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「九州電力労働組合政治活動委員会」

群を抜く資金力

検証・電力労組の政治資金(2)

2011年11月30日 09:30

 原発説明番組における「やらせメール」や、プルサーマル発電についての県民説明会での「仕込み質問」。
 いずれも、九州電力による悪質な世論誘導だったことは明らかなのだが、会長や社長は責任もとらず居座ったままだ。
 自社で設置した第三者委員会(元委員長:郷原信郎弁護士)とは、報告書の内容をめぐってバトルを展開する始末で、混乱収束の見通しさえ立っていない。
 「やらせ」と言えば「九電?」と聞かれるほど全国的に有名になった同社だが、電力需要が増加する冬場を迎えた現在も、多くの懸案を抱えたまま身動きのできない状態が続いている。
 経営陣のお粗末過ぎる姿勢には社内からも批判の声が上がっているが、同社の労働組合が事態収拾について発言した(あるいは動いた)という話は聞こえてこない。

資金力は電力9社中トップ
 玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)、川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)のふたつの原発を擁する九州電力の労働組合には「九州電力労働組合政治活動委員会」という政治団体がある。

 九州7県に次の9支部があり、それぞれが各県選管に政治団体としての届け出をしている。
九州電力労働組合政治活動委員会長崎支部
九州電力労働組合政治活動委員会佐賀支部
九州電力労働組合政治活動委員会大分支部
九州電力労働組合政治活動委員会鹿児島支部
九州電力労働組合政治活動委員会熊本支部
九州電力労働組合政治活動委員会宮崎支部
九州電力労働組合政治活動委員会北九州支部
九州電力労働組合政治活動委員会福岡支部
九州電力労働組合政治活動委員会本店支部

 九電は原発事業者である電力9社の中でも、とりたてて企業規模が大きいわけではない。次に示したように上から5番目の規模である。(数字は各社ホームページなどによる直近のもの)
        資本金    売上高    従業員数
東京電力 9,009億円 5兆3,685億円  38,671名
関西電力 4,893億円 2兆4,759億円  22,207名
中部電力 4,307億円 2兆 843億円   16,940名
東北電力 2,514億円 1兆7,087億円  12,724名
九州電力 2,373億円 1兆4,860億円  12,689名

 しかし、労組の政治団体の資金力は、電力9社のなかでトップを誇っている。
電力各社の労組の政治団体名と、収入総額、その年の収入、支出総額、繰越額、預金残高を並べてみた。(数字は平成21年の政治活動に関するもの。東電労組の政治団体については本シリーズ前稿に詳細→
                      
「四国電力労働組合政治連盟」
1億4,001万8,614円 4,707万2,905円 4,523万1,886円 9,478万6,728円 5,200万円

「関西電力労働組合政治活動員会」
1億5,801万1,554円 8,533万3,953円 5,467万454円 1億334万1,100円 8,000万円

「中部電力労働組合政治連盟」
2億947万1,750円 8,061万6,799円 5,423万1,601円 1億5,524万149円 1億4,202万8,149円

「北陸電力労働組合政治連盟」
1億7,519万8,864円 2,896万8,265円 2,264万1,382円 1億5,255万7,482円 1億820万円

「東北電力労働組合政治連盟」
3億9,820万7,052円 7,835万7,177円 5,869万4,593円 3億3,951万2,459円 1億1,800万円

「中国電力労働組合政治連盟」
3億4,652万2,922円 7,242万7,245円 5,687万3,166円 2億8,964万9,806円 2億8,964万9,806円

「北海道電力労働組合政治連盟」
1億2,143万9,210円 6,448万3,272円 5,439万290円 6,704万8,920円 4,343万円

「九州電力労働組合政治活動委員会」
5億7,681万4,222円 1億303万3,811円 8,954万6,317円 4億8,726万7,905円 3億4,000万円

 九電労組の政治団体「九州電力労働組合政治活動委員会」の政治資金総額は、東電労組や関電労組の政治団体を上回っており、年間収入も支出額も電力9社のなかでトップ。預金残高にしても群を抜いている。
 
 収入のほとんどは会費でまかなわれており、政治資金収支報告書の記載では、年間の会費収入1億193万9,000円を12,455人で負担したことになっている。1人あたり年間約8,200円の会費ということだ。

組織内候補への手厚い援助 
 九電労組は、長崎県議会、都城市議会、唐津市議会、長崎市議会、大分市議会、熊本市議会、八代市議会、佐賀市議会、鹿児島市議会、宮崎市議会などに議席を有しているが、組織内候補に対してはじつに手厚く支援していた。
 
 専従活動旅費、議員政治活動旅費、公認料、議員支援金、議員政治活動支援金といった様々な名目で、10人の組織内候補(新人含む)に対し、合計約3,700万円の支出を行なっている。原発立地県の県庁所在地である佐賀市議会の新人には、約1,200万円を支援していた。

 各支部への交付金などが約1,800万円程度であるのに対し、組織内候補への支出はその倍。九電労組がいかに議員の育成に力を注いでいるかがわかる。

 これは電力各社の労組すべてに言えることだが、収入の多くが組織内候補をはじめとする政治家への支出に充てられており、地方議会での影響力確保に躍起となっている現状が浮かび上がる。
 
 電力総連が国政、電力各社の労組は地方議会に一定の勢力を築いている状況で、こうした現実が民主党の原子力政策に反映されてきたのは事実だ。

求められる九電労組の主体性
 抜群の資金力で多くの組織内候補を育ててきた九電労組だが、会社による一連の「やらせ」に関しては何の存在感も発揮していない。
 
 労使一体と言われる九電全体の体質とはいえ、会社自体が反社会的と見なされはじめた事態に知らぬ顔は通らない。労組としての主体性をもって、経営陣に意見するくらいの働きを見せてもらいたいが・・・。




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