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テレビ局記者、実在する新聞記者の名を騙り取材
“身分詐称”-報道見送りに疑問

2020年1月23日 08:10

 昨年10月、福岡県警を担当していたテレビ西日本(TNC)の女性記者が、西日本新聞の記者だと偽り、取材を行っていたことが分かった。
 西日本新聞に取材手法へのクレームが入ったことで、女性記者の騙(かた)りが発覚。担当者のやり取りの後、TNC側が新聞社に謝罪したが、報道の現場で起きた“身分詐称”という重大事案であるにもかかわらず、両社とも報道していなかった。
 問題を起こした女性記者が所属するTNCは、西日本新聞の系列。グループ内の隠蔽を疑う声が寄せられたため、関係者に取材した。

■事案の経緯
 関係者によると昨年10月、福岡県内で起きた事件の取材にあたっていたTNCの女性記者が、関係者に電話取材した際にトラブルが発生。相手の怒りをかった女性記者は、「私は、西日本新聞のN(実際は実名)と言います」と知り合いの記者の名前を騙ってその場をごまかしていた。

 「西日本新聞のN記者」は実在しており、TNCの女性記者と同じ警察署の担当。TNCの記者は、取材の失敗と恐怖心から、とっさにその新聞記者の名前を出したものとみられている。

 10月24日頃、取材を受けた事件の関係者から西日本新聞に、「おたくにNという記者はいるか。TNCの○○と嘘をついて取材をしようとした」などとクレームが入り、問題が発覚。同月28日になってTNCの報道部長が西日本新聞を訪れ、件の女性記者が「西日本新聞のN」を騙って取材したことを認め、謝罪したという。

 TNCの女性記者がとった行動は、取材対象を騙して話を聞きだすという、報道倫理上絶対に許されない行為。名前に加え所属会社も嘘だったとなれば、犯罪行為に等しい所業だ。HUNTERは昨日22日、西日本新聞社とTNCに文書による取材を申し入れ、事実経過の確認と「なぜ一連の事実について報じなかったのか」という点について、両社の見解を求めていた。

■西日本新聞の傲慢回答
 西日本新聞に対する質問を正確に記しておきたい。

Q1 上記(事案の経緯を実名入りで列挙したもの)の内容に間違いはありませんか?

Q2 報道に携わる者が、身分や名前を偽って取材するなど、許されることではありません。しかも、TNCの記者は、御社と御社の記者の名前を騙っています。西日本新聞は、なぜこうした事実について報じなかったのですか?

 これに対する西日本新聞社の回答が、下の文書だ。

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 答えになっていない。前述した質問内容で明らかな通り、HUNTERは西日本新聞社としての見解を求めているのであって、「他社による取材活動」について聞いたのではない。社名を使われた西日本新聞が、“身分と名前を偽ったTNC記者の取材”について、どう考えているかだ。質問書に記された経緯に間違いがあるか否か、そして西日本新聞か事案の顛末を記事にしなかった理由は何か――可能な範囲でそれを明かすのが報道の在るべき姿ではないだろうか。

 何様か知らないが、“記載の際は「西日本新聞社広報部は…」との表記でお願いします”という上から目線の一文にも驚くしかない。西日本新聞から、HUNTERの記事の書き方を指定されるいわれはない。広報だろうが、報道だろうが、社としての見解を送ってきたことに変わりはあるまい。このレベルの低い回答文書は、「西日本新聞社」が寄こしたものなのだ。

 一方、もう片方の当事者であるテレビ西日本からの回答も、不誠実なものだった。
                                                             (つづく)



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