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原発暫定基準のお粗末

策定経過示す行政文書なし

野田政権は原発亡者の集まり

2012年4月 7日 14:20

経済産業省 6日、野田政権は関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)3、4号機の再稼動にあたっての暫定基準を正式決定したが、同基準策定までの流れを確認したところ、杜撰な政策決定の過程が明らかとなった。
 
 暫定基準策定を指示したのは野田首相だったが、国民を納得させるだけの厳しい内容を求めたわけではなく、会議の席上「口頭」で枝野幸男経産相に命じただけ。経済産業省原子力安全・保安院へのHUNTERの取材で、暫定基準策定の過程を示す行政文書がないこともわかった。
 
 付け焼刃というより、国民をバカにした姑息な手法。この政権に原子力行政を担う資格はない。

口頭での指示-経過示す公文書は不存在
 HUNTERは6日、経済産業省原子力安全・保安院に対し、暫定基準の策定を命じた野田首相からの指示内容が分かる行政文書の存在について確認を求めた。
 情報公開請求の対象文書を特定するためだったが、保安院側は「指示内容が記された文書はない」という。
 
 詳しい経過については、今月3日に開かれた野田首相、枝野経産相、藤村修官房長官、細野豪志原発事故担当相による「4大臣会合」の席上、野田首相が枝野経産相に『再起動にあたっての安全性に関する判断基準』を作るよう"口頭"で指示しただけだと説明している。
 この日の4大臣会合には、深野弘行原子力安全・保安院長も同席しており、大臣への指示を事務方として確認し、暫定基準の策定を行ったという。
 
 保安院側の説明通りなら、首相の指示内容は曖昧で、ただ単に原発再稼動を実現するための道具を用意しろと言ったに過ぎない。
 案の定、たった2日で策定された暫定基準は、評価の対象にもならない薄っぺらな内容だった。

内容もお粗末 
 gennpatu.jpg 右の文書は、経済産業省が公表した「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準(骨子)」で、いわゆる暫定基準と呼ばれるものだ。
 
 前置きの文章には《この判断基準は、今般の事故の知見・教訓を踏まえた新たな安全規制を前倒しするものである》とあるが、国は《今般の事故の知見》を、どの程度把握しているのかさえ公表していない。
 福島第一原発の事故をめぐっては、原子炉に損傷をもたらした理由が「地震」によるものなのか「津波」によるものなのかさえ明確な答えが出されていないのである。

 積み残された課題も多い。原発の耐震設計においては、安全性が確保された設計を行うため、各原発施設ごとに基準となる地震動の数値を設定しており、これを「基準地震動」と呼んでいる。
 数値を決定するためには東日本大震災発生時の詳しいデータに基づいた国の新たな指針が必要。しかし、その作業を担うはずの原子力規制庁の発足が遅れており、原発に関する新たな国の指針は何一つ示されていない状況だ。
 信頼を失った保安院のお墨付きや基準に、一体何の意味があるのだろう。

 曖昧な前提を基に策定された暫定規準(国はこれを『新たな判断基準』と呼んでいるが)は次の内容だ。

【基準1)】
地震・津波による全電源喪失という事象の進展を防止するための以下の安全対策が既に講じられていること。
① 所内電源設備対策の実施
② 冷却・注水設備対策の実施
③ 格納容器破損対策の実施
④ 管理・計装設備対策の実施

【基準2】
国が「東京電力・福島第一原発を襲ったような地震・津波が来襲しても、炉心及び使用済燃料ピットまたは使用済燃料プールの冷却を継続し、同原発事故のような燃料損傷には至らないこと」を確認していること。

【基準3】
以下に列挙される事項について、更なる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が事業者により明らかにされていること。さらに、今後、新規制庁が打ち出す規制への迅速な対応に加え、事業者自らが安全確保のために必要な措置を見いだし、これを不断に実施していくという事業姿勢が明確化されていること。
① 原子力安全・保安院によるストレステスト(一次評価)で一層の取組を求められた事項
② 東京電力・福島第一事故の技術的知見に関する意見聴取会「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」で示された30の安全対策

基礎になった「30の安全対策」自体が不十分
 gennpatu 114020064.jpg いずれも福島第一原発の事故以来、さんざん指摘、指示されてきたことばかりで、目新しい内容は皆無だ。「基準」と呼ぶのが恥ずかしくなるようなお粗末なシロモノだが、これでは国民が再稼動を認めるはずがない。

 暫定規準は、既に公表されていた「30の安全対策」を基本に据えるということだが、これは原子力安全・保安院がまとめ、先月28日に公表された「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」で示された《今後の規制に反映すべきと考えられる事項》への対応策を指している(右の文書参照)。

 この30項目への対策自体、福島第一原発事故の詳細な「知見データ」がそろわぬままに策定されており、不十分なものであることは明らか。従って野田政権が示した暫定基準は、不十分なものを「守れ」と言っているだけで、原発の安全性を担保できる内容にはなっていないのである。

 原発再稼動を急ぐためだけに作成された暫定基準は、策定経過も内容もお粗末。かえって国民の不信を招く結果となった。野田政権は、重要な会議の議事録さえ残していなかった菅政権と、何も変わっていない。 

原子力ムラに取り込まれた野田政権
 原発再稼動への無理な誘導の背景に、原子力ムラの存在があるのは言うまでもない。電力業界はもとより日本経団連の米倉会長をはじめとする財界や、讀賣新聞など一部メディアは国に原発の再稼動を強く迫ってきた。野田首相が、事実上の原発推進に舵を切ったのは、国民ではなく自民党を支えてきた古い勢力と手を結んだ証しだろう。

 藤村修官房長官は5日午前の記者会見で、定期検査により停止中の原発の再稼働について、「法律などの枠組みで同意が義務付けられているわけではない」と述べ、地元の同意は必ずしも再稼動の前提条件にならないとの認識を示している。原発を国策として進めてきた自民党政権よりタチの悪い姿勢だが、電力各社の思いを代弁しただけの話だ。
 
 4大臣会合のもうひとりのメンバーである枝野経産相は、もともと原子力ムラの人間だろう。電力各社の労組で組織された「電力総連」から選挙支援を受けていることは紛れもない事実だし、先日「東電ムラの存在」で報じた東電御用達の会員制倶楽部に枝野氏が来ていたとの証言もある。

 野田首相をはじめ原発行政に責任を持つ大臣たちは、原子力ムラに取り込まれた"原発亡者"なのである。

 重ねて述べるが、この政権に国の未来を任せてはいけない。 




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