今年8月、福岡市が人工島での建設を予定している「新青果市場」の基本設計を行なう業者を決める入札が行なわれた。
落札したのは、「こども病院」現地建て替えの費用を極端に低く見積り、結果的に市政の混乱を招いた設計業者だが(参照)、入札結果は市議会の委員会で報告されただけで、市のホームページなどでは公表されていない。
巨額な公費を投入して行なわれる事業でありながら、情報を出し渋る市側の姿勢は疑問だ。
市への情報公開請求で入手した関連文書や関係者の話などから、同事業に関する問題点を検証していく。
(写真は福岡市役所)
公表されない入札結果
「新青果市場」基本設計の入札が行なわれたのは8月30日。入札に参加したのは、大手と地場の設計会社が組んだ10の共同企業体(JV)で、すべてのJVが最低価格で応札したため"くじ引き"で「梓・那の津寿設計共同企業体」(代表者:梓設計)に落札者が決まっていた。
福岡市が公共工事や設計業務の発注にあたり実施した入札結果は、市のホームページ上で確認できるはずだが、今回の入札結果についてはどこにも掲載されておらず、入札結果検索にも引っかからない。
市農林水産局新青果市場担当の説明によれば、入札を行なったのが入札結果を公表している財政局契約課ではなく、原課である新青果市場担当(以下、市場担当)だったためだと言う。入札結果を公表しているのは、契約課を通った分だけなのだ。
しかし、5,000万円を超える契約であるうえ、市政の重要課題についての情報を進んで開示しようとしない姿勢は不適切ではないか。
この点について、市場担当は市議会第3委員会で入札結果を報告したと言うが、求められているのは市民への直接的な説明だ。
高島宗一郎市長は、昨年の市長選以来、情報開示の重要性を訴えてきたはずで、市議会への報告だけで説明責任を果たしたとする市場担当の言い分は容認できるものではない。
節目ごとの情報開示がいかに重要であるかを、市は「こども病院」の問題から学習することがなかったようである。
あくまでも公表拒否
市が定めた「福岡市契約及び検査に係る事務分掌の特例に関する規則」によれば、予定価格が250万円を超える公共工事や設計業務の契約事務は、財政局契約課が行なうと規定している。
新青果市場の基本設計は、予定価格が65,433,900円となっていたことから、当然契約課が実施したものと考えていたが、入札から契約に至るまでの事務一切は、新市場担当が行なっていた。
市側に確認したところ、基本設計までの契約事務は、原課(今回の場合は新市場担当)が行なっていいことになっているのだという。
契約結果公表の有無が、市側の都合によって左右されるとは知らなかったが、今回行なわれた入札が、市政の重要課題に関するものであることや、契約金額の大きさなどを考慮すれば、当然市民の目に触れるようにするべきだろう。
市場担当に、入札結果を公表するつもりはないかを再度確認したが、「ありません」とキッパリ。
こども病院問題で明らかとなった福岡市の情報開示への消極的な姿勢は、やはり改まっていないということだ。