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安倍政権「観光立国」の現状 不足する感染症指定医療機関のベッド数
新型コロナウイルス対応 九州全域でたったの316床

2020年2月25日 08:20

官邸.pngのサムネイル画像 昨年12月に中国武漢から始まった新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。24日までに国内で確認された感染者は16都道府県で844名(クルーズ船含む)。感染ルートが分からない事例も増えており、多くの感染症専門家が「市中感染」の段階に移行したことを認めている。
 政府の水際対策は失敗。横浜港に入港したままのクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客・乗員への対応も誤りだったことが明らかで、内外から批判の声が上がる事態となった。
 「観光立国」を成長戦略の柱に据えておきながら、感染症対策を怠ってきた安倍政権。じつは新型コロナウイルスの感染者が増えた場合、対応可能な医療機関が不足する事態に陥ることがハッキリしている。ベッドがないのだ。

■感染症対応、全国410施設で1,861床
 2003年には中国広東省から重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の感染が拡大、2012年には主に中東地域で起きた中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)が問題になった。世界が感染症の恐ろしさを知った後であるにもかかわらず、「観光立国」の看板を掲げ、インバウンドだのIR(カジノを含む統合型リゾート施設)だのと騒いできた安倍政権は感染症対策を怠ってきた。新型インフルエンザやコロナウイルスへの備えは貧弱なもので、感染者が増えた場合、患者を収容できる病床数は極端に少ない。

 例えば、今回の新型コロナウイルスはサーズやマーズと同じ二類感染症(*下の分類参照)に分類されているが、これに対応可能なのは「感染症指定医療機関」とされるもので、特定感染症指定医療機関、第1種感染症指定医療機関、第2種感染症指定医療機関がある。

感染症3.png

 特定感染症指定医療機関は、未知の病原体による感染症患者に加え、一類感染症(後述)、二類感染症(後述)、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関で、厚生労働大臣が指定する。現在は、成田赤十字病院(千葉県:病床数2)、国立国際医療研究センター病院(東京都:病床数4)、常滑市民病院(愛知県:病床数2)、りんくう総合医療センター(大阪府:病床数2)の4施設しかない。

 第1種感染症指定医療機関は、全国で55施設(103床)。 一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定する。九州では9医療機関で16床しかない。

第一種感染症指定.png

 第2種感染症指定医療機関は、二類感染症及び新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として知事が指定するのもので、新型コロナウイルスは主にここが対応することになる。感染症病床を有する第2種指定医療機関は全国で351施設、病床数は1,758しかない。九州では下の67施設が指定されているが、病床数は300だ。(*下の表、県名横の数字は人口

感染症指定病院.png

 九州・沖縄だと、感染症指定医療機関の病床数は第1種、第2種を合わせてもたったの316床。これではダイヤモンド・プリンセス号の感染者(24日現在691人)でさえ、さばききれない。県別でみると、福岡と沖縄は人口に比べて病床数が少ないことが分かる。

 感染者が増えた場合、国や地方自治体は新型インフルエンザ協力医療機関などに患者の受け入れを求めるものとみられるが、院内感染を恐れる民間の病院では、すでに熱発や咳を訴える患者のたらい回しが問題になっており過大な期待はできない。

 どこの医療機関も、経営の観点からベッドが空く状態を嫌がるものだが、感染症への備えは国の責任。感染症対応の病床を増やすための予算が必要なら、ムダな公共事業への税金投入を抑えることも必要だ。できないのなら、インバウンド促進を止めるのが政治の責任だろう。

 北朝鮮や中国を仮想敵とみなし、戦争の準備ともとれる集団的自衛権の行使や安保法の制定に走った安倍政権が、感染症との緒戦で敗れたのは確か。首相は、この段階で国民に失政を認め、医療施設の不備で自宅療養を余儀なくされる可能性があることを説明しておくべきだ。感染症の病床は、全国で2,000にも満たないのだから。
 



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