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隠された夜の接待

玄海町交際費で新たな事実

佐賀県庁の隠蔽体質(下)

2012年5月 7日 07:55

 九州電力玄海原子力発電所の立地自治体である佐賀県玄海町(岸本英雄町長)が、町長や議長の交際費で国や佐賀県庁の役人に対する接待や贈り物を繰り返していた問題で、佐賀県が公表した県職員への聞き取り調査結果に信憑性がないことがわかった。
  
 これまで玄海町と佐賀県がともに認めていた18件の会食のほかに、議長交際費を使ったバー、スナックでの飲食2件と町長交際費での会食1件の計3件が隠されていた。事の経緯からして、両自治体は事実関係を知っていたと見られる。
 
 交際費支出の報道を受けて、早々に幕引きを図ったつもりの佐賀県だったが、官官接待の真相を隠蔽するため、あえて杜撰な調査結果を公表した疑いが出てきた。

県は接待疑惑を否定したが・・・
 今年1月、玄海町が町長交際費や議長交際費を使って、経済産業省資源エネルギー庁や県庁の職員に接待や贈り物を繰り返していことが報じられた。
 報道を受けた佐賀県の反応は早く、異例のスピードで内部調査を実施。1月20日には調査結果を公表し、「特に問題があるとは考えていない」と一方的に結論付け、問題の収束を図っていた。

 HUNTERは今年3月、町長交際費および議長交際費に関する決済文書などを独自に入手。玄海町が交際費で新聞社支局長の送別会を開いていたことや、古川康佐賀県知事と九電側に高額な贈答品を届けていたことなどを報じてきたが、その後の調べで公表分とは別に町長および議長交際費による県庁職員との飲食が判明した。

隠されていた「二次会」
 佐賀県は、1月20日の調査結果発表で、該当職員からの聞き取り調査の結果を一覧表にまとめ、県として「特に問題があるとは考えていない」との見解を示した。
 公表されたのは、平成18年8月から平成23年10月までの間に玄海町が支出した町長交際費のうち、県職員との会食に支出されたものとして玄海町が公表した17件とマスコミから県職員との会食ではないかと指摘されたもの1件の計18件についての調査結果である。
 
 このうち、HUNTERが注目したのは平成23年1月24日の飲食に関する公表内容だ。
 県の公表資料には、件名として「玄海町管内の国道に関する懇談会の折」と記されており、県唐津土木事務所の所長ら4名が、玄海町長など町幹部6名と唐津市内の日本料理店で会食していたことを認めている。
 聞き取り調査の結果として、避難道路の現地打ち合わせ後に懇親会を行ったもので、会費(県の調査では3,000円)を支払ったとしている。(下は、佐賀県が公表した資料の該当部分。青塗りはHUNTER編集部)。

玄海.jpg

 一方、玄海町側の決済文書である「支出票」には、「玄海町管内の国県道に関する懇談会の折り」と記されており、町側から、岸本町長、副町長、まちづくり課長、政策統括監、岩下孝嗣議長、上田議員、脇山議員の6名が参加したことが明記されている。
 県側の参加者は黒塗りされているが、県の調査結果にあるとおり、県唐津土木事務所所長、同副所長、同道路整備課長、県道路課長の4名が参加していた。(下の文書参照。青塗りと赤いアンダーラインはHUNTER編集部。黒塗りは玄海町)

議長交際費.jpg

 問題はこの懇談会の"続き"だった。
 岩下孝嗣玄海町議長の議長交際費に関する「支出負担行為票」を精査したところ、平成23年1月24日、唐津市内の「Beiieve」というバーで飲食した記録が残されており、件名には「玄海町管内国・県道整備懇談会費用として」と記されている。
 同日の町長交際費による「玄海町管内の国県道に関する懇談会」と同じ趣旨であることは明らかだ。参加者も同様に、玄海町側が岸本町長、副町長、まちづくり課長、政策統括監、岩下議長、上田議員、脇山議員の6名だった。(青塗りと赤いアンダーラインはHUNTER編集部。黒塗りは玄海町)

