今夏に予定される鹿児島県知事選挙の関係者が注目する裁判の控訴審判決が、月末31日に下される。
問題の裁判は、鹿児島県が100億円をかけて薩摩川内市に整備した産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(事業主体:県環境整備公社)を巡り、地場ゼネコン植村組グループ側への高額な用地取得費の支出は違法だとして地元住民らが起こした住民訴訟。一審の鹿児島地裁では住民側が勝訴し、未払金の支出差し止めと土地取得契約締結時の県政トップに既出金を請求するよう命じるものだったため、県側が控訴していた。
その県政トップとは伊藤祐一郎前知事。夏の知事選に出馬することが確実とみられている。
(写真はエコパークかごしまの全景。公社HPより)
■産廃処分場「エコパークかごしま」の整備に100億円
「エコパークかごしま」は、公共関与型といわれる管理型の最終処分場。県内に最終処分場が一箇所もないという大義名分を掲げ、県主導で始まった事業だ。
県は平成22年、薩摩川内市川永野に処分場の土地248728.84㎡を確保するため、同地に砕石プラント併設の砕石場を保有していた地場ゼネコン植村組のグループ企業「ガイアテック」と賃貸借契約を締結。賃料は5億円で、平成25年度に3億400万円を一括して支払い、翌年度から平成39年までの14年間にわたり年間1,400万円ずつを払うという契約内容(土地所有権は、埋め立て期間である15年後に県へ)だった。5億円のうち、純粋な土地代は3,900万円。4億6,100万円は砕石プラントや立竹木といった工作物や動産の移転補償に充てられるという内容となっている。(下が、県とガイアテックの契約書。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)
県は、地元住民らの根強い反対を無視して平成23年10月に着工したが、豊富な湧水のために工期が1年以上遅れるという事態に――。結局、18億円に上る追加工事費が発生し、全体の工事費は約100億円に膨れ上がっていた。すったもんだの末、平成26年暮れに、ようやく竣工にこぎ着けている。
用地決定の過程は極めて不透明で、県内29箇所の対象地については満足な調査を実施しないまま、薩摩川内市川永野にある植村組グループの土地に絞っていたことが分かっている。県は、処分場の建設工事も、植村組が参加した特定建設工事共同企業体(JV:大成・植村・田島・クボタ)に受注させており、まさに「植村組ありき」の事業だった。
■地裁、補償費の大半を「違法」と認定
県側による一方的な処分場整備に反発を強めた地元住民らは平成23年、土地取得にかかる5億円の賃貸借契約は違法として住民訴訟を提起。2017年3月28日の判決で鹿児島地裁は、処分場用地のうち県が追加取得した部分を不要と認定。この不要な土地に対する対価約1,000万円とその土地にあった工作物などの移転補償費約4億2,000万円の支出は、県側が裁量権を逸脱または濫用したもので“違法”とし、植村組側への未払金1億6,000万円の支出を差し止め、支払済みの2億6,400万円を土地取得契約締結時の知事である伊藤祐一郎氏に請求するよう県に命じていた。5億円の土地取得費のうち、約85%にあたる4億2,400万円が不当な支出だったということになる。県側は即刻控訴、福岡高裁宮崎支部で原告側と県側のやり取りが続いていたが、今月31日に判決が下されることになっている。
県政界関係者が注目しているのは、高裁宮崎支部の判決。一審の結果がそのまま維持されれば、伊藤前知事に「2億6,400万円」がついて回るからだ。伊藤前知事が今夏の鹿児島知事選に出馬するとの見方が広がるなか、判決の持つ意味は決して小さくない。
直近の情勢調査では、現職の三反園訓知事が30台半ばのポイントしか得ていないのに対し、昨年暮れに出馬表明したばかりの新人で前九州経済産業局長の塩田康一氏が、その半分以上のポイントをたたき出しているという。知名度ゼロに等しい塩田氏の善戦で現職の不人気が証明された形だが、そこに前回知事選で34万票を獲得した伊藤氏が参戦することになれば勝敗の行方は分からなくなる。
HUNTERの取材によれば、伊藤前知事は早ければ20日過ぎにも「出馬の意向」を示すものとみられており、月末に予定される処分場裁判の結果に注目が集まる状況となっている。