三反園訓鹿児島県知事が10日、開会中の県議会で、2016年の知事選を前に反原発派と結んだ「政策合意文書」について認識を問われ、「目的は達成している」と答えた。
しかし、三反園氏が政策合意の“前提”として反原発派と約束したのは、『廃炉」と『反原発派を入れた原発検討組織の設置』。知事は政策合意締結後の会見でも、そのことを明言していたはずだ。
目的はまったく達成されておらず、県議会での答弁は事実上の合意破棄宣言となった。
■一方的に破棄された「政策合意」
10日の鹿児島県議会で、自民党の議員から政策合意についての認識を問われた知事は、「知事就任後、実現に向けて取り組んでおり文書の趣旨、目的は達成している」と述べた。
だが、周知の通り問題の政策合意は、三反園が反原発派に『廃炉』と『反原発派を入れた原発検討組織の設置』をもちかけた結果結ばれたもの。三反園自身が会見の場で2点の約束を認めていたし、それがなければ政策合意は成立していなかった。
三反園が反原発派に政策合意を持ち掛けたのは、知事選で伊藤祐一郎前知事に対抗する候補者を一本化するため。つまり、反原発派の票欲しさに、考えてもいなかった「脱原発」を持ち出したに過ぎない。
ペテン師の常で、口から出たのはその場限りの“できない約束”。反原発派には、『廃炉』を実現するため『原子力問題検討委員会』を設置するのだと説明していた。政策合意時の立会人に話を聞くと、当時の経緯はこうなる。
・2016年6月に、三反園側から県知事選の候補者一本化に向けて協議したいとの申し出があり、関係者が集まった。集まったのは、反原発派を代表して知事選に出馬することを表明していた平良行雄氏(現・鹿児島県議会議員)と2012年知事選に出馬し20万票を集めた反原発・かごしまネット事務局長の向原祥隆氏、三反園本人とある国会関係者の4人だった。・鹿児島市内のホテルで、三反園の方から政策合意の案が提示され、意見を出し合った。
・「原子力問題検討委員会(現・鹿児島県原子力安全・避難計画防災専門委員会)」設置の意味について三反園氏は「廃炉にするため」と明言。検討委員会に原発反対派も賛成派も入れると約束した。
・三反園は、「約束を守りますから、信じて下さい」と何度も発言。翌日に行った候補者一本化の記者会見でも、廃炉を目指すことや原子力問題検討委員会に反原発派を入れると発言した。
政策合意が締結されたことで候補者一本化が実現、平良氏が知事選出馬を取り止め、勢いがついた三反園は知事に初当選する。新知事に求められていたのは、政策合意を誠実に履行することだったが、三反園は就任直後に態度を一変させる。平良氏をはじめとする反原発派との一切の面会を拒否、メールや電話にも無反応を決め込んだのだ。政策合意を結んだ相手と協議もせず、その内容が達成できるはずがない。
■剥き出しになったペテン師の本性
今年春の県議選で初当選した平良氏は9月の県議会で「合意が守られていない」と追及したが、三反園は「合意通り行っている」と開き直った。今度は、「合意は達成した」と事実上の合意破棄。反原発派だけでなく、すべての県民を騙したに等しい。
子供でも分かる話だが、反原発派の目的は原発をなくすこと。前掲の「政策合意書」は、その目的を達成するために結ばれたものなのだ。しかし、三反園が知事になって設置した「鹿児島県原子力安全・避難計画防災専門委員会」には反原発派は一人も入らず、委員長には原発事業者である九州電力から2億円もの研究費をもらっている大学教授が就いた。委員会は原発にお墨付きを与えるための御用機関だ。何をもって「合意達成」と言うのか――。来年の知事選を前にペテン師の本性をむき出しにした三反園に、県民から冷たい視線が向けられている。