鹿児島県が薩摩川内市川永野に整備した産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」の建設工事中に、汚染水漏れを防ぐために敷設された遮水シートの破損事故が15件も起きていたことが分かった。
事故内容が記されていたのは、エコパークかごしまの事業主体である県環境整備公社への情報公開請求で入手した遮水シート損傷に関する建設業者の報告書。建設機材が接触したケースもあったが、ボルトやナットといった軽く小さな部材の落下程度で損傷したことが記されており、遮水システムの脆弱性が証明された形。懸念されてきた環境汚染が、現実になる可能性が高まった。
(写真はエコパークかごしまの全景。公社HPより)
管理型処分場の遮水システムとは
エコパークかごしまの施設底部にあるのが「遮水工」。汚染水漏れを防ぐための構造で、250ミリのベントナイト混合土(粘土)や10ミリの短繊維不織布、6ミリの自己修復材(GCL)などに加え、1.5ミリのメタロセン系(ポリエチレン)遮水シートが層を変えて2枚敷設されている。この内、もっとも重要となるのが遮水シートで、これが破損すれば地下に産廃から生じた汚染物質が漏れ出す危険性が高まることになる(右の図参照、鹿児島県環境整備公社の公表資料より)。これまで鹿児島県や公社は「汚染水漏れの心配はない」と主張してきたが、事故が起きないという保証はない。
2010年には、財団法人滋賀県環境事業公社が運営する「クリーンセンター滋賀」で、遮水シート破損による汚染水漏れが発生。2012年にも財団法人山梨県環境整備事業団の「山梨県環境整備センター」で汚染水漏れが疑われる状況となり、調査の末、遮水シートに空いた穴が見つかっている。いずれの施設も「エコパークかごしま」と同じ“公共関与型”といわれる事業形態によって整備された管理型最終処分場。“自治体が整備した処分場は安全”というのが公共関与型処分場の売りになっているのだが、巨額な事業費をかけながら、遮水シートの破損も汚染水漏れも防げていないのが実情だ。
9か月で15件「遮水シート」弱さの証明
エコパークかごしまで、遮水シートの破損事故は起きていないのか――。実態を調べるため、県環境整備公社に関連文書を情報公開請求。入手した建設業者の報告書などを精査したところ、遮水工敷設の作業が行われた2014年3月から11月までの9か月間に、計15回の遮水シート破損事故が発生し、その都度補修していたことが明らかとなった。下は、事故発生日と内容をまとめた表だ。
注目したのが表の中で色付けした事故のケース。電動ハンマーのノミ、ドリルの錐といった大して重くもない部品の落下でシートが破損していた他、飛び散った溶接作業の火花が短繊維不織布を焦がし、シート3カ所に穴をあけるという事例もあった。破損の原因が分かっていないケースもある。驚いたのは、ボルトやナットという極めて小さな部材で、簡単にシートが損傷していたこと。下は、業者の報告書に添付されていた問題のナットの現物写真(事故は7月29日に発生)。遮水シートを損傷させたのが、ボールペンと同じくらいの径しかないナットだったことが分かる。
建設機材の接触による破損は別として、その他の事例は、わずかな力で遮水シートが破損することを示している。汚染水漏れは、容易に起こり得るということだ。エコパークかごしまの遮水シートが破れた場合、地下水や場内を流れる「阿茂瀬川」が産廃から生じた化学物質で汚染されるのは必至。阿茂瀬川は、県内最大の河川で薩摩川内市の水道水を取水している「川内川」につながっており、汚染水漏れによる環境汚染や住民の健康被害が予想されている。
同処分場をめぐっては昨年8月、九州を襲った台風15号の影響で起きた広域停電のため、遮水シートが破れることを想定して設置されている汚染水漏れの検知システムが停止。非常用発電機につなげるまでの2日間、システム自体が機能していなかったことや、環境整備公社が事故の事実を隠蔽していたことが明らかとなっている。