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世論調査への疑問 

2012年11月27日 12:00

gennpatu 1864410856.jpg マスコミ報道が選挙結果に与える影響は大きい。小泉郵政選挙による自民党の大勝、平成21年の政権交代、いずれもマスコミが大騒ぎして世論を誘導した結果だ。そうした意味でマスコミが「第4の権力」であることは疑う余地もないが、配信される記事の方向性を吟味すると、「世論誘導」への疑いが生じる。
 日本の大手メディアは、公平・公正をうたい、客観報道という隠れ蓑をまとって巧妙に世論を誘導する。道具に使われるのは「世論調査」で、あたかも国民の声が集約されたかのような数字と、それに基づく記事によって流れを作り出していく。
 26日月曜日の朝刊各紙1面には、各政党の比例区での支持率が躍ったが、社によって随分違う結果だった。世論調査の結果は信頼できるのだろうか。

読売・産経の狙いは自民政権
 下は、読売と朝日の26日朝刊である。それぞれ1面トップに比例区投票先に関する自民、民主、維新の獲得数字を大見出しで掲載したのだが、似たような調査でありながら、自民・維新を支持すると答えた人の割合が民主を引き離している。

 一方の朝日。自民がトップであることは同じだが、民主は2位、維新はそれを4%下回る結果である。両紙とも同じ質問に対する回答結果でありながら、なぜこうも違うのだろう。

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 じつは、解散・総選挙が決ってからの世論調査において、読売は常に自民優勢の世論調査結果を大々的に流してきた。産経新聞も同じだ。同時期に出る朝日の調査結果では、自民がトップであることは変わりないが、読売の数字ほど差はついていない。
 読売や産経といった保守層に強い新聞は、自民党が政権に返り咲くことを狙っているとしか思えない。

 言うまでもないが、読売は、憲法改正、原発推進を社是とする新聞であり、明らかに自民党寄りだ。とくに石原慎太郎氏や自民党の安倍晋三総裁といった改憲思想の持ち主を持ち上げる傾向が顕著で、系列のテレビ局も同じ方向性である。象徴的なのが読売テレビ制作の「たかじんのそこまで言って委員会」で、コメンテーターに右寄りの論客をそろえ、過激な内容を売りにしている。安倍氏や橋下大阪市長には寛容だが、護憲論者や民主党には極めて冷淡な番組だ。いっそ、立場を鮮明にして極右を応援しますと言ってしまえば潔いのだが、表面だけ中立を主張するのだからタチが悪い。

 その読売新聞だが、記事の質も記者の質も相当に低下している。
 今年7月、同紙の記者が報道他社の記者に、県警幹部から得た捜査情報(いわゆる「取材メモ」)を誤送信。「情報源の秘匿」という報道の大原則を損なう失態を演じ、西部本社の社会部長や編集局長(更迭)などが処分された(参照記事⇒「読売新聞記者の大失態 ~現職警官逮捕の舞台裏~」。
 その後のiPS細胞をめぐる大誤報については、説明する必要もあるまい。

疑わしい世論調査の精度
 そもそも、世論調査の精度には疑問がある。
 まず、そのサンプル数だ。読売・朝日両紙の調査におけるサンプル数はほぼ同じで、約1,000人の回答結果をまとめたものだ。我が国の有権者数は1億人を超えるが、1,000人程度の回答結果が国民の動向を正確に示せるとは到底思えない。
 極端に少ない調査結果をもって、どこの政党が優勢かを断じ、有権者に予断を与える報道が許されるのだろうか。

 次に、調査対象の問題について考えてみたい。 
 世論調査は固定電話に対するアプローチしか行っておらず、携帯電話利用者は調査対象になっていない。携帯は地域が特定できないため、はなから世論調査とは無縁の存在なのだ。
 携帯電話契約数が固定電話のそれを大幅に上回る時代に、世論調査においてはいまだに固定電話への調査を基に世論の動向を記事にしているのである。これで本当の民意をつかめるとは思えない。

 世論調査の結果に政治家が一喜一憂するようになったのは、小泉内閣時代からといわれる。
 現在行われているような機械的な調査方法が発達し、安易に調査することが可能となったため、頻繁に調査結果を基にした記事が配信されてきた。調査結果にわずかな取材結果を加えるだけで1面トップの記事が出来上がるのだから楽なものだ。

 問題は、少ないサンプル、固定電話という限られた人たちの回答結果が、あたかも国全体の意思であるかのように扱われていることだ。
 「自民優位」、「自民大勝の情勢」などという見出しが躍れば、多くの有権者が右へ倣えをはじめてしまうのは事実。“みんなで渡れば”的な風潮は今も昔も変わらないが、世論調査の結果報道が選挙戦を左右する力を持っていることを忘れてはなるまい。
 肝心なのは、各党・各候補者の主張や本質を見抜く有権者の眼力である。



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