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佐賀知事 頻繁に公舎往復

公用車使い不審な行動

~やらせメール会談の背景~

2011年10月18日 09:15

 疑惑の背景には、知事の不審な行動があった。  

 古川康佐賀県知事の発言が「やらせメール」につながったとされる九電幹部らとの会談が行なわれた佐賀県知事公舎。
 
 HUNTERが佐賀県から情報公開請求で入手した知事公用車の運行記録から、古川知事が公用車を使い、頻繁に公舎と県庁を行き来していた実態が浮かび上がった。
 
 通常の執務形態とは思えぬ不審な行動だが、佐賀県庁秘書課は昼食以外の公舎通いの理由を明らかにしておらず、異常とも思える知事の行動は隠されたまま。
 
 公用車と公舎という人目につかない密室を利用し、説明できない用務をこなしていた可能性も否定できない。

頻繁に公舎と県庁を往復
 下の文書は、今年4月22日における知事公用車の「自動車運行日誌」だ。

 日誌に記された行先、乗車者氏名から、この日知事が公用車に乗車したのが5回にも及んだことが分かるが、そのすべてが佐賀県知事公舎と県庁を行き来するためのものだった。

自動車運行日誌 
 
 この日、古川知事はまず最初の乗車で、遅くとも午前8時25分までに登庁。次は、12時20分頃に乗車し、再び公舎に向かっている。
 
 gennpatu 541.jpg3回目の乗車は12時50分頃で、これは公舎から県庁へ。
 13時45分には4回目の乗車となり、二度目の公舎入りとなるが、10分程度で県庁に戻ったものと見られる。
 
 というのは、ここで県庁に戻っていなければ、県庁から公舎までの帰途と思われる19時45分の乗車記録との整合性がなくなるからだ。

 いずれにしても、「昼食」以外の用件で公舎に戻ったことは明らかで、知事のスケジュールを管理する県庁秘書課もそれを認めている。
 
 じつはこの日以降、古川知事は頻繁に公舎と県庁を往復し始める。
(注:ちなみに、4月10日には佐賀県知事選挙の投・開票が行なわれており、新任期がスタートした23日が土曜日だったため、25日(月)になって新任期就任挨拶や会見が行なわれていた)。
 
 HUNTERが入手した「自動車運行日誌」は、東日本大震災が発生した3月11日から7月16日までの間で、公用車が実動した89日分のものである。

 このうち、登庁時と退庁時と見られるそれぞれ1回ずつの公用車使用以外に、目的が明かされていない県庁と公舎の行き来を記録した日数は23日前後となる。

 毎回1~2度、公舎と県庁を往復していた形だが、首長の行動パターンとしては極めて珍しいものだ。

 通常、公舎を構える各県の知事が朝の登庁から帰りまでの間に、公舎に戻ることは少ない。
 
 特別な公務で着替えの必要がある場合などを除いて、頻繁に公舎と県庁を往復する必要などないからだ。そうした意味で古川知事のケースは特殊と言える。
 
 そもそも、県庁内で執るべき公務と知事公舎での用務とは区別されるべきもので、知事の都合で執務場所を変えることが許されていたら、「開かれた県政」など実現できるわけがない。

公用車使い公舎で「昼食」 
 佐賀県庁秘書課に事実関係を確認したところ、日に数度の公舎入りのうち、お昼前後の分は「昼食」のためだと言う。

 古川知事は、昼食のために公用車を使い、いちいち公舎に帰っていたということになる。ずいぶん優雅な仕事ぶりだが、公私混同との批判は免れまい。

 九州のある首長経験者は次のように話す。
「公務日程とからまない昼食は『私用』。公用車でおうちに帰って昼ごはんなど、ふざけているとしか思えない。県庁職員にそんな身勝手が許されるはずもなく、特別職の知事だから何でもOKというわけにはいかない。知事は県庁のトップとして、常に県職員の先頭に立つべき使命を帯びている。こそこそ公舎に帰って、よからぬことをやっていると見られても仕方がない行動だ」。

公舎での用務は不透明
 gennpatu 199.jpgこれだけでも不適切な事態だと思われるが、問題はそのほかの公舎通いの理由だ。

 この点について、同秘書課ははっきりとした回答をすることができず困惑の様子。昼食以外の公舎入りについては、公務であったか私用であったかも分からない状況となった。

 九電幹部との会談が知事公舎で行なわれたことについては知事も九電側も認めているが、これはすなわち、同会談が非公式な日程だったことを示している。
 
 「やらせメール」の発端が知事発言だったかどうかで混乱を呼んでいるのは、知事の隠密行動が原因なのだ。

 会談が行なわれた6月21日の知事の動きについては、「古川佐賀県知事 密室会談で異例の動き」として報じたが、会談が登庁前の時間帯に行なわれたため、秘書課の職員も立ち会っていない。

 会談の場所を公舎にしたのは、余人を交えず話をするためだったとしか思えず、知事がどのように強弁しようが、密室でのやりとりが胡散臭いものだったことは否定できない。

 九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の再稼動をめぐり事態が緊迫する中、不審な公舎通いを続けてきた知事の行動は明らかに不適切だ。

 公舎との頻繁な往復には、九電関係者との接触や、知られてはならない指示を出していた可能性も否定できない。

 古川知事自身に説明責任が求められているのは言うまでもない。



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