福岡市が行なう「人工島」に関する事業には、常になにかしらの疑惑が付きまとってきた。
特に、こども病院や青果市場の移転に絡んでは「はじめに人工島ありき」という真意を隠そうとしたばかりに、無用の嘘や隠蔽を重ね、市政の混乱や停滞を招いてしまった。
問題は、十分な説明責任を果たさぬまま、人工島事業に巨額な税金投入を続ける市側の姿勢だ。
その人工島への移転が決まっている「青果市場」の整備事業に絡んで、HUNTERが福岡市への情報公開請求で入手した文書から、またしても不可解な事実が明らかとなった。
(右は、福岡市が公表した新青果市場のイメージ図)
こども病院問題を混乱させた業者が基本設計?
今年8月、福岡市が人工島への移転計画を進める「新青果市場」の基本設計業者を決める入札が実施された。
落札したのは東京都に本社を置く「梓設計」で、契約金額はなんと約5,000万円。
実は同社こそ、こども病院人工島移転に関する「検証・検討」作業で、現地建て替え費用を85億5,000万円と算出した設計業者だった。
これまでの市側の主張は、この試算額での現地建て替えは困難と判断し、大手ゼネコンに再試算させた結果、費用が1.5倍の128億3,000万円になったというものだ。
つまり、梓設計の見積もり額が間違いだったということになるが、不思議なことに市側は、同社や「検証・検討」で直接業務委託を受けた東京のコンサルタント会社に対して何のペナルティも与えていない。
こども病院現地建て替え費用に関する市側の説明が間違っていないという前提に立てば、見積もりを誤り、結果的に市政を混乱に陥れた企業側にも一定の責任があるはずだ。
税金を使った業務を受託しておきながら、知らん顔というのでは筋が通らない。
工事金額が42億8,000万円も違っていた時点で、設計業者として大きなミスを犯していたことは明白。そうした意味で「梓設計」には、福岡市が計画する重要施設の設計を請け負う資格があるのか疑問だ。
こども病院問題をめぐる混乱について、責任の所在をハッキリさせなかったため、市民感情を逆なでするような業者選定が行なわれたことになるが、問題はまだある。
なぜ「入札」?
今回の設計業者選定には、「一般競争入札」が採用された。今年8月30日に実施された入札には10JV(共同企業体)が参加。すべてのJVが最低価格で応札したためくじ引きで落札者が決まっている。
新青果市場の基本設計は、整備計画の成否を決定付ける重要な仕事だ。それだけにプロポーザルなど提案型の業者選定を採用し、市場関係者はもちろん有識者らの厳しい目を通すべきだと考えられるが、なぜかいきなりの入札。
拙速とも思える手法には疑問が尽きない。
次稿から、新青果市場の計画について、今回の入札をはじめとする問題点を検証していく。