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TNC記者の身分詐称問題に厳しい批判 

2020年1月27日 08:50

20120810_h01-01t.jpg テレビ西日本(TNC)の女性記者が、実在する西日本新聞の記者の名前を騙って取材していた問題は、報道の現場に二つの大きな課題を投げかけた。
 問われているのは、犯罪行為に等しい「身分詐称」を行った記者が、TNCの甘い処分によって、いまだに報道の現場で取材活動を続けていることの是非。次に、昨年秋に事実関係を把握しながら、一切を報じなかった西日本新聞とTNCの姿勢だ。
 第一線で活動する記者たちは、どう考えているのか――。

■西日本新聞社内の声
 TNC記者の身分詐称問題については、多くの現役記者たちから様々な声が寄せられてきている。まず、社名を騙られた西日本新聞の記者は、どう考えているのか――。

【西日本新聞 記者A】
・身分詐称について――「身分を偽ったTNCの記者が、現場で取材活動を続けていることに驚いた。他社のこととはいえ、あり得ない話だろう」

・西日本新聞とTNCが報道しなかったことについて――「TNCについてはコメントできない。我が社については、『情けない』の一言。多くの記者が、報道の現場で頑張っているのに、上の判断で記者の身分詐称という極めて重大な背信行為を報じなかったのだから、話にならない。しかも、使われたのはうちの社名と実在する社員の名前。きちんと記事にすべきだったのに見送り、何カ月も経って他の報道機関にすっぱ抜かれた。恥の上塗りだ」

【西日本新聞 記者B】
・身分詐称について――「うちの前社会部長がTNCの報道部長に就任したのが昨年の夏だったはず。彼はTNCの記者がやった身分詐称について、厳しい処分を下すべき立場だったのに、福岡市役所担当への異動で終わらせた形だ。昨年のうちに問題が表面化していれば、そんな人事はできなかっただろう。グループ内のことだからと、なあなあで事を済ませたということだろう」

・西日本新聞とTNCが報道しなかったことについて――「これもまた、グループ内だからこそ、表面化しなかったというだけのこと。TNCの記者が朝日とか読売の記者の名前を騙っていれば、違う展開になっていただろう。いかなる理由があろうと、報道しなかったうちは、報道を名乗る資格が問われる」

【西日本新聞 記者C】
・「昨年、TNCの記者がうちの社名を偽ったとかなんとか、ふわったとした話を聞いた覚えがあります。しかし、何の説明もなかったので、たいした話ではないんだろうと思っていました。先日、読売が報じて、HUNTERの配信記事が出て、ようやく分かりました。あってはならないことが、起きた。その後の始末も不透明。これではグループ内で隠蔽したと言われてもおかしくないですね」

 西日本新聞は、自社の信頼失墜を招きかねない重大事案を、社内の一部だけで処理していたということだ。別の西日本新聞OBは、こう指摘する。
「こうした話はいずれ表面化するものだ。報道できない理由があれば、そこを明らかにして情報だけは共有すべきだった。ついこの間まで自分の社の社会部長だった人間がTNCの報道部長になっているんだから、なおさら隠蔽を疑われるようなマネをしてはいけなかった。残念な話だ」

■他社の記者たちは……
 他の報道機関に所属する記者たちも、西日本新聞とTNCに冷ややかな視線を向けている。

【全国紙 社会部記者D】
・身分詐称について――「報道に携わる者として失格。取材に応じてもらえなかったり、トラブルに発展することがあるのは当たり前の世界。それでも、粘り強く交渉して信頼を得るのが記者のあるべき姿でしょう。自らの失敗を他人に擦り付けるなど、記者というより人としてまずい。

・西日本新聞とTNCが報道しなかったことについて――「両社の馴れ合いと言われても仕方がないでしょう。特に西日本は、報道機関としての信用を貶められたのに黙っていたのは自殺行為。日頃から役所や大企業、郵政の不祥事を厳しく追及しているんだから、相手がグループ企業でもきちんと対処すべきだった」

【全国紙 社会部記者E】
・身分詐称について――「社名と名前を偽って相手から何かを引き出そうとした行為は、まさに振り込め詐欺と同じ。TNCの記者は、普通ならクビだろう。取材活動を続けさせているTNCは感覚が鈍いのか、世間をなめているのかのどちらか。記者もそうだが、会社自体も報道を名乗る資格がない」

・西日本新聞とTNCが報道しなかったことについて――「西日本新聞は、“あなたの特命取材班(あな特)”で新聞の新たな展開に道を示し、郵便事業の不正を暴く報道などでも存在感を示してきた。どんな背景があったのか分からないが、記者の身分詐称という絶対に許してはならない事案で沈黙した形になったことは、残念というしかない」
 
 報道の現場にいる記者たちの怒りは当然なのだが、すべての報道機関が、ご立派な意見を述べられる状況だったとは思えない。取材を進めると、TNCと西日本新聞だけを責められない、他社の「みっともない社内事情」(全国紙記者)も見えてくる。
                                                          (つづく)



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