国や自治体の政策決定過程が不透明になれば、政治や行政に対する信頼は失われる。誰がどのように物事を決めたのか分からない“密室政治”の典型が、「桜を見る会」や森友・加計であり、安倍政権に向けられる視線は厳しさを増すばかりだ。
一方、施策に関して国以上に丁寧な説明を求められるのが、住民の暮らしと隣り合う地方自治体。ほとんどの首長が、選挙のたびに施策の決定過程をオープンにすることを訴える。
鹿児島県の三反園訓知事もマニフェストで「開かれた政策決定を目指します」と誓っていたのだが、それが嘘だったことが明らかになった。鹿児島県庁としては、「政策決定過程は明らかにしない」のだという。
■鹿児島県―「政策決定過程は明らかにしない」
鹿児島県に、新総合体育館の整備候補地を県庁東側の土地にする方針を決めるまでの過程を示す文書を情報公開請求したところ、開示されたものとほぼ同じ内容とみられる文書が全面非開示になった。
情報公開の対象となった文書は4件。4件の文書ともすべて7ページで、タイトルも同じ『新たな総合体育館の候補地の検討結果について』となっている。ただし、うち3件はほぼ全面が黒塗り非開示だ。
県の担当課に聞いたところ、知事や県議会への説明用文書として作成されたもので、内容の一部が少しずつ違うのだという。オープンにして困るものとは思えず非開示理由を確認すると、非開示文書は確定前の情報だからとした上で、根拠として「県内部の審議、検討又は協議に関する情報を開示すると、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれる」とする県情報公開条例の規定を挙げる。
しかし、文言の修正程度だったはずの非開示部分を公表したからといって、「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれる」ことになるとは思えない。そもそも、政策決定過程を隠していては、役所としての説明責任も果たせないし、施策の正当性も疑われる。担当職員にその点を問うと……。
記者:政策決定過程を隠すのか?
職員:隠すということではない。記者:政策決定過程は明らかにすべきだ。
職員:それはできない。記者:それはおかしい。説明責任が果たせないことになる。
職員:本県は、政策決定過程を明らかにしていない。記者:していない?
職員:する必要がない。記者:間違っている。
職員:政策決定過程を明らかにする必要はない。
■「公約違反」
平行線である。鹿児島県は政策決定過程を明かさないというのだから、何を言っても無駄なのだろう。しかし、そうすると鹿児島県の三反園訓知事は、とんでもない嘘つきということになる。下は、県のホームページにも出てくる知事のマニフェストの冒頭部分だ。
ここに記された4項目は、2016年の知事選挙の時から変わっていない。3番目にある「開かれた政策決定を目指します」は、「政策決定過程を明らかにする」と同義だ。しかし、県の職員は自信満々に「政策決定過程は明かせない」と断言する。職員が知事の方針に従う気がないのか、あるいは知事がただの嘘つきであるかのどちらかということだが、これまでの知事の言動からして「嘘つき」が正解ということになる。
この3年半の経緯を振り返ってみると、三反園訓というペテン師が、知事選でやるつもりのないきれいごとを並べただけだったことは確かだろう。
「廃炉」や「反原発メンバーを入れた専門委員会の設置」で反原発派をだましたことを県民は忘れていないが、三反園の嘘は原発に関する公約だけではない。下は、知事選当時に三反園が公表したマニフェストの一部で、「指宿スカイラインの無料化を目指します」とある。
知事は、自身のマニフェストの中で「指宿スカイライン」の通行料無料化を約束していたが、就任後にやったのは山田ICフルインター化と山田料金所へのETC設置。公約とは真逆の施策を恥ずかしげもなく実行し、支持者を落胆させていた。
では、この指宿スカイラインの無料化についてはきちんと議論されたのか――。HUNTERの情報公開請求に対し、県がまたしても「隠蔽」に走る。
(以下、次稿)