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新事実発覚!鹿児島県備蓄マスクは120万枚だった
'17年には41万8千枚 現状については回答拒否

2020年3月23日 07:45

DSCN1369 (2).jpg 27万枚ともいわれるマスクを保管しながら、HUNTERの報道までその存在を隠していた鹿児島県が、2009年(平成21年)9月末の段階で120万枚を、2017年(平成29年)には41万8,000枚のマスクを「備蓄」していたことが明らかとなった。当時の県議会質疑で担当部長が答弁した記録が残されている。
 膨大なマスクは、どのように使用されてきたのか――。改めて県側に確認を求めたところ、感染症対策などを所管する「くらし保健福祉部」は、備蓄されていたマスクの使途や残数についての回答を拒否。何を聞いても「答えられない」として、隠蔽姿勢を貫く構えだ。(写真は鹿児島県庁)

■120万枚→41万8,000枚→?
 鹿児島県関係者の話によれば、鹿児島県は2009年(平成21年)、この年5月に新型インフルエンザの国内感染が明らかとなったことを受けて、伊藤祐一郎前知事の指示で治療薬タミフルやマスクの備蓄を開始。県議会第3回定例会が開かれた9月までに、一定量のタミフルやマスクの備蓄を完了していたという。

 同月17日、鹿児島県議会で自民党の県会議員がタミフルやマスクの備蓄状況を質したことに対し、当時の保健福祉部長が次のように答弁していた。

 マスクの備蓄状況等につきましては、感染拡大を防止するとともに行政機能の維持のため、年内に百二十万枚の備蓄を予定をいたしておりまして、現在の約九十万枚の備蓄に加え九月末までにさらに三十万枚を備蓄する予定でございます。

2009年 県部長.jpg マスクの備蓄は計画通りに行われ、県は10月の時点で120万枚のマスクを保有していた。

 次にマスクの備蓄状況が明らかになったのは2017年(平成29年)。この年9月の県議会で、別の県議が新型インフルエンザ対策の関連でマスクの備蓄状況について質問し、担当の保健福祉部長は、こう答えていた。

 県においては、新型インフルエンザ業務継続計画等に基づき、県の業務執行に影響が出ることがないよう、職員の感染防止のために必要な不織布製のサージカルマスク約四十一万枚を備蓄しております。また、感染者等に直接接触する保健所職員等が新型インフルエンザ対策を実施するために必要な物品として、気密性の高いN95マスク約八千枚も備蓄いたしております。
 なお、いずれのマスクも、国が定めている中央省庁業務継続ガイドラインにおいても推奨されているなどとされているものでございます。

 県民等へのマスクの備蓄の周知についてであります。県新型インフルエンザ等対策行動計画では、県民の方々は、発生前の段階から、必要な情報やとるべき行動などその対策に関する知識を得るとともに、マスクを含む生活必需品等の備蓄を行うよう努めることとされております。また、事業者は、新型インフルエンザ等の発生に備え、職場における感染対策を行うことが求められております。県といたしましては、今後とも、行動計画を踏まえ、新型インフルエンザをめぐるその時々の状況に応じまして、適切な周知に努めてまいります

2017年 県部長.jpg

 県議会議事録からも明らかな通り、2009年には120万枚、2017年には41枚8,000枚ものマスクが「備蓄」されていたことになる。さらに県側は、マスクの備蓄状況について「適切な周知に努めてまいります」と約束していた。

 HUNTERは今月13日、県が27万枚のマスクを保有していながら存在を隠していたことを報じたが、同日発表された同県の緊急対策の中には唐突に「10万枚のマスクを医療機関や福祉施設等に配布する」という項目が加えられていた。ただし、マスクの保管状況については未公表。「適切な周知」という約束は守られていない。 

■聞いて呆れる「安心・安全」
 誰が聞いても疑問に思うはずだ。120万枚のマスクは、どういった経緯で41万8,000枚に減ったのか――。さらには、10万枚配るというが、現在のマスク備蓄数は一体何枚なのか――。19日、新型コロナウイルスなどの感染症対策を所管する「くらし保健福祉部」に取材を申し入れたが、部次長と記者のやり取りは、まったくかみ合わないものとなった。以下、その概要である。

――120万枚が数年で41万8,000枚になったのは何故か?
次長:議会答弁は確認した。120万枚も41万枚も事実。120万枚というのは、県警や保健所などの分を含んだ数字で、一概に41万枚と比較はできない。

――意味が分からない。おたくの県の部長が、過去に議会で「備蓄のマスク」と明言した上で、枚数を答えている。備蓄されていた120万枚と41万8,000枚が、どう使われ、現在何枚残っているのかということを聞いているだけだ。
次長:その点については答えられない。

――人をバカにしているのか?税金で買ったマスクの使途や数を答えないというのは、許されない。他県は、マスクの備蓄状況をスラスラと答える。なぜ鹿児島県だけが、その数を隠すのか?
次長:マスクの数については調査中。

――3月10日からマスクの数について確認を求めてきた。13日には県として10万枚を配布すると発表した。数を把握しているから10万枚配布が可能ということだろう。なぜ、マスクの総数を隠す?不正に転売していないか?
次長:転売などしていない。

 2009年も2017年も、議会で答弁したのは当時の保健福祉部長(現・くらし保健福祉部長)。県会議員からマスクの備蓄状況について聞かれ、保健所とか県警がどうのといった説明はつけずに、“県の備蓄”が、それぞれ120万枚、41万8,000枚であることを明らかにしている。税金で購入した物品である以上、県議会に対してはもちろん、誰から聞かれても回答する義務があるからだ。

 さらに、自然災害や感染症はいつ何時襲ってくるか分からないのだから、当然、その後の備蓄状況は毎年チェックしていなければならない。ところが県は、現在何枚のマスクを保有しているのか、すぐに確認できないとした上で、公表すること自体を頑なに拒む。これはつまり、三反園県政に危機管理能力が欠如している証左だろう。

 三反園知事は就任以来、「県民の安心・安全」を掲げて県政運営を行ってきた。原発に関する“変節”を咎められても、「県民の安心・安全」を優先してきたと強弁して、逃げた。しかし、現実はどうか――。
・マスクの備蓄状況を隠蔽する組織が、県民の「安心・安全」を守っていると言えるのか?
・過去に120万枚ものマスクを備蓄しながら、人命を守るために懸命に戦っている医療機関や介護施設に、たった10万枚のマスクしか配布できない三反園県政が県民の安心・安全を守っていると言えるのか?
・税金で購入したマスクの備蓄状況が、すぐに答えられない鹿児島県が、県民の安心・安全を守っていると言えるのか?

 



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