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僭越ながら:論

歪む鹿児島県知事選とその背景

2012年7月 3日 10:25

 2日、鹿児島県知事選にからんで鹿児島県庁が現職陣営に大量の写真を提供していたことを報じた(記事参照→)。

 背景にあるのが、公私の区別さえつかなかった現職陣営の驕りと、緊張感を欠いた県庁内部の体質であることは疑う余地がない。結果として、法的な問題が生じたほか、選挙の公平性をも奪う形となったことは事実。真相究明は急務である。

 一方で、問題に気付かなかった県庁記者クラブに所属する記者諸氏の不作為も見落とすことができない。大手メディアの記者たちにとってはいささか耳の痛い話であろうが、あえて一言申し上げておきたい。

真相究明は県と現職陣営の義務
 公務における知事の写真は、県民への広報や税金支出の根拠を示すことを目的として撮影されたもので、知事本人の政治活動の記録ではない。もちろん、画像に残った知事以外の人間は、県職員によって撮影された自分の写真が政治的に利用されることなど考えてもいなかったはずだ。
 しかし、写真の政治目的への転用によって、県が個人の肖像権や政治的自由を侵害した形になっており、訴えられてもおかしくない状況である。
 これで知らぬ顔の半兵衛を決め込むとすれば、鹿児島県には公的機関の資格がないということになる。県には、反省の上に立って積極的に事実関係を公表する義務がある。

 もちろん、写真の提供を受けた知事陣営にも説明責任がある。現在までの取材では、写真提供を県と後援会のどちらから持ちかけたか判然としておらず、経緯は藪の中。取材拒否で済まされる問題ではないだけに、現職陣営としての矜持を示してもらいたいものだ。

 ただし、後援会報やマニフェストは、当然知事本人が内容をチェックしているはずのもので、「知らなかった」では済まないこともつけ加えておきたい。内容も把握せずにマニフェストを発表するはずもなく、責任逃れは許されない。
 総務省という選挙や政治団体を所管する役所に在籍していた知事本人が、ことの重大性をもっとも理解していると信じたいが・・・。

置き去りにされた"公私の区別"
 税金で賄われている公務の記録は、いかなる理由があろうと政治活動に転用することは許されない。知事陣営が使用した写真は300枚前後。すべて県庁職員が職務の一環として撮影したものと見られる。つまり「公」のデータである。

 これに対して後援会報やマニフェストは、政治家個人の活動もしくは政治的主張を宣伝するためのもので、「私」の領域に存在する。
 「公的」データを「私的」な目的に転用したことは、関係者全員に"公私の区別"がついていなかったことを意味している。

 かつて熊本県知事だった細川護煕氏は、「権不10年」という言葉をもって長期政権の腐敗を戒めた。鹿児島・伊藤県政は8年である。県内の有権者に聞くと、2期目から県政運営に強引さが見え始めたという声は少なくない。知事の傲慢な姿勢が県庁組織を蝕み、公私の区別さえつかない県政にしてしまっているとしたらことは深刻だ。

県庁記者クラブの記者諸氏に一言
県政記者室(青潮会) 最後に、大変僭越ではあるが、鹿児島県庁記者クラブ「青潮会」所属の記者諸氏に苦言を呈しておきたい。

 問題の後援会報は、早い時期から配布されていたとされ、選挙取材に携わっている記者なら、どこかで手に取るか、目にすることがあったはずだ。選挙向け印刷物のチェックは報道のイロハだからである。
 熟読はしないまでも、めくっただけで使用された写真が県職員撮影のものであることに気付いたことだろう。もちろん、写真の場面に立ち会った記者もいる。

 そこで少し考えれば、県による便宜供与という結論に帰結するはずだが、これまで写真転用を問題にした報道は一切なかった。気付かなかったとしたら彼らの目はただの節穴ということになるし、気付いていて不問に付したのなら報道を名乗る資格はない。
 知っていて書かないというメディアの姿勢が、この国全体のメディア不信につながっていることに思いを致すべきだろう。

 権力の監視はメディアに課せられた使命だ。だからこそ役所の中に記者クラブの部屋があてがわれ、税金で記者たちの活動を支えることが許されてきた。
 しかし、漫然と選挙報道を垂れ流すだけでは、使命を果したことにはならない。選挙報道に携わってきた記者諸氏は、メディアの怠慢が政治や行政の腐敗を助けている現実を直視すべきである。記者クラブにふんぞり返って惰眠を貪っていては、存在する意味がない。

 傲慢と怠慢、どちらも自慢できない姿勢である。



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