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福岡知事選出馬予定者陣営が「資金パーティ」 震災への配慮なし
~問われる九電会長ら関係者の資質~

2011年3月18日 19:30

 18日、福岡市博多区のホテルで、4月の福岡県知事選挙への出馬を表明している元内閣広報官・小川洋氏陣営の政治資金パーティ「おがわ洋さんを励ます会」が開催された。主催は福岡の経済界関係者らを中心に組織された小川氏の支援団体「福岡の未来をつくる会」(代表:松尾新吾九電会長)で、地元経済界関係者ら約1000人(主催者発表)が集まった。パーティ券はなんと1枚2万円だという。少なくとも2,000万円以上の金が小川陣営に流れ込んだことになる。
 今月11日に起きた東日本大震災で国が揺れるなかでの金集め。こんな人たちに福岡県を任せておけるのだろうか。

政治資金パーティ「おがわ洋さんを励ます会」

被災地からは悲痛な声
 震災被災地では、いまも懸命の救出作業が続いており、避難所では、多くの被災者が寒さと物資不足に苦しんでいる。2000か所を超えるといわれる避難所では、食料も毛布も燃料も足りないといった現状だが、物資輸送体制の確立が遅れており、救援物資は行き渡っていない。伝えられる被災者の声は悲痛だ。追い打ちをかけるように東京電力・福島第一原子力発電所では、1号機から4号機までがメルトダウンを疑われる事態となっており、放射性物質の飛散が懸念される。

経済への打撃
 震災は、国内経済にも重大な影響を及ぼしている。トヨタをはじめ自動車各社や大手企業が工場の稼動を止めているほか、円が急騰し、17日には海外の外国為替市場で1ドル=76円25銭まで上昇、約16年ぶりに戦後最高値を更新した。輸出産業への打撃は深刻だ。株式市場も穏やかではない。
 全国各地でスポーツやイベントの自粛が広がっており、各種催事も軒並み中止または延期といった状況で、景気の悪化に拍車をかけそうだ。まさに「国難」である。
 しかし、被災地救援に向けて、多くの国民、そして諸外国までが手を差し伸べており、復興に向けての活動も始まった。同胞として、被災地の人々と労苦を共にする覚悟が求められている。

無神経な「政治資金パーティ」
 そんな時に、ホテルで選挙のための金集めパーティである。
4月10日を投・開票日とする福岡県知事選挙は、麻生渡知事が後継指名した小川氏に、民主、自民、公明などの主要政党や連合福岡、農政連などが相乗りし、共産党推薦の元北九州市議・田村貴昭氏との一騎打ちになる公算が高い。
 小川氏陣営の主力は、「相乗り」を推進した松尾新吾九電会長ら福岡の経済界だ。「億単位の金が必要」(県議会関係者)といわれる知事選だが、政党でも政党支部でもない小川氏の支援団体は、政治資金パーティを開かなければ「企業の金」を集めることができない。政治資金規正法は、政党および政治資金団体(政党が政治資金を得るため法律に基づき届出をした団体)以外の政治団体に対する企業献金を禁止しているからだ。
 別の県政界関係者は次のように話している。「個人献金だけでは全県選挙を戦うことはできない。共産以外の主要政党が相乗りし、連合や農政連、財界などが支援する候補として恥ずかしくない態勢を整えようとすれば、どうしても企業、団体の金をもらうしかない。これまでの麻生知事の政治資金も、福岡、北九州、筑豊、筑後の4ヶ所で開いてきた政治資金パーティによってもたらされてきた。小川さんもそうするしかない。だけど、この時期に、被災地のことも考えずに政治資金パーティはない。空気が読めないというか、非常識というか・・・」。

 政治団体による政治資金パーティとは、「対価を徴収して行なわれる催事」(政治資金規正法第8条)であり、小川氏陣営のパーティが開かれた福岡市内のホテルの会場費だけでもばかにはならない。市民感覚からズレている。
 被災地が物資不足にあえぎ、国を挙げて被災地支援に立ち上がろうとしている時に、選挙のためにパーティを開く神経は理解できない。
 一番の問題は、パーティを開いた小川氏の支援団体「福岡の未来をつくる会」や「小川洋後援会」の代表者が、原発事業者である九州電力の代表取締役会長・松尾新吾氏だということだ。

「九電会長」が代表者
 九電は、九州に玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)と川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)を有している。震災による福島原発の事故を機に、九電には、各自治体や議会から原発の耐震基準見直しや安全確保についての要請が出され、市民からは電力会社そのものの隠蔽体質に厳しい目が向けられている。松尾会長が九電トップとして責任を果たすべき仕事は選挙ではなく、原発の安全確認や見直し作業ではないのか。原発事業者である電力各社への信頼が揺らいでいるこの時期に、九電トップが代表を務める団体が政治資金パーティを開くことは、「不謹慎」と言っても誤りではあるまい。
 さらに言えば、松尾氏は九州経済連合会の会長も務めており、文字通り九州経済界のトップだ。国難を前に、国の現状を考え、なすべきことと切り捨てるべきことを峻別すべきだった。多くの市民が義援金集めや支援物資提供に協力し、被災地には救援活動に向かった人たちもいる。経済界として集めるべきは、義援金や救援物資であって選挙資金ではない。小川陣営は、明らかに震災への配慮を欠いている。市民感覚から遊離した集団が打ち出した「県民党」が、いかに胡散臭いものであるか、パーティ開催の強行が如実に物語っている。

小川氏は「内閣報道官」だったはず
 知事選立候補予定者の小川氏は、平成19年から22年までの約3年間、福田、麻生、鳩山、菅の各内閣で広報官を務めていた。小川氏のリーフレットには、『広報官として総理記者会見に何度も臨みました』と記されている。震災発生以来、連日繰り返される首相や官房長官による記者会見を見ていながら、小川氏は何も感じないのだろうか。この時期に政治資金パーティを開くことが、どれほど市民感情を無視するものか分からなかったとしたら、小川氏に知事になる資格はない。もちろん、いま「励ます」相手は、被災地と被災者のはずだ。

 パーティ会場で、主催者「福岡の未来をつくる会」の会計責任者に話を聞いた。

― 東日本大震災で大変な時期だが、パーティの自粛は考えなかったのか?
「いろんな意見が出たが、既にパーティ券を売っており、どうしようもなかった。資金集めだから・・・。その代わり、酒や食事を自粛し、九大教授の講演を聴いてもらうことにした」

― パーティ券は何枚ぐらい売れたのか?
「分からないが、今日は1000人は来ておられるから・・・」

― 代表者の松尾九電会長が主催者を代表して挨拶されているが、まさに九電は原発事業者ではないか。不適切とは思わないか?
「松尾会長に直接聞かなければ分からない」

麻生県政の歪みを露呈
 18日の西日本新聞朝刊は、福岡県の県営住宅課が、震災に遭った福島県の避難2世帯に対し、到着が18日夜で翌19日からは3連休のため業務時間外として鍵を渡さないと説明していたことを報じた(県は報道を受けて方針を転換、取材に対し『一般的なことを言ったつもりが、言葉が悪かった』として、休日中でも鍵を渡すとしている)。
 この非常時に、とんでもない役人達がいたものだが、官至上主義ともいえるこうした県庁の体質は、麻生渡知事による4期16年という長期政権の歪みとも言える。小川氏の支援団体「福岡の未来をつくる会」の資料には"麻生県政の継承を基本"と記されているが、官尊民卑の県政などご遠慮申し上げたい。

 ところで、九州電力の会長に、知事選候補の支援団体の代表を務める資格があるのだろうか? 

(つづく)



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