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議会無視! 鹿児島県指宿市が市議らに幼稚な質問書

2020年1月29日 08:35

DSCN0845.JPG 議会の存在を無視した市長が、議員に場外乱闘を仕掛けた格好だ。鹿児島県の指宿市役所が、複数の市議会議員が市政の問題点を周知する目的で作成・配布したチラシの記載内容を問い質すため、チラシを発行した市議らに豊留悦男市長名の質問書を送付し、回答を求めていたことが分かった。
 質問書の中で市は、回答の有無や回答内容を公開するとしており、見ようによっては強要ともとれるやり方。市長は、自らにかけられた政治資金疑惑に対するHUNTERの質問取材に答えておらず、市関係者の間からは「権力の濫用」「市議らに噛みつく前に、自分の疑惑に答えるべきだ」「市政批判に対し、議場の外で争うのはルール違反」などと、歪む市政に対する批判の声が上がっている。

■市長名で幼稚な質問書
 昨年12月、現市政に批判的な9人の市議らが立ち上げた「市民の声を聞き市民の負託にこたえる議員有志の会」の全員に、返信用の封筒とともに下の2枚の文書が送付されてきた(*2枚目の赤い囲みと矢印はHUNTER編集部)。

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 文書は、同会の市議らが作成し、市内各戸に配布したチラシの細かい部分について、市議らの認識を確認する内容。表紙部分に記された建物のイラスト(HUNTER編集部が赤い囲みと矢印で明示)について、こうした建築物が実際に建設されると認識していたかどうかを問うという、幼稚な質問だ。趣旨も不明確で、公費支出の正当性が疑われる内容だった。

 問題は、「ご回答の有無及びご回答の内容につきましては、公開させていただけますので、あらかじめご了承賜りますよう、お願い申し上げます」の一文。脅迫めいており、まともな役所が作成した文書とは思えない。チラシを見た市の誰かが、怒りに任せてやりはじめた愚行にしても、お粗末すぎて話にならない。

 念のため問題にされた「チラシ」の現物を入手して、記載内容をチェックしてみた。それが下のカラーA4判二つ折り4ページの印刷物で、市長が進める「地熱の恵み活用プロジェクト」の問題点を列挙し、施策の必要性に疑問を投げかける内容になっている。表紙部分に、市の質問書にある「赤白の煙突を有した地熱発電所のイラスト」がふたつ描かれている。

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 地方自治体の議会が、どこもオール与党体制になっているとは限らない。指宿市の場合も11人の市長派と9人の反市長派に分かれているが、チェック機能が働くため、悪い状況とは言えない。「市民の声を聞き市民の負託にこたえる議員有志の会」を結成した9人の市議は、もちろん反市長派で、数多くの課題を抱える「地熱の恵み活用プロジェクト」――とりわけ温泉施設「山川ヘルシーランド」の敷地内に市が建設を計画してきた地熱発電所――には慎重な姿勢をとり続けてきたという。

 HUNTERでも度々報じてきた「地熱の恵み活用プロジェクト」は、市所有の温泉施設「山川ヘルシーランド」の敷地内に温泉熱(蒸気)を利用した発電施設を整備し、売電収入を福祉や産業振興に回すというもの。市は、九州電力と地場の施設管理業者「セイカスポーツセンター」を発電等事業者に選定して計画を進めていたが、国に提出したプロジェクトの許可申請文書に捏造された市民の声や市長選の経過を記載していたことが発覚。プロジェクトの掘削工事にかかる助成金の申請を受けていた外郭団体「独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)は2018年、「地域との共生が図られていない」として不採択にしていた。

 市は今年度、新たに九電1社を事業者に選定して再度の助成金申請を行ったが、JOGMECは「地元の理解という最大の要件がクリアされていない」と判断し再び不採択の決定を下している。

 市民の同意を得ぬまま、市長の独善で続けられるムダな公費支出――。事業断念どころか、ますます地熱発電にのめり込む豊留市長の姿に危機感を抱いた9人の市議らは、やむなく印刷物の配布に踏み切ったという。
 
 地方自治体の議員が、「県政報告」や「市政報告」を頒布するのはよくあることだ。もちろん、激しい権力批判を記載した内容のものもある。だが、そうした印刷物に首長が反応して、文書で内容を糾弾するようなマネをしたというケースは聞いたことがない。なぜなら、首長と議員のやりとりは、議会=議場で行われるべきものだからだ。

 指宿市長名で出された議員あて質問書は、明らかに議会の存在を無視したものであり、常軌を逸した愚行。ルール違反をやっているのは市側なのである。

■自身への質問書は無視
 そもそも、豊留市長に、他者に対して「答えろ」と言わんばかりの迫り方をする資格はあるまい。

 昨年HUNTERの取材で、2018年2月に行われた指宿市長選の際、選挙事務所を訪れた地熱発電事業の関係者が市長の支援団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に10万円ずつ2回、計20万円を渡していたことが発覚。選挙期間中、しかも選挙事務所で行われた業者側の寄附が市長の「選挙運動費用収支報告書」に記載されていなかったことも明らかとなり、配信記事で選挙に関するすべての収入と支出を報告するよう求めた公職選挙法に違反するのではないかと指摘していた。この取材の過程で市長に質問書を提出しているが、今日に至るまで回答はない。意に沿わぬことに対しては、公費を使ってまで他者を痛めつけようとする市長のこと、質問を再掲しておくので、ぜひともご回答をいただきたい。

指宿市長 豊留悦男様

 平成30年2月に行われた指宿市長選挙の際、地熱発電の関係者が、政治団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に、選挙期間中に10万円、投開票後に10万円の計20万円を渡したことが分かりました。選挙期間中の10万円については、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会として受け取った」とした上で、代表者自身も受け取りの事実を認めています。

 しかし、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」が解散に伴い鹿児島県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書には、該当する寄附の記載はありません。

 また、貴殿の選挙運動費用収支報告書にも、該当する寄附の記載はありません。

 本来、選挙期間中の、しかも選挙事務所内で行われた現金供与は、当該選挙にかかる寄附として処理されるべきで、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」が受け取ったとする代表者の説明は不合理と言うしかありません。

 代表者は問題の寄附について、「選挙事務所の会計の人に渡した」と話していますが、一連の経緯からすると、市長の選挙運動費用として費消されたか、あるいは市長ご自身の収入として処理されたのではないかという疑念が残ります。

 地熱発電事業について一定の権限を有する市長への業者側からの寄附は、極めて賄賂性が高いものと思料いたしますが、地熱発電関係者からの寄附金がどこに入ったのか、ご回答いただきますようお願い申しあげます。

 ところで、市議らに下らない質問書を出したことの趣旨を確認しようと、「回答の問い合わせ先」として指定された佐藤寛副市長に話を聞いたところ、とんでもない理屈を主張して記者を呆れさせた。次稿で、そのやりとりの詳しい内容を報じる予定だ。



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