昨年4月に行われた鹿児島県議会議員選挙で当選した51人の議員のうち、議長と副議長を含む16人が公費で賄われる選挙用ポスターの印刷費を、上限いっぱいの額で請求していたことが分かった。16人はすべて自民党県議団所属で、38人いる同党県議団の4割以上が満額請求だった。
1枚あたりの最低額は140円40銭だが、最高は4,400円という法外な額になっている。
公費負担の原資が税金であることをあざ笑うかのような自民党議員による制度利用の実態に、批判の声が上がりそうだ。
■自民県議の4割超が満額請求
鹿児島県は「鹿児島県議会議員又は鹿児島県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用並びに選挙運動用ビラ及び選挙運動用ポスターの作成の公営に関する条例」を定め、供託金没収点を上回った知事選と県議選の候補者に対し、一定の範囲内で費用を負担する制度を設けている。公費負担の対象となるのは、選挙運動用自動車(車両レンタル代と運転手日当)、選挙運動用ビラ、選挙運動用ポスター。各候補者は告示前に事業者と契約書を交わし、選挙後、請求した事業者に費用が支払われる仕組みだ。
HUNTERは、選挙用ポスターに絞って現状を調査するため、当選した県会議員に限定して鹿児島県に関連文書を情報公開請求していた。下は、入手した資料から単価、契約金額、印刷枚数、限度額などを選挙区ごとにまとめた表である。
ポスター代の基準単価は、各選挙区ごとの掲示場の数を基に、次のような計算式で算出される。
【当該選挙区におけるポスター掲示場数が500以下の場合】
525円6銭に当該ポスター掲示場の数を乗じて得た金額に310,500円を加えた金額を、当該選挙区におけるポスター掲示場の数で除して得た金額(1円未満の端数がある場合には、その端数は1円)。
【当該選挙区におけるポスター掲示場の数が500を超える場合】
27円50銭にその500を超える数を乗じて得た金額に573,030円を加えた金額を当該選挙区におけるポスター掲示場の数で除して得た金額(1円未満の端数がある場合には、その端数は1円)。
印刷費は枚数が多ければ単価が下がり、少なければ上がるというのが一般的。選挙用ポスターも同様で、単価や契約金額は掲示場の数に左右される。天候やいたずらに備え、掲示場の数より多く印刷する候補がほとんどだ。
請求額の平均は約793,000円。1枚あたりの最低額は野党系会派「県民連合」所属県議(鹿児島市鹿児島郡区:掲示場796カ所)のポスター代140円40銭で、最高はその約31倍となる自民党県議(枕崎市区:掲示場80カ所)の4,400円だった。枕崎市区のポスター掲示場が80カ所と少ないとはいえ、4,400円は法外な額と言えるだろう。
問題は、上掲の表中に赤字で示したケース。38人いる自民党県議団のうち、枕崎市区の県議(単価4,400円)を含む16人が、いわゆる「満額請求」だった。自民党県議の半数近くが、限度いっぱいの額を税金で支払わせたということだ。満額請求した県議らに、無駄な公費支出を抑えようという意思はない。ちなみに、外薗勝蔵議長(薩摩川内市区)と桑鶴勉副議長(鹿児島市・鹿児島市区)も満額請求していた。
なぜ一部県議のポスター代はこれほどまでに高いのか――。取材してみると、“違法な請求”がまかり通る鹿児島の現状が浮かび上がってきた。
(以下、次稿)