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「東京電力労働組合政治連盟」

検証・電力労組の政治資金(1)

2011年11月28日 08:15

収支報告書 東京電力福島第一原子力発電所の事故発生以来、「原子力村」の存在や原発立地自治体の政・官・業を蝕む利権構造が次々と浮き彫りになった。

 象徴的なのが玄海原発(佐賀県玄海町)を抱える佐賀県で、事業者である九電と古川康佐賀県知事の癒着が「やらせメール事件」を引き起こし、全国にある原発の再稼動を阻む要因のひとつとなっている。

 現在、沖縄電力を除くすべての電力会社(北海道電力、東北電力、北陸電力、東京電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力)が原発を有しているが、これまで電力各社の首脳陣は地域経済界のトップの座に君臨し、その力を背景に政治をコントロールしてきた。対象は主として自民党系の知事や国会議員といったいわゆる保守政治家である。

 一方、民主党を支援する「日本労働組合総連合会」(連合)傘下にある全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)は、組織内候補として参院議員2名を国政の舞台に送り出しているほか、電力各社の労組ごとに多くの地方議員を抱えており、与野党に原発擁護の政治勢力が養われている状況だ。

 原発をめぐる電力各社のこれまでの行状が注目されるなか、今年も全国の政治団体が総務省や都道府県選管に提出した政治資金収支報告書の公開時期になった。
 原発の再稼動問題で揺れる電力各社には会社ごとに労働組合があり、それぞれの組合が政治団体を設立している。
 「労使一体」と揶揄される電力各社の労組による政治活動の実態が知られることは少なかったが、福島第一原発の事故以降、組織内候補の動向もクローズアップされはじめた。
 
 労組の政治団体の概要と資金状況について検証していくが、まずは、福島第一原発の事業者である東京電力労組の政治団体について見てみたい。

1都11県に15の支部
 電力総連に加盟している東電労組の政治団体は「東京電力労働組合政治連盟」。東京都港区にある東電労組の会館「礎会館」の中に本部事務所を構えており、都内をはじめ東電の事業所がある各県に支部を持つ。
 東電の企業規模は巨大だが、労組組織も電力各社のなかでは突出して大きく、約3万2,000人とされる組合員の数に比例して政治資金も豊富だ。

 東京電力労働組合政治連盟が総務省に提出した平成21年の政治資金収支報告書によれば、この年の収入総額は約3億8,000万円。内訳は、前年からの繰越額が約1億2,000万円で、21年だけの純粋な収入額は約2億6,000万円となっている。
 収入のほとんどが「会費収入」なのだが、2億6,176万6,300円の会費を654,415人で負担したことになっている。
 
 組合員の数は約3万2,000人程度のはずで、会費納入者の数はその20倍。単純計算では1人当たり約400円程度の会費を納入したことになるが、65万人という数字はどう見ても不自然だ。
 ちなみに前年の平成20年には、約50万人から2億円強の会費を集めていた。

 同政治連盟で集められた政治資金は、機関紙の発行事業費や組織活動費として約3,000万円が費消されるほか、東電社員、東電労組役員の経歴を持つ群馬県前橋市の市議、神奈川県横浜市の市議、茨城県議会議員の政治団体に約50万円、約250万円、約568万円がそれぞれ渡っていたほか、電力総連系の政治団体「エネルギー政策を考える芝浦の会」に2,000万円が寄附されている。

 また、東電労組が加盟する電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」への負担金が約1,780万円。1億2,000万円余りは各都県にある東電労組の支部に交付金、特別交付金などの名目で支出されていた。

 都および県選管届け出の支部名と、収入総額、支出総額、翌年への繰越額は次のとおりだ(東京、千葉、栃木の数字は平成22年分、その他は平成21年分を記載)。

東 京 「東京電力労働組合政治連盟東京都支部」56,554,906円、32,636,381円、23,918,529円
千 葉 「東電労組政治連盟千葉県支部」31,587,290円、12,390,395円、19,196,895円
埼 玉 「東京電力労働組合政治連盟埼玉県支部」16,236,955円、8,325,984円、
神奈川 「東京電力労働組合政治連盟神奈川県支部」21,201,598円、14,284,297円、6,917,301円
群 馬 「東京電力労働組合政治連盟群馬県支部」10,008,415円、4,579,378円、5,429,037円
茨 城 「東京電力労働組合政治連盟茨城県支部」8,245,951円、7,635,935円、610,016円
山 梨 「東電労組政治連盟山梨県支部」14,490,846円、5,322,594円、
栃 木 「東京電力労働組合政治連盟栃木県支部」6,594,537円、5,288,107、
長 野 「東京電力労働組合政治連盟長野県支部」11,407,012円、2,822,525円、8,584,487円
静 岡 「東京電力労働組合政治連盟静岡県支部」21,425,586円、9,778,467円、
新 潟 「東京電力労働組合政治連盟新潟県支部」9,725,820円、3,431,557円、
福 島 「東電労組政治連盟福島県支部」7,549,743円、6,563,023円、

