政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

医薬品動物実験企業に虐待・データ改ざんの疑い浮上
「新日本科学」 事実上の取材拒否

2012年10月12日 09:45

新日本科学 前臨床試験といわれる医薬品の動物実験を業務としている一部上場企業「新日本科学」(本社:鹿児島市)に、動物虐待に加え実験データの改ざんを行っていた疑いが浮上した。

 虐待や実験データ改ざんが行われていたのは同社の本社敷地内とされ、HUNTERの取材に応えた複数の元同社社員がこの事実を認めている。

 今月9日から新日本科学側に事実確認を申し込んでいたが、11日までに連絡はなく、取材には応じない構えだ。
(写真は新日本科学本社)

新日本科学
 新日本科学2新日本科学の前身は、実験用動物の飼育販売を主業務として昭和32年に創業された「南日本ドッグセンター」で、昭和48年に事業を法人化し「株式会社日本ドッグセンター」を設立後、翌49年に現在の社名に変更し現在に至っている。(右は本社全景)

 業容拡大にともない、医薬品の前臨床および臨床試験を主業務とする会社に変貌を遂げ、平成16年に東証マザーズに上場、同20年には東証一部に市場変更するまでに成長していた。平成23年3月期の売上げは約109億円。ここ数年、数十億円単位の欠損を出している。

動物実験用のサル 平成18年からは、同社が鹿児島県指宿市に取得した旧グリーンピア指宿跡地を利用して「メディポリス指宿構想」を推し進めるために同社が中心となって「メディポリス医学研究財団」を設立。財団には、陽子線を使ったがんの治療施設「がん粒子線治療研究センター」の事業費などに約60億円(予定分含む)の公費が投入されている。

 今月5日には、その「メディポリス指宿」の敷地内に、動物実験用のサルを大量に飼育する設備が存在していることが明らかとなったばかりだった(参照記事→「陽子線がん治療・保養施設に『動物実験用サル』を大量飼育」)。

衝撃の告発Ⅰ―動物虐待
 巨額な公費投入に疑問を持ったHUNTER取材班がメディポリスの中心企業「新日本科学」に関する取材を続ける中、同社関係者から社内で動物虐待が行われていたとの情報をキャッチ。証言者を探す過程で、複数の元社員から在任中の話を聞く機会を得たが、その内容はあまりに衝撃的なものだった。

 ある元正社員によれば、動物実験が行われていたのは鹿児島市内の本社内。動物ごとに分かれて製薬会社から依頼を受けた実験を担当し、実験が終了した時点で実験用動物を処分していたという。
 この殺処分にあたり、会社幹部が生きたビーグル犬の皮を剥いだり、いきなり首を切断するなどの行為が行われていたと告白。いまだに悲しそうな犬の目が浮かんでくると語り、取材を受けるかどうか直前まで迷ったと苦しい胸のうちを明かした。
 事実なら明らかな動物虐待である。

衝撃の告発Ⅱ―実験データ改ざん
 衝撃の告発はさらに続いた。別の元社員によれば、新日本科学を辞めた理由を、「実験データ改ざんの強制が続き怖くなった」と証言したことだ。

 この元社員によれば、例えばマウスを使った実験では、投与した薬物で50匹死んでも、会社幹部から「10匹」にしろと指示を受け、データとして記入する時にはその指示通りにせざるを得なかったと話す。
 ピルや風邪薬など多くの医薬品前臨床に関わったとしており、実験を依頼した製薬会社名や実験の受託費もハッキリと記憶していた。
 じつは、こうした改ざんが常態化していたため、耐え切れなくなって辞めた社員は少なくないという。

 証言どおり、データ改ざんが事実なら、これまで市販された薬の信頼性が根底から揺らぐことになる。

 なお、元社員らの告発・証言は、動物虐待やデータ改ざんの指示を行なった同社幹部(当時)の氏名、役職をはじめ、場所などの状況が裏づけ取材と一致しており、信憑性が高いことを付記しておきたい。

告発内容に符合する海外での動き
gennpatu 1864410808.jpg 元社員らの告発内容を裏付けるかのような事実は、海外において確認されている。
 動物実験を行っている新日本科学の米国法人「SNBL U.S.A」は、平成22年10月に、アメリカ食品医薬品局(FDA)から実験施設の不備について改善を指示する「WARNING LETTER」(警告状)を出されていた(右はその1ページ目)。

 FDAの警告状は、査察の過程で業務改善が認められない相手に対する最終通告とも言えるもので、従わない場合には許認可や商品の出荷を止められることもある。
 つまり極めて悪質ということであり、その証拠に、発せられた警告状はFDAのウェブサイト上に掲載され、警告を受けた企業が社会的信用の失墜から業績を悪化させることもある。
 日本国内なら会社存続が危ぶまれるほどの事態だったわけだ。

 「SNBL U.S.A」への警告内容は9項目に上るが、実験の報告書作成にあたって義務付けられた“研究者の署名”がない文書を何度も部分的に使用したケースや、定められた実験手順を守っていないことが指摘されており、同社の実験データそのものの信用性を否定するものだった。

