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「マスゴミ」化への懸念 記者の身分詐称を黙殺した福岡メディア 

2020年1月28日 08:20

20120810_h01-01t.jpg テレビ西日本(TNC)の女性記者が西日本新聞の記者だと偽って取材を行っていた問題で、事実関係をつかみながら報道を見送っていた報道機関が、両社以外にも複数あったことが分かった。
 「身分詐称」は犯罪として問われかねない行為。放置すれば報道への信頼を失いかねない重大事案だったはずだが、各社が黙殺したことで、“事件”を起こした記者が取材の現場で活動を続けるという非常識な事態を容認した形だ。
 報道を見送った社の記者たちからは、事なかれ主義に陥った福岡メディアの現状を嘆く声が上がっている。

■複数社が「記者の身分詐称」を黙殺
 先週23日にこの問題を報じて以来、多くの現役記者からメールや電話が寄せられている。ほとんどが西日本新聞とTNCへの批判だが、それ以外の報道機関の中にも、身分詐称の事実を知りながらダンマリを決め込んだところが複数あったことが明らかとなった。

 ある全国紙記者の話。
「うちは、昨年10月の末に情報をキャッチし、取材を進めた記者がいました。原稿を用意するところまで行っていたと思います。でも、上層部の判断でボツに――。TNCと西日本新聞が取材に応じないからということでしたが、それは言い訳。単に他社と揉めるのを嫌ったのか、あるいか意識が低いか――。まあ、やる気の問題ですがね」

 別の社では、「上層部が『今回の事案は報道業界全体の恥をさらすことになるから、表沙汰にするわけにはいかない』と判断した」という、信じがたい話まで出ていたという。

 上層部だけではなく、記者の低レベル化を証明する事例も――。TNC記者の身分詐称を知っても、「わざわざ記事にするようなものか?」と、まったく興味を示さない記者もいた。じつは、こうした記者が少なくないのが現状で、“マスゴミ”の蔑称はあながち間違いとは言えない。

 結局、西日本新聞とTNC以外で、身分詐称の情報を得ていながら、報道を見送るか初めから動こうとしなかった報道機関は少なくとも6社。各社の記者からは「上層部」「忖度」「馴れ合い」「圧力」といった言葉が聞こえてきたが、今月になって報道に踏み切った読売を除く在福岡の大手メディアが、何かと理屈をこねては業界人を庇ったのは確かだろう。

 2013年に、山梨放送(YBS)の記者が「毎日新聞記者」と偽り、実際にはない名前を告げて取材した事案では、大手メディアがこぞって報道。事態を重く見た山梨放送は、身分を詐称した男性記者と報道担当局長、報道部長の3人を懲戒処分にし、記者は取材することのできない部署へ異動させていた。同様事案でありながら、福岡と山梨のこの違い――。義憤を感じる記者が、何人かいたことだけが救いだ。

■残念な西日本新聞の姿勢
 この問題を西日本新聞が率先して記事化していたら、状況が大きく変わっていたであろうことは明らかだ。社名と名前を偽ったTNCの記者は、その時点で現場を外れていたはずだ。そうした意味で、はじめに報道を見送った西日本新聞の責任は重いと言わざるを得ない。多くの報道関係者が「身分詐称」の事実を知ったのは、今月になって読売新聞が身分詐称の件を報じたため。埋もれたままにしなかった同紙の判断には、敬意を表するしかない。

 ある全国紙のベテラン記者は、次のように話している。
「報道関係者の不祥事だからこそ、きちんと報じなければならない。どんな理由があるにしろだ。関係者が報道を嫌がっているとしたら粘り強く説得して、“身分詐称”が報道にとっていかに思い罪であるかということを理解してもらい、迷惑をかけないような形で記事化する方法があるはずだ。グループ企業間での隠蔽は論外。そんなことをやる会社には、報道機関を名乗る資格がない。それにしても、HUNTERの質問書に対する西日本新聞の回答は酷い。こんなことをやっているから、『マスゴミ』と批判される。どんな立場の人が作ったのか、聞いてみたいものだ」

 最後に、ベテラン記者がいう西日本新聞の回答を再掲しておきたい。同社への質問書で確認を求めたのは、事実関係に間違いがないかということと報道しなかった理由なのだが……。

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