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ゼネコン関連会社顧問の鹿児島県議 疑惑の質問

薩摩川内市産廃処分場問題(5)

2012年2月29日 08:25

 鹿児島県薩摩川内市で鹿児島県が建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場をめぐって、同市選出の田中良二県議が同事業の関連企業から顧問報酬をもらっていたことが明らかとなった(昨日既報)

 同県議を顧問に就任させていたのは、問題の処分場用地を県に提供し、建設工事まで請け負っている地場ゼネコン「植村組」グループのひとつである「株式会社ウエムラ」。
 
 同県議は、顧問料をもらい始めた平成21年から度々県議会で処分場建設促進の立場で質問を行っていたが、その質疑の内容を検証すると、植村組グループの一員とも思える政治家の姿が浮き彫りとなる。


疑惑の質問
 昨年12月2日、鹿児島県議会定例会の2日目に、薩摩川内市選出の田中良二議員(自民党)が質問に立った。同県議は、この時の質問のなかで次のように発言している。
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《薩摩川内市の産業廃棄物管理型最終処分場につきましては、大原野自治会から分かれて設立された東大谷自治会が、9月に建設に同意され、地元5自治会のうち4自治会の同意を得たところであり、整備を進める上で意味のある大きな一歩だと考えます。
 また、反対住民の阻止行動等により、工事スケジュールがおくれたところですが、事業主体である県環境整備公社は、県警の出動要請を行うなどして、10月に本格的に工事に着手したところであります。
 処分場の建設は、本県における産業廃棄物処理のあり方について、将来を見据え、県民一丸となった取り組みとして推進していくことが重要であると考えます。また、安全性の高い全国でもモデルとなるような施設の整備とあわせて、地域の方々から要望のあった地域振興策の円滑な事業の進捗を図っていただきたいと考えており ます。
 そこでお尋ねいたします。
 第一点は、2か月以上現地作業に着手できなかったわけでありますが、工事の進捗状況と今後の見通しについてお示しください。
 第二点は、環境先進県・鹿児島として重要な取り組みであります管理型最終処分場の建設を粛々と推進していただきたいと思っておりますが、住民理解に向けた取り組みについてお示しください》。
  
 20120228_h01-01t.jpg答弁にあたった内門公孝・県環境林務部長は、次のように答えている。
《管理型処分場に つきましては、九月十五日から、測量、伐採、濁水処理施設の設置などの準備作業に着手したところでございます。これまでに準備作業は終了しまして、現在、 防災調整池やのり面対策などの工事を行っておりまして、今後、埋立地の造成や地下水集配施設などの整備に着手することといたしております。
 管理型処分場の工期につきましては、二年から二年半程度を要するものと考えておりまして、平成二十五年度中の稼働を目指し、全力で取り組んでまいります。
 住民理解に向けた取り組みについてでございます。
 管理型処分場整備につきましては、これまで、5つの関係自治会のうち4自治会から賛成の決議をいただきました。3自治会と環境保全協定等を締結したところでございます。
 9月に賛成の決議をいただきました東大谷自治会につきましては、11月18日にエコパークかごしま連絡協議会に参加していただき、環境保全協定等の締結に向けた協議を進めておりまして、早期に締結できるように取り組んでまいりたいと考えております。
 また、建設に賛同いただいていない自治会につきましては、引き続き、先進地視察や説明会の開催などによりまして、管理型処分場の安全性などについて理解が得られるように取り組んでまいりたいと考えております》。

 このやり取りを一言で表現するなら、薩摩川内市で産廃処分場の建設を強行する県側と、地元選出県議による「茶番」である。

公権力で地域を分断
 田中県議は、発言の冒頭で「大原野自治会から分かれて設立された東大谷自治会が、9月に建設に同意され、地元5自治会のうち4自治会の同意を得たところであり、整備を進める上で意味のある大きな一歩」と述べているが、これがどのような意味を持っているのか説明しておきたい。
 
 県への情報公開請求で入手した問題の処分場に関する文書によれば、県側が処分場建設にあたって「関係地域」として指定していたのは、川永野自治会、川永野町大原野自治会、大原野自治会、木場茶屋自治会の4自治会だった。(注・複雑になるが、正確には文書中の「川永野町大原野自治会」が「大原野自治会」であり、「大原野自治会」は「百次大原野自治会」と称されている)
 
 もともと田中県議が言う「東大谷」という名称の自治会はなく、県側に切り崩された大原野自治会の一部が独立したもの。つまり、公権力が地域社会を分断した結果、自治会がひとつ増えたわけである。
 
 鹿児島県において産廃処分場を建設する場合には、地元自治会との基本協定が必要とされ、県側はなんとしても指定地域の自治会すべてと合意文書を交わす必要があった。そこで考え出したのが巨額の「ばら撒き」による懐柔である。

 県側は昨年春から、わずか数十戸規模の三つの自治会に、「地域振興費」としてそれぞれ3,750万円を支給し、住民の口を封じたのである。最終的には3億円にのぼる公金が投入されるという。
 田中県議の「地域の方々から要望のあった地域振興策の円滑な事業の進捗を図っていただきたい」とは、早く次の振興費を出せと言っているに等しい。

 ちなみに県が大野原自治会を切り崩し、新たに「東大谷」という自治区を作らせたことで、70戸以上あった大野原自治会は30戸前後に減ってしまっている。長い時間をかけて築かれた地域の結びつきを、カネの力で崩壊させてまで産廃処分場の建設を強行しているのである。

 県環境林務部長は、「建設に賛同いただいていない自治会につきましては、引き続き、先進地視察や説明会の開催などによりまして、管理型処分場の安全性などについて理解が得られるように取り組んでまいりたいと考えております」と答弁しているが、こうした「取り組み」は皆無であるばかりか、反対派住民らから「公金支出差止請求」を起こされているというのが実情である。

 紹介した県議会でのやりとりは、こうした背景や事実を隠蔽し、事業の推進を正当化するために演じられた臭い芝居なのである。

ゼネコン顧問議員の本音
 ところで、同県議の「反対住民の阻止行動等により、工事スケジュールがおくれたところですが、事業主体である県環境整備公社は、県警の出動要請を行うなどして、10月に本格的に工事に着手したところであります」との発言には、自身の選挙区の住民に向けられたものとは思えない凶暴さを感じる。
 
 政治家が地域住民を警察権力でねじ伏せることを認めるということ自体、説明責任や自治の基本理念を否定しているようなものなのだが、田中県議はそんなことにはお構いなしに、反対派住民への敵意をむき出しにしている

 昨年夏から秋にかけては、地元住民らの反対運動で工事開始が遅れたうえ、処分場問題に関すHUNTERの情報公開請求を県が拒むという前代未聞の出来事が大きく報じられるなど、この問題に対する関心が高まっていた。
 事業そのものに暗雲が立ち込めつつあることへの苛立ちの表れと見られるが、田中県議には処分場建設を推進しなければならない特別な事情があったことが判明している。それが地場ゼネコン「植村組」グループからの顧問報酬という形の「支援」(同県議の表現)であったことは言うまでもない。

 政治家と行政機関に踏みにじられる県民・・・。鹿児島県民はことの重大性に気付くべきである。
 
 ところで田中県議は、これ以前にも県の産廃行政に大きくかかわる重要な質問を行っていた。
 次稿で、植村組グループと県の意向を受けたとした思われない質問の内容について、詳細を報じる。



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