 また、実験のスポンサーを招き、実験報告書に批判や校正をさせていたことも明記されており、データ改ざんとしか言いようのない行為を繰り返していたことも明らかだ。
 警告状の最後には、SNBL U.S.Aが改善を図れない場合、資格停止を含む法的手段をとることが通告されていた。

 新日本科学側は、有価証券報告書などの中で、この件について次のように記している。
《また、SNBL U.S.A.,Ltd.は2010年8月にFDA(米国食品医薬品局)からGLP(Good Laboratory Practice)遵守状況に対する改善指示書(WL)を受領したことを受け、抜本的な組織改革を行うと共に、当社グループが総力を挙げて、現場のオペレーションを体系的に再構築し、法令の厳守に加えて、専門的な科学知識や高品質のサービスをお客様に速やかに提供できるように改革に取り組んでおりましたところ、2012年5月3日に、FDAから2011年9月に実施されたGLP調査に関する結果を受領し、FDAが改善指示書において指摘した9項目のうち7項目は再発防止のための十分な措置がとられており、残り2項目も過去に実施した前臨床試験の最終報告書の変更手続きを行い、FDAに提出することで完了できるという内容で、SNBL U.S.A., Ltd.による対応作業は順調に進んでおり、速やかに提出できる見込みです》。 

SNBL U.S.Aでの動物虐待
 SNBL U.S.Aには、動物虐待の疑いも持たれていた。
 今年5月、イスラエルの裁判所が新日本科学に輸出される予定だった子ザルの出荷停止を決めたとされ、原因がSNBL U.S.A内での動物虐待だったことが海外の動物愛護団体によって公表されている。

 ネット上では、SNBL U.S.Aの元従業員による施設内で撮ったと思われる映像も流されており、海外での同社への評判が極めて厳しいものであることが分かる。
 同社の施設内には、実験用のサル4,000匹が飼育されているとされ(新日本科学の公表資料による)、さらなる虐待への疑念が持たれているという。

実験用に霊長類(サル)を売り物にする新日本科学
 新日本科学は、霊長類であるサルを実験用動物にもっとも適していると公言してきた会社である。
 このため米国や中国のほか、日本国内では鹿児島県、和歌山県に実験用サルの飼育施設を有しており、毎年大量のサルを輸入している。
 下の文書は新日本科学の決算報告会資料だ(黄色いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)。

国内前臨床事業の今期計画(新日本科学)   差別化戦略・競争優位性の強化 (3) (新日本科学)

 サルについて、「豊富な品揃え」と表現した上、年間1,000匹以上を輸入していることが誇らしげに記されている。
 元社員たちが告発したような動物虐待が続いているとしたら、法令違反に問われかねない事態なのだが・・・・。

「NPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA)」のコメント
 一連の告発内容について、動物愛護団体 「NPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA)」は、次のようにコメントしている。
 <おぞましい行為です。
 動物の愛護及び管理に関する法律に基づく基準「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(平成18年4月28日に実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準に改正)において、「実験等を終了し、又は中断した実験動物処分するときは、速やかに致死量以上の麻酔薬の投与、又は頸椎脱臼等によって、実験動物にできる限り苦痛を与えないようにすること」と規定されています。
 そして、犬については、麻酔薬(バルビツレイト)の静脈注射か炭酸ガス吸入の方法が同基準の「解説」に記されており、「生きたまま皮をはいだ」「頭を切り落とした」という殺処分方法は明らかに違反する行為なのです。

 そもそも、生きたまま皮をはぐという行為は殺処分方法ではなく、実行者はいたずらに犬を痛めつけるためだけに行ったのではないかとさえ感じます。
 動物実験という虐待で散々苦しめられた後、殺処分される実験動物は、例外なく不幸ですが、殺処分の段階において、実験と同様、またはそれ以上の苦痛を味わわせる行為を行うとは断じて許しがたい。
 誰も改善させなかったのだから、研究機関全体での犯罪行為と言えるのではないでしょうか。医学や医療に対する不信感を増大させるものであり、このような研究機関に、人の命を左右する仕事ができるとは思えません。

 当会では、動物実験については、その倫理的問題はもちろんのこと、人間と動物との種差(体の構造や代謝機能の違いなど)の観点から科学的にも問題があり、反対してきました。
 多くの人が製薬会社の作った医薬品を信頼し、命を預けています。しかし、その裏側で、多くの動物実験が行われ、罪もない動物たちが虐待・虐殺されている事実はあまり知られていません。ましてやそのデータが改ざんされているとは当然知る由もなかったでしょう。
 海外では、すでに「代替法」という動物実験に替わる方法があり、世界的に医学分野でも、それらをもっと取り入れようという動きがあります。今回のことを機に、ぜひ、多くの方に動物実験の実態を知ってもらいたいと思っています>。

新日本科学の対応
 新日本科学に対しては、メディポリス指宿でのサルの飼育、そして今回の動物虐待・実験データ改ざんの告発内容についてと、度々事実確認を求めてきた。しかし、同社からは一切の反論や説明はなく、事実上の取材拒否となっている。

 だんまりを決め込むつもりらしいが、同社の問題行為はこれだけではない。



【関連記事】
ワンショット
 ガラスの向こうに積み上げられた洋書。オシャレな入り口の奥...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