鹿児島県が地元住民らの反対を無視して薩摩川内市に建設を強行している産業廃棄物の最終処分場にからみ、巨額の地元対策費をばら撒いている実態が明らかとなった。
わずか数十戸規模の三つの自治会に、既にそれぞれ3,750万円が支出されており、最終的には億単位にのぼる公金が投入されるという。
電源三法交付金で地元を懐柔し、原発建設を進めてきたのと同じ手法が、九州電力川内原子力発電所の立地自治体で繰り返されていることになる。
地域振興の名目で2億円超
鹿児島県および県環境整備公社は今年1月、薩摩川内市で計画が進められていた産業廃棄物最終処分場建設に関し、処分場予定地の近接自治会と「基本協定書」を結んだ。
協定は、自治会側が処分場建設に協力する代償として「地域支援」を受ける内容だったが、関係する四つの自治会のうち、もっとも規模の大きな「大原野自治会」が建設計画そのものに反対して不参加。「川永野」、「木場茶屋」、「百次大原野」の三つの自治会だけが協定書締結に賛同していた。(下が「協定書」。赤いアンダーラインは編集部)
協定書では、自治会側が《管理型処分場の建設に同意するとともに、その円滑な運営に協力する》とした上で、県と公社が《生活環境の整備や自治会活動の活性化に対する支援など、地域の振興に努めるものとし、(中略)地域振興策を実施するものとする》と確約。県はこれに従い、今年4月に「川永野」、「木場茶屋」、「百次大原野」の三つの自治会に対し、それぞれ3,750万円を支出していた。
今後、さらに3,750万円づつ、計7,500円が各自治会に支払われることになるという。
カネの力で住民の声をねじ伏せた形だが、自治会ごとの人口に対する支援金の額の多さには驚かされる。
協定に賛同した三つの自治会の世帯数と人口は次のとおり(11月現在)で、約120世帯、人口280人程度の地域に1億1,250万円もの公金がばら撒かれたことになる。
最終的な地域振興資金の額は、2億円を超える。
川永野 40世帯 90人
木場茶屋 62世帯 140人
百次大原野 25世帯 55人
支給されたカネは自治会費の助成や公民館整備、街灯整備などのほか自治会活動全般に使われるもので、住民個々に配分されることはないという。しかし、高齢者が多く、独居世帯が少なくない地域事情からして、額の大きさは異常。地元住民からも、巨額な迷惑料のばら撒きに疑問の声が上がっているのは言うまでもない。
処分場周辺の地域は、もともと世帯数が少ないうえ、高齢化も進んでいる。ハード面の整備などにカネを回すか、視察の名目で旅行に行くといった使途が考えられるが、新たな定住者を得ることにはつながらない。
近所に建設されるのが管理型の産廃処分場なのだから、どんなに支援金を積まれても、新たなまちづくりなどできるはずがないのだ。
事実、県によって処分場計画が強行され、地元住民への説得工作が激化してからは、長年住み慣れた家と地域を捨てる人が続出しているという。
引き裂かれる「地域」 重なる原発の構図
協定に賛同しなかった「大原野自治会」は、いまも処理場建設に反対しており、地域振興をうたった「迷惑料」は1円も受け取っていないという。
しかし、今年に入って県は同自治会の一部住民を切り崩し、新たに「東大谷」という自治区を作らせたとされ、70戸以上あった大野原自治会は30戸前後に減ってしまっている。
住民の間に迷惑施設建設の是非をめぐって対立を招くのは、原発建設の場合と同じだ。
問題の産廃処理場をめぐっては、県が職員を大量に動員して建設に異議を唱える地元住民を弾圧。さらに、HUNTERが鹿児島県に提出した同処理場や鹿児島市内の県営住宅移転問題など、住民の声を無視した県政運営の実態を示す一連の公文書公開請求を拒否するなど、異例の事態が続いている。
伊藤祐一郎という知事がやっていることは、「地域破壊」に他ならない。
電源三法交付金で地元自治体や住民から「思考」を奪い、強引に原発建設を進めてきた我が国の縮図がそこに在る。