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電力労組系議員の実態(下)

検証・電力労組の政治資金(3)

2011年12月 6日 08:45

 電力業界は、経営側が自民党を中心とする保守政界に、労働組合側が民主党の中にと、分担して代理人を送り込んでいる。
 
 経営側も労組側も「原発推進」で足並みを揃えてきたことは事実で、先週報じた電力総連の組織内候補である小林正夫参院議員による国会質疑などは、業界の声を国政に反映させるための露骨な誘導だった(記事参照)。
 
 問題の質問を行なった小林議員の政治資金について検証する。



正式な「国会議員関連政治団体」は2団体 
 小林議員が総務省に届け出た正式な"国会議員関連政治団体"は2団体。「民主党参議院比例区第39支部」と「小林正夫後援会」だ。

 同省が公表した政治資金収支報告書によれば、平成22年に設立された小林議員の資金管理団体「小林正夫後援会」は収入、支出ともにゼロ。活動実績がなかったことになっている。

 一方、「民主党参議院比例区第39支部」は、民主党本部や同党都連から平成21年に約1,100万円、平成22年には約2,100万円の交付金などの収入が記載されているほか、両年とも党費または会費の収入が150万円前後あるだけで、その他の収入は皆無。改選期(平成22年)を迎えた参院比例区の議員にしては、政治資金の額は少ない。
 
 支出について見ると、平成22年に850万円が小林議員本人に「公認料」「推薦料」の形で寄附されているが、ほかは事務所経費や印刷物の発送費などとなっている。とても参院比例区を勝ち抜く態勢とは思えない。

支援団体の主力は労組系政治団体
 じつは小林議員を支援する主力政治団体は他にある。しかも動いたカネの額は、正規の関連政治団体以上だ。

 gennpatu 683.jpg電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」は、平成21年に別の政治団体「小林正夫と民主党を支援する会」(以下、支援する会)に3,000万円、22年には「支援する会」と小林議員本人にそれぞれ2,000万円、650万円を寄附していた。

 電力総連から「支援する会」に流れ込んだ政治資金は、機関紙である「小林通信」の印刷費をはじめとするいくつかの印刷物や発送費などで大半が費消されている。
 収入・支出の内容を見る限り、「支援する会」は明らかに小林議員の主力支援団体なのだ。

 「民主党参議院比例区第39支部」と「支援する会」の事務所の住所は「電力総連政治活動委員会」と同じ港区三田2丁目のビルだが、ここには電力総連が入居している。政党支部と労組が同居している形だ。

 小林議員を支援する政治団体はこれだけではない。総務省届け出の政治団体「環境・エネ政策研究会」は毎年3回、政治資金パーティ「小林正夫と国政を語る会」を開催しており、平成21年に1,430万円、22年には1,342万円を集めていた。 
 
 2年間で合計6回開かれた同パーティのうち5回は東京都港区にある「礎会館」を会場としているうえ、研究会の主たる事務所も同会館の中にある。
 
 「礎会館」は東京電力労組のビルで、「環境・エネ政策研究会」が東電労組内にある小林議員支援のための政治団体であることがわかる。

 小林議員は東電入社後、東電労組幹部を経て参院議員になった人物である。電力各社の労組が加盟する電力総連の組織内候補であるが、出身の東電労組が主体的に選挙を支えたと見られる。

 小林議員を支援する電力労組系政治団体には、確認されただけでも2年間で9,000万円近くの収入があった計算になるが、その多くが同議員の選挙に向けた活動に使われていたと推測される。

政治資金規正法の"抜け道"利用か?
 国会議員関連政治団体は、国会議員自身が代表者である団体や、租税特別措置法に規定される寄付金控除の適用を受ける政治団体のうち、特定の国会議員を推薦又は支持することを本来の目的とする政治団体であることを前提にしているため、労組系の政治団体は除外されている。
 
 そのため小林議員の"国会議員関連政治団体"は、民主支部と活動実績のない金管理団体だけということになってしまうが、これでは"抜け道"利用の実態隠しと言われてもおかしくない。
 
 だが、小林議員の選挙における主力部隊は、明らかに労組系政治団体。その資金使途などが一般の政治団体と同じように、甘い報告(例えば5万円以下の収入・支出の記載義務がない)で済んでしまうことには疑問が残る。

国会質問への疑問 
 票とカネの両面で電力労組から手厚く支援を受けた小林議員が、国会で次のように熱弁を振るうのは当然のことなのだろう。

「私は原子力発電は不可欠なもの、これからもきちんと推進をしていかなきゃいけないものだと思います。あわせて、ウランの再利用など考えると、プルサーマル発電をしっかり進めていく、それと核燃料サイクルの構築を行う。最終的には高速増殖炉、これの原子力発電、このことを行って、やはり資源が少ない国である我が国にとって、ウランを再利用していくという、こういうことが私は必要だと思います」。

「日本の原子力は54基ありますけれども、2030年までの計画ということになれば、少なくとも今の数の3割から4割ぐらい数を増やしていかないと安定した電力供給にどうなのかなと、このように思いますので、できればそういう方向でも十分検討してもらいたいし、今大臣がおっしゃったように稼働率が今65%ぐらいしかない、せっ かく造った原子力発電所が稼働率65%程度になっているということですから、これを私はやはり90%ぐらいの稼働率に持っていく、そして原子力発電を有効 に使っていくというこういう施策が大事じゃないかと思いますので、是非そういう方向で取組をお願いをしたいと思います」(平成22年3月23日 参院予算委員会質疑から)

 カネをもらった業界・団体のために国会質問をおこない、業界有利となる答弁を引き出す行為には、違法性さえ感じるのだが・・・。



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