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消えた1800万円

麻生渡前福岡知事に政治資金疑惑

領収書も帳簿記載もなし

2012年4月 3日 08:45

 麻生渡前福岡県知事の政治資金処理に、重大な疑惑が浮上した。
 
 前知事の資金管理団体「清朋会」(平成23年8月解散)が、昨年の約1,800万円に上る支出について、個別の支払額の確認もしないまま「組織対策費」として一括処理していたことが判明。
 1日までのHUNTERの取材で、費消された政治資金の大半が麻生前知事本人に渡っていたことに加え、領収書や帳簿といった支出先を証明する書類が一切残されていないことも分かった。

 一連の会計処理は、政治資金規正法に抵触する可能性が極めて高い。

約1,800万円の使途不明金
 gennpatu 114020035.jpgHUNTERが確認したのは、昨年8月の解散にともない、清朋会側が福岡県選挙管理委員会に提出した「解散届」に添付された平成23年1月から解散時までの政治資金収支報告書。
 それによると、経常経費を除いた支出のほとんどが「組織対策費」として計上され、政治資金収支報告書への記載義務がない5万円未満の「その他の支出」として処理されていた。
 いわば使途不明の形だが、その金額は約1,800万円に上る。(右は、今月19日に県公報に掲載された同会の政治資金収支報告書の要旨)

 同会の平成23年における収入総額3,332万3,049円に対し、支出総額は3,321万2,084円。このうち人件費などの経常経費支出が1,499万8,155円で、残りの大半を占める1,814万4,369円が「組織対策費」として一括計上されていた。
 つまり、この1,814万4,369円のすべてが5万円未満の支出だったことになるが、同会は解散の前年である平成22年に実質的な活動に終止符を打っており、「組織対策」として小口の現金支出が積み上がる状況にはなかった。

カネは麻生前知事に渡されていた
 清朋会関係者の話を総合すると、組織対策費として一括処理されたことになっている約1,800万円は、全額ではないまでも大半が100万円単位で麻生前知事本人に渡されたという。
 追跡取材の過程で、支出先を証明する領収書が1枚も残されていないことと帳簿への記載さえないことが確認されている。清朋会側も約1,800万円のカネがどこに消えたのか答えられない状況だ。

法的な問題点 
 政治資金規正法は、すべての支出並びに支出を受けた者の氏名及び住所、その支出の目的、金額及び年月日などを会計帳簿に記載することを義務付けているほか、一件5万円以上のすべての支出について、当該支出の目的、金額及び年月日を記載した領収書等を徴し、その上で政治資金収支報告書に1件5万円以上の支出を記載しなければならないと規定している。

 麻生知事に渡った1千万円を超える政治資金の使途は、その内容がまったく分からず、同法上の「虚偽報告」が疑われるほか、麻生前知事が個人的に費消したものなら税務処理上の問題も生じる。

役割終えていた「清朋会」
 麻生前知事の資金管理団体「清朋会」は、麻生県政がスタートした平成7年に設立された政治団体で、代表は前知事自身。同会は、前知事の引退にともない昨年8月に解散したが、政治団体としては、前知事が平成22年10月の福岡県議会において引退表明を行ったあと事実上その使命を終えていた。博多区内にあった清朋会の事務所もこの年の12月に閉鎖されている。
 
 また、昨年2月10日には、麻生前知事が後継指名した小川洋知事の支援団体「福岡県の未来をつくる会」(代表・松尾新吾九電会長)が設立され、4月の知事選に向けた動きが加速。それにともない清朋会関係者も小川陣営に合流しており、清朋会の政治資金を必要としていたのは、麻生前知事本人だけだったことになる。

引退表明後に開催された不可解な政治資金パーティー
 gennpatu 114020034.jpg巨額な使途不明金の伏線になったのは、平成22年11月に開かれた清朋会の不可解な政治資金パーティーである。
 
 前述したように、麻生知事が正式に隠退を表明したのは、同年10月8日の県議会本会議。
 同会における毎年の経常経費は、2,000万円から3,000万円程度で推移しており、平成21年から5,000万円近くの政治資金を繰り越していた清朋会には、この年、それ以上の政治資金など必要なかったはずだ。
 
 しかし、引退表明から40日以上経過した平成22年11月24日、清朋会は福岡市内のホテルで「県政報告会」を開催し、499人から2,586万円を集めていた。(右は、清朋会の平成22年分の収支報告書から)
 引退表明後のカネ集めは異例で、清朋会関係者の間からも、この時期の政治資金パーティーをいぶかしがる声が上がっていたという。
 結果的に見て、麻生知事の狙いは翌年にかけて必要となる「組織対策費」作りだったということになる。

 一括処理という法の抜け道を使い、隠された政治資金の一部が、麻生前知事が後継指名した小川洋現知事の陣営に流れたとの証言もある。

 4期16年に及ぶ長期政権を築き全国知事会の会長まで務めた上、事実上の院政を敷くことに成功した麻生前知事だったが、自身の政治資金管理はあまりに杜撰。晩節を汚す形となった。



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