 東京都には、東京都支部の下にさらに三つの政治団体が存在する。
「政策研究会HONTEN」 1,575,500円、 459,945円、 1,115,555円
「東京政治政策研究会」12,463,799円、7,765,343円、4,698,456円
「多摩政治政策研究会」10,118,703円、 6,117,455円、4,001,248円

会費収入
 各支部の収入は、「東京電力労働組合政治連盟」からの交付金と支部ごとの会費収入が主となっている。
 
 下に示したように、会費収入を納入人数で除すと、1人当たりの会費は2,000円前後となっているのだが、少ない支部で200円、多い支部では5,500円と言うケースも存在する。
 「東京電力労働組合政治連盟」の会費納入者が65万人以上となっていることも含め、実態(組合員数)との差には首をかしげざるを得ない。(数字は会費収入、納入者数、1人あたりの会費の概算)

東 京  14,910,000円 74,550人  200円
千 葉  7,210,000円  3,955人 1,823円
埼 玉  5,360,000円  2,424人 2,211円
神奈川  7,780,000円  3,600人 2,161円
群 馬  4,120,000円  2,100人 1,961円
茨 城  4,960,000円  2,000人 2,480円
山 梨  3,000,000円  1,031人 2,909円
栃 木  3,620,000円  1,508人 2,400円
長 野  1,760,000円   474人 3,713円
静 岡  2,980,000円  1,080人 2,759円
新 潟  2,640,000円  1,169人 2,258円
福 島  3,720,000円  2,061人 1,804円

政策研究会HONTEN 会費収入なし
東京政治政策研究会 4,878,500円  887人 5,500円
多摩政治政策研究会 1,487,500円 1,680人  885円

 いずれにせよ、こうして集められた政治資金は、各県の支部で組織内候補(地方議員)の政治資金や、組合の組織対策、幹部による会合費などに充てられている。
 豊富な政治資金と票に支えられた、主として民主党系の議員たちの政治姿勢が、選挙母体ともいえる電力業界寄りとなることは言うまでもない.

支出先不明が7割の不透明さ
 gennpatu 668.jpg支出の不透明さが目立ったのは東京に事務所を置く「東京電力労働組合政治連盟東京都支部」。
 同支部の収支報告書は、「その他の支出」として一括処理されているものばかりで、支出目的や支出先が明記してあるものの方が少ない。
 
 収支報告書への記載義務があるのは5万円超(国会議員関係政治団体のみが1万超を報告)の支出であるため、それ以下の支出が多かったということらしいが、同支部の「渉外費」などは平成21年に約1,500万円、22年にも約1,000万円をその他の支出として一括処理していた。
 
 両年の支出総額と、5万円以下の支出として片付けられたものの合計は次のとおりだ。

21年支出総額 38,690,565円 うち「その他の支出」26,687,988円
22年支出総額 32,636,381円 うち「その他の支出」19,149,022円

 なんと21年の支出総額の7割、22年も6割が支出先不明の形となっている。

優雅な「幹事会」も 
 gennpatu 666.jpg労組ながら、電力業界の雄・東電らしいと思えるのは、東京都八王寺市にある支部のひとつ「多摩政治政策研究会」の支出。
 同会は、平成21年、22年と「幹事会」を行なっているが、会場は新潟県十日町市にある「当間(あてま)高原リゾート」だった。
 ホテルを中心に、ゴルフ場や温泉といった施設が揃う総合リゾートだが、運営しているのは「株式会社 当間高原リゾート ベルナティオ」で、東電のグループ企業だ。

 「多摩政治政策研究会」はこのほか、石内スキー場にある施設でも幹事会を行なっていた。労組の幹事会をリゾート施設で行なうとはいかにも東電らしい。
 
 同研究会に取材したが、幹事会の場所が東電の関連施設であるという理由のほかは、幹事の人数も幹事会の目的等についても答えられないという。ゴルフやスキーはやっていないというが、どちらの幹事会もそれぞれのスポーツにとっては絶好の時期となっており(右の収支報告書参照)、疑問の残る回答だった。
 目についた支出のひとつである総会のコンパニオン派遣代についても聞いたが、こちらは会場が何もやってくれないので、純粋な給仕なのだと説明された。
 会場のレストランには「お酒を注ぐ人もいないですから」(同研究会側の説明)ということだ。

労組も隠蔽体質?
 前述した会費収入と会費納入人数への疑問について確認しようと、政治資金収支報告書に記された「東京電力労働組合政治連盟」の連絡先に電話してみたが、『お掛けになった電話番号は現在使われておりません』。104の電話番号案内にも登録はなかった。
 巨額な政治資金を運用する団体にしては不透明過ぎる状況だが、会社同様の体質ということになる。まさに「労使一体」である。
 
 



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