現職・三反園訓知事の不人気が招いた候補者乱立で、“第3の男”に注目が集まっている。
今夏に行われる予定の鹿児島県知事選挙の自民党推薦候補者として、森博幸鹿児島市長の名前が急浮上。同党県連関係者の間からも、「本人がその気になれば、一気に“森擁立”の機運が高まるかもしれない」といった声が上がり始めている。
(写真が森市長。鹿児島市HPより)
■混迷深める候補者選考
知事選には昨年、現職で二期目を目指す三反園訓氏(61)の他、鹿児島大学特任助教の有川博幸氏(61)と前九州経済産業局長の塩田康一氏(54)が出馬することを正式表明。今月9日には、伊藤祐一郎前知事(72)も“出馬する意向”であることを明らかにするなど候補者が乱立する展開となっていた。
38人を擁する県議会最大会派の自民党県議団は、三反園氏が提出した推薦願の扱いを巡って現職を推す外薗勝蔵議長らと反三反園派の議員が反目。昨年、3回にわたって開かれた議員団総会では決着がつかず、いったん県連に議論を預けていた。
暮れの県連会議では、会長を務める森山裕自民党国会対策委員長が、“出たい人と出したい人がいる”などと現状を説明。知事選の推薦は党本部マターであると断った上で、再度県議団で議論するよう指示していた。推薦願に関する議論を差し戻された県議団は、今月22日に団総会を開く予定だという。
2016年の知事選で敵対したとはいえ、三反園氏は現職の知事。しかも、脱原発の訴えを反故にしてまで自公に取り入った人物だ。普通ならスンナリ推薦が決まるところだが、平気で嘘をつき、自分勝手な振る舞いばかり繰り返す姿勢に評判は下がる一方で、県庁内部からも「早く辞めてもらいたい」「次の選挙で、必ず落選させなければ」といった声が上がる状況だ。
三反園支持派は利権の噂が絶えない県議が中心で、県議団の半数以上は推薦に慎重もしくは反対という構図。こうした中、伊藤前知事が出馬する見通しとなったことで、三反園推薦はより厳しくなったとみられている。ある中間派県議の話。
「本当のところは三反園支持が三分の一、反三反園も三分の一、あとは我々のような中間派だ。その中には、伊藤前知事を支持する人も若干名はいる。塩田さんを推す声は、いまのところゼロだろう。三反園も伊藤さんも、県民の広範な支持は得られないからダメ。かといって塩田氏という選択肢もない。反三反園陣営が推す候補としては、よく分からない塩田さんも前回知事選で大敗した伊藤さんも容認できない。そこで三反園に対抗しうる人物として第三の男の登場というわけだ。つまり、森鹿児島市長よね」
■市長4期の実績
森市長は、鹿児島市生まれの70歳。地元のラ・サ―ル高校から横浜市立大学商学部に進み、卒業後の1974年に鹿児島市役所入りした行政マンだ。財政部長や総務局長を歴任して実績を積み上げ、2004年に市長に初当選して以来、4期連続当選を果たしてきた。
自民党の尾辻秀久元参議院副議長や野村哲郎参議院議員らの出馬要請を受けながら、「出るとも出ないとも言わない」(県政会関係者)態度を続けてきた市長が、出馬に前向きな姿勢を示しはじめたのは今年に入ってのこと。当初は不出馬との見方が大勢だったが、伊藤前知事による事実上の出馬表明で混沌とする事態を受けて、気持ちが変わったのではないかとみられている。たしかに、大票田の鹿児島市で三反園氏を圧倒するこのできる森市長は、自民党にとっては得難い存在だろう。
海外出張中の森市長の帰国を待って、森山県連会長が出馬の意思確認をする予定になっているが、実際には出馬するよう森氏を説得するのではないかとの見方も出始めている。直近の情勢調査によれば、トップを走っているのは現職の三反園氏。これに塩田、森と続いているのだという。出馬するかどうかも定かではない森市長が強さを証明したことで、「勝てる候補」の擁立を第一に考えてきた森山氏の気持ちが動いたとみるべきだろう。
一連の動きについて、ある県議会議員は、次のように解説している。
「森市長本人がその気になれば、一気に“森擁立”の機運が高まるかもしれない。森市長は性格も温和で、敵も少ないし人気もある。森山さんにとっては操りやすい人物だろう。経済界も反対はしない。年齢の問題はあるが、本人のやる気次第。市長選と知事選をダブルでやることも可能になるから、話題になって懸念されていた投票率も上がる。願ったり叶ったりの人選だと思う」
急浮上した第三の男・森博幸鹿児島市長だが、文句なしの人選だと考えるのは早計。かつてHUNTERは、政治資金を巡る問題で森市長を追い詰めている。