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噴き出た福岡市政の歪み

無責任副市長に批判

問われる市長の任命責任

2011年11月22日 10:10

 高島宗一郎福岡市長の資金管理団体が開いた政治資金パーティーにからみ、山崎一樹副市長が事実上パーティー券を市職員らに売りつけていたことが明るみになった(記事参照)。
 HUNTERの取材に答えた山崎副市長は、自身が特別職であることを前提に、パーティー券販売を「情報提供」、平成9年に同市で起きた政治資金パーティーをめぐる事件を「過去の話」とうそぶいた。
 幼稚な言い訳と市の歴史を省みない傲慢さは、霞ヶ関官僚出身者特有のものと言えそうだが、福岡市の不幸はこうしたとんでもない人物を副市長という市政のナンバー2に据えてしまったこと。
 高島市長の任命責任が問われるのは言うまでもない。
 
許せぬ市職員への責任転嫁
 gennpatu 655.jpg高島市長の政治資金パーティーで事前にばら撒かれた1枚10,000円の「パーティー券」は、案内状と一体になっており、下三分の一ほどを切り取る形式になっている(文書参照。下の黒っぽい部分がパーティー券となっている)。
 
 山崎副市長は、これを"案内の文書"と主張し、「パーティー券と書かれると困るんですよね」と言い出す始末。しかし、どこから見てもパーティー券はパーティー券なのだ。

 さらに副市長は、パーティー券を市職員に配った行為を「情報提供」と言い張り、要請や強要を否定する。
 だが副市長は、「組織のトップである市長の考え方を、幹部職員に関しては知るいい機会」だったから市職員にパーティー券を渡した(副市長の表現では『情報提供』)としており、上司が部下に「市長の考え方を知るいい機会」だと言って参加を勧める行為は、10,000円の支払を促したに等しい。「たんなる情報提供」ではないはずだ。

 山崎副市長の言い分は、保身をはかる場合の官僚が多用する詭弁であり、市民感覚とは程遠いものだ。それがわからない人物を市政のナンバー2に据えているわけで、パーティー券を「買わされた」(市職員の感想)側の市職員はたまったものではない。

 山崎副市長の主張のなかでもっとも醜い部分は、パーティー券を「買わされた」側の市職員が、法律で求められた公務員の政治的中立を犯しかねない事態に立ち至ったことについて何の反省もないことだ。
 それどころか、「私は法の対象の人ではない」として特別職である自分の立場を強調した末に、「個々人のご判断」として責任を一般職の職員に押し付けてしまっている。
 
 ここで、副市長と記者のやり取りを再確認しておきたい。

記者:パーティー券を渡された方々は、一般職の公務員ということになるが?
副市長:私は、特別職の職員として、情報提供を行なったと・・・。
                   (中略)
記者:しかし、これは政治団体の主催。パー券には政治資金パーティーであることが明記してあるが?
副市長:ええ、それも承知の上で、参加は個々人の自由ですからね。

記者:しかし、参加を勧めること自体、法の趣旨に反するのではないか?
副市長:私は法の対象の人ではないじゃないですか。

 特別職である自分は、公務員の政治的中立を求めた地方公務員法や政治資金規正法上の責任はないと逃げを打っているのである。そのうえで、責任は参加した市職員にあると言っているのだ。

記者:パーティーに参加するためには、1万円を支払わなければならないが、それも承知で勧めたということでいいか?
副市長:もちろんそうです。

記者:パー券は案内と一体だ。
副市長:ですから、案内を差し上げてどう判断されるかは個々人のご判断になりますよ。おわかりになります?
 
 山崎副市長は、自分は情報提供したまでで、市長の政治資金パーティーに参加した市職員が公務員としての資格を問われる事態になろうが知ったことではない、それは判断した市職員個人の責任だと強調しているのである。
 
 政治的中立が求められる市職員にパーティー券を売った自らの行為を「当然の判断」と強弁したうえで、パーティー参加の責任は市職員にあるとする副市長。桑原敬一元市長の時代から市役所を見続けてきたが、これほど無責任なナンバー2には未だかつて出会ったことがない。

 山崎副市長は総務省の官僚だが、福岡市の財政局長や京都市の副市長を歴任したあと内閣府参事官となり、3月11日の東日本大震災発生以降は被災地に派遣される消防や自衛隊の調整担当だったという。
 しかし、こうした重要な任務を放り出し、福岡市の副市長に転身したことで、国の関係者から厳しい批判が出ていたとも言われる。もともと無責任な小役人だったということだ。

 この程度の副市長の下で働かされる市職員は気の毒というしかないが、それ以上に不幸なのは市民である。
 
 山崎副市長に対しては、厳しい批判が上がっている。ある市幹部OBは次のように話す。「部下に責任を押し付け、自分は特別職だから問題ないとする姿勢は余りに無責任。こんな副市長に振り回されるのはごめんだと言っている職員は少なくない。市長にいい顔を見せようとしたのかもしれないが、どっちを向いて仕事してるんだと言いたい。どの職員も市民と向き合ってがんばっている。福岡市役所は霞ヶ関官僚の出世の踏み台ではない」。

求められる高島市長の釈明
 ことの発端は高島市長の「カネ集め」である。自らの政治資金を集めるために開催した政治資金パーティーだったが、平成9年のパーティー券事件を経験した福岡市にとって、市役所内部でのパーティー券販売は「絶対にあってはならないこと」(市幹部OB)。
 さらに、違法行為が問われかねない事態を招来しながら、責任を他の市職員に押し付ける副市長を選んだのも高島市長である。
 
 市関係者からは、「市長は山崎副市長の言うことしか聞かない」といった批判や、市長の私設秘書の行状について心配する声も上がっている。
 今回の事態や批判の声に対し、市長の釈明が求められているのは言うまでもない。

 情報発信の重要性を訴えてきた高島市長だ、沈黙するとは思えないが・・・。



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