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【カジノ汚職】安倍政権を揺るがすチャイナマネー

2020年1月 6日 07:50

2c981668b869e0908b74065475a7cc3c8d64662e-thumb-240xauto-18696.jpg 「一強」がもたらした膿が、政権を蝕んでいた。
 昨年末、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業に絡む贈収賄事件で、東京地検特捜部が元内閣府副大臣の秋元司衆院議員を逮捕。捜査が進む中、IR事業の推進を図ってきた「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」のメンバーやIR候補地の議員らに、次々と金銭授受疑惑が浮上する事態となった。
 不正なカネの原資は、安倍政権が嫌う中国の企業が日本国内に持ち込んだもの。いわゆるチャイナマネーである。
 
■観光振興の目玉に「カジノ」
 IRは、Integrated Resortの略。カジノやホテルを中心に、国際会議場などのMICE施設、ショッピングモールなどを併設した複合的な施設のことで、安倍政権が成長戦略の一つに上げる重要施策だ。下は、IRの説明用に政府の特定複合観光施設区域整備推進本部事務局が作成した資料である。

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 政府が認める予定のIRは、全国で3カ所だけ。現在、誘致を表明しているのは大阪、和歌山、長崎、横浜の4都市だが、上の資料でも明らかなように施設全体の運営を支えるのは「カジノ」の売り上げである。

 博打の稼ぎで地域振興を図るという愚策を、政権と一体で進めてきたのが超党派の議員らで組織された「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」。2010年に設立されたIR議連は「カジノ議連」とも呼ばれており、カジノを合法化して観光の振興を図るという目的で、200名を超える与野党議員が参加している。

 現在の会長は、かつて議連の最高顧問を務めていた安倍首相の出身母体である細田派会長の細田博之衆院議員。事務局長には首相側近の萩生田光一文部科学相が就いており、まるで政権の下請け機関だ。

 政権は、観光振興や地方振興の目玉施策として位置付けてきたIRの整備を促進する目的で2016年に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(IR推進法)」を、19年には「特定複合観光施設区域整備法(IR実施法)」を、それぞれ強行採決してまで成立させてきた。

 一方、自民党は昨年の参院選公約に《「IR(統合型リゾート)整備法」に基づき、様々な懸念に万全の対策を講じて、大人も子供も楽しめる安心で魅力的な「日本型IR」を創り上げます。また、「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」に基づき、ギャンブル等依存症対策を徹底的かつ包括的に実施します。》と明記、2017年の総選挙に際して発表した政権公約の中にも《「IR(統合型リゾート)推進法」に基づき、様々な懸念に万全の対策を講じて、大人も子供も楽しめる安心で魅力的な「日本型IR」を創り上げます。》という一項を入れている。

■ばら撒かれたチャイナマネー
 政府与党が一体となってカジノの実現に進むその裏で、IR関連の中国企業「500ドットコム(500.com)」が日本の国会議員に工作資金をばら撒いていたことになる。これまでの報道によれば、金銭の提供などについて疑惑を持たれた議員は、逮捕された秋元容疑者を含め8人。中国嫌いの政権が、チャイナマネーで汚染されるというブラックジョークの世界だ。

IR疑獄.png 500ドットコムから秋元容疑者に渡ったとされるのは現金300万円の他、70万円分の北海道旅行代金。中村氏には、平成29年に同氏が代表を務める「自由民主党北海道第四選挙区支部」に、ルスツリゾート(北海道留寿都村)やスぺ-スワールド(北九州市=2018年閉園)などの運営で知られる加森観光から200万円、同社代表の加森公人氏から200万円が献金され、このうち100万円が岩屋毅元防衛相の「自由民主党大分県第三選挙区」に寄附されている。加森観光は、留寿都村へのIR誘致を目論んでいたことが知られており、以前からチャイナマネーとの関係が指摘されてきた企業だ。

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 カジノは博打。しかも、パチンコなどとは比べ物にならない莫大なカネが動くため、暴力団や悪質な企業が入り込む可能性が高いとみられてきた。国民の反対意見を無視して、カジノを国の成長戦略に据えた安倍政権が、カジノに足を引っ張られるという皮肉――。ある自民党幹部は、次のように話す。
「この問題の闇は深い。すでに大臣経験者にまで疑惑の目が向けられており、事件が拡大するのは確実だ。一強の政治状況に驕って、好き放題やってきたツケが回ってきたということだろう。秋元だけの問題なら1月解散で幕引きを図るという手もあったが、こうなると無理。桜を見る会の問題も片付いておらず、“安倍総理”で東京オリンピックを迎えられるという保証もなくなった。IR議連には旧民主党の議員も大勢参加しているが、何の力もない連中。彼らにカネを渡す企業などない。結局、カジノを推進してきた自民党と維新が叩かれるだけだ。憲法改正は夢のまた夢だよ」 

 別の永田町関係者は、違う視点で懸念を示している。
「よりによってチャイナマネーかよ。政権与党の人間なら、絶対もらってはいけないカネだろう。安倍さんのコアな支持者は、韓国や中国と仲良くする人間を極端に嫌う。それが百万円単位の資金提供を受けていたというのだから、秋元は救いようがない。別の意味でやばいのは岩屋。本人は否定しているが、IR誘致を狙っていた加森観光側からの100万円をもらっていた彼は、その後防衛大臣を経験している。原資がチャイナマネーであったことが証明されれば、かなり危ない話になってくる。防衛機密が中国側に流れてはいないか――それが疑われるということだ」



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