圧勝。平成21年の首相時代、同党下野の原因をつくった麻生太郎氏が副総理兼財務相として復権し、公共事業ばら撒きの指揮をとる。
 武田良太会長が辞任するなど、混乱の兆しを見せ始めた同党県連だが、副総理の影響力が強まったとする見方が大半だ。

 県政界を牛耳る構えの副総理が傀儡知事をどのように使うか注目であるが、小川知事の関連政治団体には、別に重大な問題がある。



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