鹿児島県が薩摩川内市で建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場をめぐり、またしても県の隠蔽姿勢が露わとなった。
鹿児島県への情報公開請求によって、処分場の計画段階で開催された"住民説明会"における県側の回答記録を何も残していないことが判明。県が開示した文書には地元住民らから出された質問や意見しか記されておらず、県側の回答内容や対応についての記録は一切残されていなかった。後々の火種になることを恐れ、都合の悪い記録を残さなかったものと見られる。
処分場建設計画に関する県側主張の変遷が確認できない状況で、改めて同計画の妥当性に疑問符がついた形だ。
はじめから切り捨てられた「大原野自治会」
極めて不十分な情報公開ではあるが、開示された説明会の記録から同処分場の問題点が浮き彫りとなる。
説明会は、処分場に近接する川永野自治会、川永野町大原野自治会(百次大原野自治会)、大原野自治会、木場茶屋自治会の4自治会を中心に、川内川内水面漁協や水利組合、近隣自治会などを対象に開催されていた。
実施時期は、県内29箇所の調査対象地の中から、薩摩川内市など4箇所に「候補地」を絞ったとされる平成19年5月から、平成21年12月までだ。
説明会の実施回数を自治会ごとに整理すると、崩しやすい自治会だけを集中して口説いていった県のご都合主義的な手法が鮮明となる。
*川永野自治会 ・・・14回
*木場茶屋自治会 ・・・9回
*百次大原野自治会 ・・・7回
半数以上の説明会はこの3つの自治会を対象とするもので、他はまさに形だけ。たいていの地区説明会が1回で終わっている。
問題は処分場にもっとも近接する大原野自治会に対する説明会の少なさで、平成19年5月12日と同年6月25日の計2回開かれただけで終わっていた。
大原野自治会は、処分場予定地のそばに位置し、同自治会の会長宅などは工事関係車両が行き交う道路から入っていくしかない場所にある。処分場建設には当初から反対の声が多く、県側に対しても厳しい姿勢を貫いていたとされる。
このため県は、強硬姿勢を崩さぬ大原野自治会への説得に早い段階で見切りをつけ、自宅訪問などによる個別撃破に方針転換。結果、同自治会は長年にわたって築き上げてきた地域の絆をずたずたにされ、処分場計画に賛同する住民らが新たに「東大谷自治会」を組織するに至る。公権力による自治の破壊である。
指定地域の住民を懐柔した武器が地域振興を名目にした3億円のカネだったことも分かっている。(参照記事→「鹿児島県、産廃処分場建設で巨額のばら撒き」)
仕組まれた協議対象地域の指定
平成22年7月、県は処分場建設にあたり事業主体の「鹿児島県環境整備公社」に関係地域を指定する。処分場建設の協議対象として指定されたのは、何度も説明会を開催して手なずけてきた川永野自治会、木場茶屋自治会、百次大原野自治会、そしてとっくに説得をあきらめていたはずの大原野自治会である。結論が出ている自治会とそうではない自治会を組み合わせ、バランスを取っているが、はじめから仕組まれた協議対象地の指定が行われたと見る方が自然だ。
平成22年10月20日付けで県環境整備公社が県に提出した「協議等結果報告書」(右の文書)には、『川永野町大原野自治会の地域住民とは協議等が調う見込みがない』と明記しているが、結果報告は協議開始からわずか3ヶ月にも満たない時期。大原野自治会への説明会開催の依頼は、同年9月2日から10月1日にかけて計7回行なっているが、そのすべてが「口頭」で9月22日 になってやっと「文書」による依頼となっていた。やる気のなさは歴然だ。しかも、県側の動きはここまでであり、10月14日に一方的に説明資料を送りつけるという手法で"反対派にも説得した"というアリバイを作っていた。
残された住民の声から見える問題点
平成19年の説明会開始当初から、県側に対しては様々な質問や意見がぶつけられている。
「他の3箇所と本当に比較したのか。比較していないのではないか」(H19.5.12 大原野自治会)
「この地は隈之城の水源であった」(H19.5.13 川永野自治会)
「地下水に浸透しないといっているが、企業の調査を鵜呑みにしているのではないか」( 同 )
「あなた達は木場茶屋で暮らせますか。移住してください。田は売りますから」(H19.5.20 木場茶屋自治会)
「何で川内ばかり。原電があるからか」(H19.5.14 内水面漁協)
「県としてはもうこれは候補地ではなくて、造るんだという前提でことを運んでいると私たちは思っている」(H19.5.21 勝目後地区)
「自分たちは昔からここを見て、水が溜まらない、浸透するということを知っている」( 同 )
「もう整備するのだという姿勢が見え見えだ。住民の声を聞こうという姿勢が見えない」(H19.6.16 矢倉自治会)
「下流域に人家、田等が少ない地域を選ぶべきではないのか」(H19.8.8 柿田、中塚、上手、都町南自治会)
「ある会社の経営を守るため、建設するというのは本当か。そう思っている人は多い」(H19.12.15 木場茶屋自治会)
「原発の低レベル放射性廃棄物がここに持ち込まれるのではないか」(H21.5.24 木場茶屋自治会)
じつは、いずれの質問も処分場問題の核心をついており、その後の検証では住民らの心配が現実的なものだったことが明らかになっている。県はこうした疑問にどう答えてきたのか。なぜ回答を記録していなかったのか(あるいは廃棄したのか)。
その謎を解く鍵は、住民らから出された疑問点の中にあった。