議長2.jpg

 ここでも他の参加者は黒塗りで隠されているが、取材の結果などからバーでの飲食には県唐津土木事務所所長、同副所長、同道路整備課長、県道路課長の4名が含まれていたことが明らかとなった。
 日本料理店での食事の後、2次会まで行っていたことになるが、この議長交際費によるバーでの飲食は県側の調査結果に含まれていない

さらに2件の「接待」が判明
 gennpatu 002.jpg隠された接待はこれだけではなかった。町長および議長交際費の支出状況をさらに調べていく過程で、次の2件が県側との飲食であったことがわかっている。

・平成21年3月5日 「県道加倉~仮屋港線整備推進協議会の折り」
→唐津市内日本料理店 県土木事務所から6名参加→飲食代30,000円を町長交際費より支出

・   同  日     「県道加倉仮屋港線整備推進協議会懇談会の折、賄いとして」  
→唐津市内スナックP 県土木事務所から2名参加→飲食代24,000円を議長交際費から支出(右の文書参照。青塗りと赤いアンダーラインはHUNTER編集部。黒塗りは玄海町)

 前述の平成23年1月分同様、町長交際費による日本料理店での会食の後、議長交際費で二次会というパターンだ。

 参加した県職員は当然覚えていたはずで、申告を怠ったか、事実関係を知った県側が隠したかのどちらかということになる。
 いずれにせよ、バーやスナックでの飲食が露見したことで、県側の「特に問題があるとは考えていない」とした主張に齟齬が生じる。

崩れた県の主張
 佐賀県は、調査結果を公表した際、玄海町との飲食について、県のスタンスと評価を次のように発表している。

<会食に対する県としてのスタンス>
 《県の事業と密接な関係にある方々の意見を現場の声として収集することは、県政の運営にとって重要なことである。このような趣旨であれば、公私のけじめをつけたうえで、公務後の懇親会等に参加することは大変有意義であると考えている。
 一方で、県民の疑惑を招くような過度の接触や交際は許されないものと考えている》。

<今回調査した会食の評価>
 《玄海町職員との会食が確認された17件のうち12件は、会費を支払って公務後の懇親会等に出席したものである。
              (中 略)
 以上のことから、今回調査した玄海町職員との会食に県職員が出席したことについては、特に問題があるとは考えていない》。

 接待の事実を隠していたことは、県の主張が不完全な調査結果に基ずくものであった証しであり、「特に問題があるとは考えていない」とする傲慢な結論の前提が崩れたことになる。
 日本料理店での会食に重ね、バーやスナックに場所を移して飲み直すことは、県が戒めた「県民の疑惑を招くような過度の接触や交際」に他ならないからだ。

 そもそも、町長交際費による飲食も、議長交際費によるバー・スナックでの飲食についても、県職員が会費を払ったことを証明する領収書などは一切明示されていない。
 玄海町側の決済文書を見る限り、県職員が会費を支払ったとすれば全体の支出金額との整合性が取れないものばかりなのである。
 さらに、接待を否定した佐賀県は、調査過程で得られている県職員からの聞き取り内容を示す文書についてのHUNTERの情報公開請求を拒否しており、本当に会費を支払ったのかどうかさえ検証できない状況だ(参照記事→)。
 
 議長交際費が充てられた唐津市内のスナックPに於ける「県道加倉仮屋港線整備推進協議会懇談会」には、県土木事務所から2名が参加しているが、決済文書ではこの2名を含む参加者8人分の会費3,000円×8名=24,000円を支出したことになっており、県職員は1円も支払っていない。この件についての公費による飲食の提供は明らかな官官接待だろう。

 佐賀県は、事実関係をねじ曲げて都合の良い解釈だけを公表しており、同県の隠蔽体質が改めて顕在化した形となった。
 やらせメールや仕込み質問といった原発がらみの不祥事が暴かれる度に実施されてきた佐賀県の内部調査だが、信頼性は皆無。「一事が万事」ということだ。



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