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福岡市新青果市場への疑問(2)

-排除されたプロポーザルー

2011年10月11日 09:30

 福岡市が人工島(市内東区)での建設を予定する「新青果市場」の基本設計をめぐって、業者を決めた入札の結果を公表しようとしない市側の姿勢に疑問を呈したが(参照)、業者の選定方式を「一般競争入札」に決めた経緯についても検証しておきたい。

 青果市場の関係者はもちろん、市民の中からも「これだけの大規模事業なのに、なぜそれぞれの設計業者の提案内容を検討する機会を設けなかったのか?」という疑問の声が寄せられたからだ。

 改めて入手した関連文書を見ていくと、新青果市場の開場を急ぐ市側の都合ばかりが浮き彫りとなる。

入札そのものが規定違反だった
 新青果市場の建設計画は、用地取得費約170億円、整備費約200億円(ともに『新青果市場整備事業実施計画』より)をかける大事業だ。
 
 情報開示が重要になることはもちろん、計画に関しては市場関係者や市民の声が十分に反映されるべきだが、基本設計の業者選定方式は、農林水産局の内部だけで決定されたものだった。
 
 先週、「福岡市、入札事務を恣意的運用」・「福岡市、規定無視して契約事務」・「福岡市事務規定違反問題で新たな事実」で報じたように、この入札事務自体が市の規定に違反したものだったことが明らかとなった。

 「基本設計の入札事務は原課(事業を所管する部署)」とする市役所内部の解釈は、条例や規則に明記されておらず、根拠となる公文書さえ残されていなかったというもの。
 新青果市場の「基本設計」にかかる入札事務を、農林水産局新青果市場担当に行なわせたことは、正規の手続きによるものではなかったということになる。

 市側は「契約そのものは有効。問題はない」と強弁するが、違法ともとれる行政事務が行なわれたことは事実だ。

 市関係者の間からも、次のような声が上がる。「5,000万円もする基本設計の入札を、原課だけでやったの?おかしいね」(市OB)。「財政局契約課などと合議した文書もなさそうだし、慌ててやったとしか思えないが・・・」(議会関係者)。「規定違反は明らか。入札が無効と訴えられたら(市が)負けるんじゃないか」(同)。
 
業者選定方式への疑問gennpatu 385.jpgのサムネール画像   
 それでは、農林水産局が、新青果市場建設事業の成否を決定付けるとも考えられる「基本設計」の業者選定で、提案内容を吟味できるプロポーザルを排除し「一般競争入札」を採用した理由はどこにあったのか。

 入手した公文書を何度も確認するが、納得できる理由は見当たらない。強いて言えば「時間」の問題だけで、ことを急ぐ同局の姿勢だけが浮き彫りとなる。

 選定方式の検討過程を示す文書によれば、「一般競争入札」、「指名競争入札」、「原課によるプロポーザル」、「アセットマネジメント推進課によるプロポーザル」の四つの方式が検討対象となっていたことがわかる。

 「指名競争入札」は論外として、プロポーザルを排除した理由に絞って見てみたい。
 
 アセットマネジメントとは、地方自治体の財政がひっ迫する中、高度経済成長期に整備された公共施設の老朽化に伴う維持費や改修コストの増大に対応するための、施設の長寿命化や投資の平準化へ向けての取り組みのことである。
 
 福岡市では、平成22年9月に「福岡市アセットマネジメント実行計画」が策定されており、財政局にアセットマネジメント推進課が設置されアセットマネジメントの総合的な企画及び調整を行なっている。

 問題の選定方針の決定にあたっては、次のような理由を挙げてアセットマネジメント課によるものも含めたプロポーザルを排除している。

・契約手続きに7カ月かかるため市場開場スケジュールが遅れる。

・市と市場関係者などとの間で新市場に関する情報を共有しており、設計業者間での情報量に差が生じるほか、情報管理が困難で公平性が担保できない。

・アセットマネジメント課による業者選定においては、原則として「基本設計」と「実施設計」がセットになっているが、事業手法をPFI方式にするのか直営方式にするのかが決まっておらず、基本・実施設計のセットは困難(PFI方式では、事業者が実施設計、建設、管理業務を行なうため)。

 改めて市農林水産局新青果市場担当に話を聞いたが、プロポーザルを見送った理由については、情報管理の難しさと時間の制約を挙げる。しかし、なんといっても一番の理由は開場時期をこれ以上遅らせたくないというものらしい。

 開場時期をにらんで、事業推進を急ぐ市側の姿勢には、なお疑問が残る。

 入札による業者選定の過程を知った関係者や市民からも、疑問の声が出ている。
 「新青果市場整備事業の実施計画が策定されているとはいえ、設計業者がどのようなプランを提出するか、十分吟味する必要があるはずだ。市場関係者はもちろん、市民にとっても重要な施設なのだから、各業者の提案内容を見比べるべきではないか」(市場関係者)。
 
 「安く仕上げるべき公共事業とそうではないものの区別がついていない。(入札結果を)市議会で報告したから市民には公表しないというやり方にも納得できない。大体、時間がないというのは市の勝手な言い分だろう」(博多区、会社役員)。

 こうした声を踏まえて、さらに業者選定方式の検討過程を記した文書を見ていくと、市側が新青果市場の位置付けについて、どのように考えているかが分かる箇所が出てくる。
 

つづく



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