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薩摩川内処分場 隠された危険性

2012年5月15日 08:10

看板 鹿児島県が薩摩川内市で建設を進める産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)の計画段階では、平成19年5月から、関係自治体などへの説明会が計46回開かれた。住民から出された質問や意見のなかで目立つのは、処分場を含む「冠嶽」全体が水源となっているため、処分場から汚染水が漏れ出した場合への懸念と、"もうひとつの危険性"を指摘する声だった。

 水系に与える影響については別稿で述べることになるが、処分場周辺の危険性を示す情報の提供方法をめぐって、鹿児島県はまたしても隠蔽のための引き延ばしを図り、取材を受けて態度を一変させると言う愚行を繰り返していた。

砂防指定地
 砂防指定地とは、「砂防法」に基づき、大雨などによる土砂災害を防止する観点から、砂防ダムなどの設備を設置するために指定される土地で、都道府県が指定地を進達し、国土交通大臣が指定をおこなうものだ。砂防指定地においては、都道府県知事に、一定の行為を禁止したり制限する権限を付与している。 
 竹木の伐採や土石の採取等が禁止されるほか、施設建設などを行う場合は知事の許可が必要になる。

情報公開制度を盾に隠ぺい
gennpatu 021.jpg 右の文書は、処分場予定地のそばを流れる阿茂瀬川流域の「砂防指定」の台帳について、処分場建設に反対する団体の男性が県に情報公開請求したことを示す文書である。
 5月2日付けで受付印が押されており、正式に請求を受け付けた形となっている。担当は県の砂防課であることも明記されているが、当該文書は既に公表された内容であり、情報公開請求の対象とすべき文書ではない。

 請求者に聞いたところ、砂防指定という県民の安全に直結する文書を情報公開請求の対象にするのはおかしいと抗議したが、県側は耳を貸そうともしなかったという。
 遅れること数日、HUNTERも県砂防課に確認したが、やはり同じ方針を崩そうとせず、閲覧さえ許そうとしない。砂防指定については、国土交通大臣がその河川名と当該地の住所地番まで官報で告示しており、指定地には砂防して位置であることを示す看板や標杭も設置されている。
 既に公表された事実である上、防災の観点からも出し惜しみするべき文書でないことは明らか。情報公開請求の対象であるはずがない。強く抗議したが、「情報公開請求をして下さい」の一点張り。制度があることを逆手に取ったタチの悪い隠ぺいである。

取材受け方針転換
 県の態度が一変したのはその翌日だ。「庁内で検討した結果、ご指摘のように防災に関わる情報は積極的に提供すべきで、閲覧の求めには応じるべきということになりました」と言う。複写についても要望があれば応えるとまで譲歩した。

 なぜ方針転換したのか疑問に思っていたところ、5月11日の朝日新聞朝刊(鹿児島県版)の記事を見てようやく合点がいった。同紙の記者が砂防指定関連文書に関する県側の姿勢を問題視し、一連の動きを報じていたのである(下が朝日新聞5月11日付朝刊)。
 つまり、同紙の取材とHUNTERの取材が重なったため、批判報道を恐れた県が態度を変えたということだ。県庁まで足を運んだあげく、情報公開請求をかけろと言われて従わざるを得なかった男性は、ことに成り行きに「唖然とした」と言う。

朝日新聞5月11日付朝刊

繰り返される情報隠し
 鹿児島県は昨年11月、HUNTERの記者が提出した処分場や県営住宅に関する情報公開請求に対し、「開示・不開示のいずれの決定も行なわない」として、事実上請求を拒否。その後、新聞社の取材を受け、一転して情報公開に応じるという前代未聞の事件を起こしている(参照記事→「鹿児島県が情報公開請求を拒否」)。
 処分場建設の背景や、不適切な計画の進め方についての報道を極端に嫌がっていることは事実で、県側の開示する情報はいつも不十分なものばかりだ。
 今回の方針転換も、昨年の情報公開拒否と同様の状況となったが、当初の引き延ばし策は取材の狙いがどこにあるか県側が察知したからに他ならない。じつは、それこそが県としてもっとも触れられたくない処分場の問題点だった。
 処分場は、とんでもない場所に建設されようとしているのである。 

つづく



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