九州電力が引き起こした「やらせメール事件」の発端になったと見られる、古川康佐賀県知事と九電幹部らの会談の意味合いを示す文書が開示された。
3日、HUNTERが佐賀県に情報公開請求して入手した古川知事の公用車運行日誌と知事の公務日程表から、知事が九電幹部らと会談した6月21日の朝、県議会開催中の登庁時間を通常より1時間前後遅らせるなど、異例の動きをしていたことが分かった。
会談が、県庁内の知事室ではなく公舎で行なわれたことや、本会議開会直前の貴重な時間を割いていたことなどから、知事にとっては重要な意味を持つ会談だったことがうかがわれる。
異例の動き
HUNTERが佐賀県に開示請求したのは、今年3月11日以降の「知事の日程が分かる文書」と「公用車の運行記録」。
これらによると問題の6月21日(火)の知事の日程は、午前10時から「6月定例県議会 一般質問」となっている。
一方、同日の知事公用車の動きは、9時25分に県庁をスタートし、公舎で知事を乗せて同45分には県庁へ戻っていた。知事公舎は県庁から約1キロ、時間にして車で数分の距離にある。知事は県議会が開会するギリギリに県庁に入ったことになるが、この動きは極めて異例なものだった。
今年3月11日以降、知事が出席した本会議場での会議は11回。このうち10回が午前10時ちょうどの開会予定となっていたのだが、知事が県庁入りした時間を確認してみると、10回のうち8回は8時台の登庁、1回が9時ちょうどとなっていた。例外の1回が6月21日の九電との会談の日ということになる。本会議開催日とおよその登庁時間(公用車の運転終了時間)は次のとおりだ。
5月10日・8時50分
5月12日・8時58分
5月23日・8時35分
5月25日・8時50分
6月13日・9時
6月17日・8時30分
6月20日・8時35分
6月21日・9時45分
7日 4日・8時20分
7月 5日・8時50分
問題の6月21日、知事が登庁したのは前述のとおり9時45分頃で、そのほかの日と比べるとかなり遅い県庁入りだったことが分かる。
この日、県議会では自民党県議らによる一般質問が行なわれており、玄海原発の発再稼動問題を抱え、知事の発言に注目が集まっていた。大切な議会でのやり取りを前に、九電幹部らと公舎で密談をこらしたことになる。
知事は、九電副社長の退任挨拶を受けるために会ったとしているが、九電との関係を取りざたされるなか、県庁ではなくわざわざ公舎で会談に及んだのは、会談の事実そのものを隠蔽したかったからではないか。
さらに、通例の登庁スタイルを大幅に変えてまで密談したことなどから、古川知事は、九電に対し強いメッセージを伝えたかったとも考えられる。
佐賀県の隠蔽体質
ところで、県が開示した知事の日程が分かる文書とは、毎週金曜日にプレスリリースしている公務日程表だった。当然、問題の6月21日の日程には九電幹部らとの会談の記載はない。
知事の日程を詳細に記した別の文書があるはずだとして抗議したが、県秘書課は「職員のメモなどは公文書に含まれない」として開示を拒否。隠蔽体質の自治体が言い出す決まり文句だ。
市民オンブズマン福岡・児嶋研二代表幹事のコメント
こうした佐賀県の見解に対し、市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は次のように話す。「佐賀県の公文書に関する認識は間違っている。公務のために作成した文書はたとえメモであったとしても公文書となることは最高裁の判例でも明らか。メモが、プレスリリースした知事の日程表の基礎的資料となった時点で『共有』されていたと考えるべきで、公文書としての要件も満たしている。佐賀県は、知事自身が疑惑の目で見られていることにきちんと反論するためにも、必要な情報を開示すべきだろう」。