九州電力玄海原子力発電所の立地自治体である佐賀県玄海町の岸本英雄町長と岩下孝嗣町議会議長が、スナックやクラブの飲食代を町長交際費および議長交際費から支出していたことが明らかとなった。
岸本町長と岩下議長は、同町への来訪者や地方議員、地元区長らを「懇談」と称し隣接する唐津市の夜の街へ連れ出していた。
同町の交際費をめぐっては、古川康佐賀県知事や九州電力側へ高額な贈り物をしたり、国や県への官官接待を繰り返していたことが判明しており、不適切な公費支出の実態に改めて批判の声が上がっている。
クラブ、スナックで「行政懇談」
玄海町の町長・議長交際費は、そのほとんどが飲食と贈り物に費消されていると言っても過言ではない。
何かにつけ相手に物を与える手法は、原発マネーで住民を黙らせてきた国や電力会社による原発推進の手口が染み付いた証拠でもある。
ただ、地方自治法は「寄附又は補助」について《普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる》と規定しており、玄海町の交際費執行状況には法的な疑義が生じていた。
とりわけ夜の街に繰り出してのスナック、クラブ等における飲食代は、到底正当な支出とは言い難い。町長交際費と議長交際費の支出票などから、そうした支払いについてまとめると次のようになる。
【町長交際費】
平成20年3月25日 「柏崎市議会との行政懇談」→唐津市内のスナックP 54,800円
平成20年8月10日 「議会との懇談」→唐津市内のスナックP 24,000円
平成20年9月11日 「議会との懇談」→唐津市内のスナックP 38,000円
平成21年6月11日 「佐賀県議会議員との懇談」→唐津市内のスナックP 36,000円
平成21年7月11日 「唐津市議会議員との懇談」→唐津市内のスナックP 27,000円
平成21年7月25日 「韓国側との懇談」→ 唐津市内の韓国スナック 40,000円
平成21年12月25日 「韓国側の訪問接遇」→ 唐津市内のクラブQ 70,000円
【議長交際費】
平成18年11月1日 「青森県東通村議長他と懇談」→ 唐津市内のスナックP 16,000円
平成21年3月5日 「県道加倉仮屋港線整備推進協議会懇談会」→ 唐津市内のスナックP 24,000円
平成21年5月28日 「唐津観光協会総会の折飲食代」→唐津市内のスナックS 18,300円
平成22年2月5日 「加倉~仮屋港線整備推進協議会の折飲食代」→唐津市内のバーI 24,000円
平成22年7月28日 「加倉~仮屋港線整備推進協議会の折区長との懇談」→唐津市内のクラブQ 24,000円
平成23年1月24日 「玄海町管内国・県道整備懇談会」→唐津市内のスナックB 38,000円
HUNTERの取材で唐津市内に居住していることが分かった岸本町長(参照記事→「玄海町長 じつは唐津市在住」)は、「自宅」から歩いて行ける距離であることも好都合だったのか同市中町のスナックがお気に入りらしく、頻繁にここを使っていた。同じスナックは、岩下議長の「懇談」にも2度使われていた。
その岩下議長の夜遊びぶりだが、平成21年3月5日の「県道加倉仮屋港線整備推進協議会懇談会」、平成22年2月5日の「加倉~仮屋港線整備推進協議会の折飲食代」、平成22年7月28日の「加倉~仮屋港線整備推進協議会の折区長との懇談」は、いずれも同じ顔ぶれの会合と見られる。
県道整備の協議会後の懇談ということになっているが、女性スタッフが接客するクラブやスナックでまともな話ができるとは思えない。
さらに、記載にある「区長」が選挙区内の人間であれば、"買収"と言われてもおかしくない行為だったことになる。
「運転代行」も交際費から支出
岩下議長の交際費支出は、クラブ、スナック以外にも問題が多い。前出の県道・加倉~仮屋港線以外の道路整備にからんでも、日本料理店での「懇談会」を頻繁に行なっているほか、町政に関する様々な案件について「打ち合わせ」「懇親」を繰り返し、毎回数万円単位の交際費を使っていた。
こうした飲食の席には、選挙区内の町民が同席していた可能性が高く、公選法が禁止する「買収」にあたるとの見方も出ている。
岸本町長同様、岩下議長にも公私の区別がついておらず、平成20年1月には唐津市長との懇談会の後、同市内の「運転代行」を利用し、代金5,000円を議長交際費から支出していた。(下の文書は運転代行費の支出を示す「支出負担行為票」)
また岩下議長は、国会議員や県議の政治資金パーティが開催されるたび、自身だけでなく同僚議員のパー券購入費(会費)まで支払っていた。どう見ても「公益上必要な支出」ではない.
「原発再稼動」この人たちに判断させますか?
原発マネーで汚染され、金銭感覚が麻痺した結果とはいえ、あまりにお粗末な町政の姿に、これまで口を閉ざしていた町民からも批判の声が上がる。
「町の政治家や九電の言うことにモノが言えない状況は変わってないですよ。ですが、誤解して欲しくないのは、玄海町の町民すべてが交付金(電源立地交付金)や九電のおカネでいい思いをしてきたわけではないということです。町を歩いてみて豊かな暮らしだと思われますか?身の丈に合わない施設があるだけで、儲かってきたのは一部の人たちだけなんですね。ほとんどはつましい暮らしですよ。それがどうです。町長や議長が税金でクラブやらスナックで遊んでいたとは。町長は唐津に住んでるというし、あんまりだと思います」(玄海町・50代主婦)。
「麻痺してるんですよ。自分のカネと税金の区別がついていない。"何でもあり"が当たり前の世界になってる。原発マネーのせいなのかもしれませんが、その前に社会人としてわきまえるべきことが理解できてない。たしかに、こんな人たちが原発の再稼動について判断することは間違いでしょうね」(玄海町関係者)
原発再稼動が視野に入り始めたいま、玄海町民だけでなく、多くの国民が立地自治体の歪んだ姿を直視すべきだと思うが・・・。