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福岡知事選候補者選考でKBCに問われる放送倫理

2019年1月10日 08:30

20190111_h01-01.jpg 福岡県知事選挙の候補者選考を行っていた自民党福岡県連が先月29日、元厚生官僚でテレビコメンテーターの武内和久氏(47)を推薦候補とする方針を決めた。
 選考に残った3人の中から同氏を選んだとする県連だが、この候補者選びは明らかに茶番。本命が武内氏だったことは、ほとんどの県連関係者が知っており、「初めから武内氏に決まっていた。麻生さん(太郎・財務相)のシナリオ通りに事を進めているだけ。つき合っていられない」(県議会関係者)といった冷ややかな声も上がる。
 一番の問題は、知事候補が選ばれるまでの過程で、武内氏を巡る政治的な動きを知ったうえで、地元テレビ局「KBC九州朝日放送」が同氏の知名度アップに手を貸したこと。「放送倫理上、問題あり」とみる関係者は少なくない。

■番組出演、選挙目当て?
 武内氏は、福岡市内の小学校から久留米大附設中学・高校に進み、現役で東大法学部に入学。卒業後は厚労省に入省し、主として医療畑を歩いた。外資系企業に出向するなど異色の経歴でも知られる。

 その武内氏をコメンテーターに起用したのはKBC九州朝日放送。4月から、朝と夕方のテレビ番組やラジオで使うようになっていた。無名に近い存在だった武内氏が、いきなりの露出攻勢となったことで、報道関係者の間で「知事選か市長選を狙っているのではないか」との見方が広がっていた。

 武内氏が注目を集めた最大の理由は、同氏のバックに麻生財務相の影がチラついていたからだ。武内氏は退官後、福祉分野にも進出している人材教育会社「麻生教育サービス」の顧問に就任しており、同社は「株式会社麻生」のグループ企業。麻生財務相と武内氏の間には、当初から密接な関係があった。また、昨年2月には、日経デジタルヘルス社が企画した高島宗一郎福岡市長と麻生グループ総帥・麻生泰氏との対談の進行役を、武内氏が務めていたことも分かっている。この対談の直前、武内氏は「福岡市政策参与」という聞き慣れない役職までもらっていた。不自然な露出戦術の狙いは、知事選だったということだ。

 小川洋知事の失脚を画策してきた麻生財務相が、どうしても欲しかったのが知名度のある新人。しかし、小川知事に対抗して選挙を戦える人材が、そう簡単に見つかるはずがない。そこで今年の春、KBC九州朝日放送を使って、武内氏の知名度アップ作戦に打って出たというわけだ。KBCもその政治的な動きに乗ったということになる。

■公募締め切り前日まで番組出演
 同氏がレギュラーを務めていたテレビ番組は「アサデス。」と「シリタカ!」、ラジオは「朝からしゃべりずき!」だ。自民党県連が知事候補の公募を開始したのが12月21日で、最終期限が28日。局公認で露骨な売名が行われた証拠に、武内氏はKBCの番組にギリギリまで出演していた。

KBC.png 武内氏が自民党県連の公募に応じたのは12月28日。翌29日には県連が同氏を推薦候補に決定している。事前に根回しされていたのは確かで、28日の夜には「武内で決まり」という情報が流れていた。本人が27日まで知事選のことについて考えなかったはずがない。

 そもそも、武内本命説は、小川知事と自民党県連の関係が悪化し、次の知事選に向けた動きが始まった頃から流れていた。普通の感覚なら、武内氏自身が早い時期にKBCの番組を降板すべきだったろう。KBC側にしても、武内氏の名前が取り沙汰され始めた時点で、番組から降ろすべきだった。だが、実際の番組降板は知事候補公募締め切り日の前日――。「ギリギリまで名前と顔を売り込みたい」という姑息な思惑がハッキリと見える展開である。

 ある民放関係者は、次のように話している。
「ただちに放送法に抵触するかどうか微妙だが、放送倫理上はアウトだろう。武内氏の名前は早くから取り沙汰されていたため、KBCが知らなかったはずがないからだ。本人が『出ません』と言っていたのなら、それは大嘘。一連の流れから見て、『12月27日まで出るつもりはなかった』という言い訳は通用しないだろう。テレビ局関係者が選挙に出る場合、噂になった時点で番組を降ろすのが普通。KBCは政治サイドの動きに乗って、政治的公平という一番大事なルールを自ら破ったということだ。見返りが何なのか分からないが……」



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