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福岡知事関連政治団体 不透明な資金処理
23年分収支報告 6,400万円が支出先不明

2013年1月15日 07:30

 小川洋福岡県知事の政治資金処理に疑問符がついた。
 知事選が行われた平成23年分の政治資金収支報告において、小川知事のふたつの支援団体が、政治活動費のうちの多くの支出を、政治資金収支報告書に記載義務のない1件5万円未満の「その他の支出」の合計として一括処理していたことが明らかとなった。両団体ともに、『組織対策費』の支出だけが突出している。
 政治資金規正法上、5万円未満の支出は個別の使途が報告書に記載されず、領収書添付の義務もないため、多くの資金が何に使われたのか分からない状況だ。
 細かな内容の記載義務がない経常経費を除き、使途が不透明な政治活動費にかかる支出の総額は2団体で約3,500万円。経常経費を加えると、実質的な支出の約7割にあたる6,400万円あまりのカネの使途が明かされぬ形となる。

知事選の年―突出する組織対策費
 問題の政治団体は、小川知事が福岡県知事選挙で初当選した平成23年に設立された「福岡県の未来をつくる会」と「小川洋後援会」。両団体とも松尾新吾前九電会長が、設立時から代表を務めている。

 両団体が福岡県選挙管理委員会に提出した同年の政治資金収支報告書によれば、それぞれの政治団体の年間収入と支出、およびそれぞれの内訳は次のようになる。

『福岡県の未来をつくる会』
【収入】
総額:1億2,043万8,237円
・政治資金パーティ「おがわ洋さんを励ます会」収入→7,946万4,851円
・政治団体からの寄附→1,140万円
・その他の寄附・収入→42万3,129円
・小川知事本人による同会への貸付→2,915万257円
【支出】
総額:1億308万2,626円
・事務所費などの経常経費→2,236万6,759円(収支報告書への記載義務なし)
・組織活動費→2,476万6,188円
・選挙関係費→1,649万9,223円
・機関紙誌の発行その他の事業費→987万2,429円
・調査研究費→119万2,364円
・寄附・交付金→2,837万円=小川洋後援会へ2,837万、小川知事洋個人へ1,646万6,300円
・その他の経費→1万5,600円

『小川洋後援会』
【収入】
総額:2,837万266円
・「福岡県の未来をつくる会」からの寄附→2,837万
・その他の収入→266円
【支出】
総額:1,871万1,344円
・事務所費などの経常経費→692万3,161円(収支報告書への記載義務なし)
・組織活動費→1,160万8,143円
・機関紙誌の発行その他の事業費→2万3,152円
・その他の経費→15万6,888円

 下に示した通り、両団体のそれぞれの支出のうち、赤い文字で表記したものが、5万円未満の支出として一括処理された金額だ。

gennpatu 1864410898.jpg『福岡県の未来をつくる会』
・組織活動費→2,476万6,188円(2,152万2,781円
・選挙関係費→1,649万9,223円(3万2,923円
・機関紙誌の発行その他の事業費→987万2,429円(175万1,077円
・調査研究費→119万2,364円(1万9,819円
・寄附・交付金→2,837万円(2万円
・その他の経費→1万5,600円

『小川洋後援会』
・組織活動費→1,160万8,143円
・機関紙誌の発行その他の事業費→2万3,152円
・その他の経費→15万6,888円
(右は「福岡県の未来をつくる会」の組織対策費のページ)

 福岡県の未来をつくる会の支出のうち2,336万2,200円が、小川洋後援会では1,178万8,183円が5万円未満の支出として一括処理されていた。
 特に、組織活動費のうち『組織対策費』における5万円未満の支出が突出しており、両団体合計は約3,300万円となる。

 小川知事の関連政治団体では、選挙の年でありながら、5万円未満の支出ばかりで約3,500万円もの政治活動費を費消したことになるほか、後援会の支出で支払先が分かるものは1件もない。極めて不自然な形だ。

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(「小川洋後援会」の組織対策費のページ)

 つくる会の支出額と後援会の支出額を足すと総計1億2,179万3,970円。政治資金の流れを見ると、2,837万円はつくる会から後援会への迂回寄附となっているため、これを差し引くと実質的な支出は9,342万3,970円となる。

 このうち政治資金収支報告書に記載義務のない事務所費、人件費、光熱水費、備品消耗品費といった経常経費を除く“政治活動費”の中で5万円未満の支出として一括処理されているのは、両団体合わせて計3,515万383円。経常経費の両団体総計2,928万9,920円を加えた金額は6,444万303円となり、前述の実質支出中に不透明な支出が占める割合は約7割となる。

 現時点で違法性はないものの、知事選などの大型選挙で、5万円未満の支出合計がこれほどの額にのぼるのは異例。収支の実態を正確に記載したのか疑わしい状況だ。

重なる麻生前知事の政治資金処理
 不透明な政治資金処理は、会計責任者が同一人物であることから、麻生渡前知事の資金管理団体「清朋会」の手法を踏襲したものと見られる。

 清朋会をめぐっては、平成23年8月の団体解散にともない、清朋会側が福岡県選挙管理委員会に提出した「解散届」に添付された平成23年1月から解散時までの政治資金収支報告書に疑惑が発覚している。

 同会の経常経費を除いた支出のうちの約1,800万円が「組織対策費」として計上され、政治資金収支報告書への記載義務がない5万円未満の「その他の支出」として処理されていた。
 取材したところ、組織対策費として一括処理された約1,800万円の大部分が100万円単位で麻生前知事本人に渡されていたことや、支出先を証明する領収書や帳簿がなかったことが明らかになっている。その後も、清朋会関係者から約1,800万円のカネがどこに消えたのかについての正式な回答は得られていない。(参照記事⇒「消えた1800万円」)
 組織対策費に5万円未満の支出を集中させる手法は、今回の小川知事のケースと同じ格好だ。

 「福岡県の未来をつくる会」と「小川洋後援会」の政治資金収支報告書は、知事の政治資金の動きを正確に反映させているのか?
 関係先への取材を続けたところ、疑問は“疑惑”へと変わっていった。

つづく



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