憲政史上最長の首相在任記録を作った安倍晋三という政治家は、歴代最低の宰相でもあった。
先月28日、衆院予算委員会で「桜を見る会」について追及されていた安倍首相は、“参加者の募集時期をいつ知ったか”という共産党議員の質問に対し、「幅広く募っていると聞いているが、募集しているという認識はなかった」と答弁。与野党の議員だけでなく、多くの国民まで呆れさせた。
辞書を引くまでもなく、「募る」と「募集」は同義。数の力に物を言わせて強引な政権運営を続けてきた安倍氏は、日本語の意味まで変えようというのだろうか。
■「募った」が「募集」していない?
一昨年、「ご飯論法」という言葉が『新語・流行語大賞』のトップ10に選出された。ご飯論法とは、「朝ご飯は食べたか」という質問に対し、パンを食べておきながら「ご飯(米)は食べませんでした」とごまかし、言い逃れや論点のすり替えを行う手法のこと。国会審議で、不誠実な答弁を繰り返す政府与党の態度を揶揄したものだ。
「募る」と「募集」は別物だとする安倍首相の主張は、そのご飯論法のカテゴリーにも入らない、おそらく子供にも軽蔑されるであろうお粗末な言い逃れだった。国会で、ここまで低レベルな答弁を行った宰相は、明治期から今日まで一人もいない。歴代最低ということだ。
国政の節目ごとに、明らかに嘘や作り話だと分かるような主張を繰り返してきた首相だが、報道機関の世論調査では毎回40%~50%の高い内閣支持率。「一強」も「長期政権」も、じつは国民がもたらした現状なのである。
■安倍政治を問う
世論調査では、直近で起きた政治課題について回答を求め、それから内閣を支持するかどうかの質問に移るのが普通だ。最近のケースだと、まず最初に「桜を見る会の問題で、首相の説明は十分だと思いますか?」などという設問があって関連事項が続き、その後に内閣を支持するか否かの質問がくる。
当然、森友学園や加計学園といった政権を直撃する問題が起きた後は支持率が下がるが、幕引きが図られたとたんに支持率は持ち直す。野党の体たらくに助けられた結果でもあるが、やはり「安倍内閣を支持する」として政権に免罪符を与え続けてきたのはこの国の有権者なのである。今更ではあるが、改めて問いたい。
・あなたは、桜を見る会の名簿や森友・加計問題などの不祥事に絡む文書を平気で廃棄したり隠したりする政権が、国民の知る権利を著しく制限する「特定秘密保護法」を制定したことを評価しますか?
・あなたは、憲法解釈を歪めて集団的自衛権の行使容認を決め、日本が戦争に巻き込まれる可能性を高めた安倍政権の方針を是としますか?
・あなたは、大半の憲法学者が“憲法違反”だと指摘する中、集団的自衛権の行使を可能にするため制定された安全保障法制を容認しますか?
・あなたは、歴代内閣が厳守してきた「武器輸出3原則」を撤廃し、武器輸出を解禁した安倍政権の方針を認めますか?
・あなたは、普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する沖縄県民の多数意見を無視し、新基地建設を強行する安倍政権の姿勢を正しいと思いますか?
・あなたは、安倍昭恵夫人と親密な関係にあった学校法人「森友学園」への国有地払い下げ問題において、政府や安倍首相が行ってきた「何の問題もない」という説明を信用しますか?
・あなたは、学校法人「加計学園」が国家戦略特区を利用した獣医学部新設で、首相周辺による便宜供与はなかったとする説明を信用しますか?
・あなたは、原発輸出を成長戦略の一環とする安倍政権の方針を正しいと思いますか?
・あなたは、統合型リゾート施設(IR)を成長戦略の柱にするため、カジノ解禁に踏み切った安倍政権の方針を正しいと思いますか?
・あなたは、原発をベースロード電源にし、再稼働を進める安倍政権の方針を正しいと思いますか?
・あなたは、「桜を見る会」の問題を巡る首相の説明を信用できますか?
・あなたは、「募る」と「募集」は違う意味だと思いますか?
・あなたは、昨年行われた参議院議員選挙で初当選した広島選挙区の河井案里氏側に、自民党から1億5千万円もの資金が提供されていたことについて、「問題ない」とする安倍首相の主張を正しいと思いますか?
・あなたは、河井案里氏陣営による選挙違反疑惑を受け法務大臣を辞任した河井克行衆院議員や、政治とカネの問題で経済産業相を辞任した菅原一秀衆院議員が、説明責任を果たさず逃げ隠れしてきたことを容認できますか?
・あなたは、あなた自身がアベノミクスの恩恵を受けていると思いますか?
・あなたは、安倍首相が唱えてきた「三本の矢」、「一億総活躍」、「働き方改革」、「女性が輝く社会」といったスローガンが、本当に機能していると思いますか?
・あなたは本当に安倍首相を支持しますか?
そういえば「募る」には、“募集する”とは別にもう一つの意味がある。辞書では『はげしくなる。激化する』――安倍政治に対しては、不信感が「募る」ばかりだ。