政治資金絡みの疑惑を指摘したHUNTERを「訴える」と強がった豊留悦男指宿市長が、今度は、指宿市の事業にダメ出しした国の外郭団体にケンカを売ると言い出した。
市長がケンカを売る相手は、経済産業省の外郭団体「独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)。自身が進める地熱発電事業の助成金申請が2年連続で不採択となったため、「異議申し立て」をするのだという。
自らの非を認めず、市民の声を無視して利権創出に狂奔する市長に、厳しい批判が集中しそうだ。
■地熱発電事業助成金、2年連続で不採択
指宿市が計画するJOGMEC「地熱の恵み活用プロジェクト」は、市所有の温泉施設「山川ヘルシーランド」の敷地内に温泉熱(蒸気)を利用した発電施設を整備し、売電収入を福祉や産業振興に回すというもの。市は、九州電力と地場の施設管理業者「セイカスポーツセンター」を発電等事業者に選定して計画を進めていたが、国に提出したプロジェクトの許可申請文書に捏造された市民の声や市長選の経過を記載していたことが発覚。プロジェクトの掘削工事にかかる助成金の申請を受けていた外郭団体「独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)は昨年、「地域との共生が図られていない」として不採択としていた。
普通ならここで事業を断念するものだが、豊留市長は動きを止めず、新たに九電1社を事業者に選定して地元説明会を開くなどアリバイ作りとみられる作業を続けながら今年度、JOGMECに二度目の助成金申請を行っていた。
申請を受けたJOGMECは、予定の9月を超えて11月まで内容を審査。その結果、地元の理解という最大の要件がクリアされていないと判断して再び不採択の決定を下し、国の外郭団体が事業にダメ出しした形となっていた。
■国にケンカを売る市長
それでも豊留氏は利権創出をあきらめようとしない。今月になって、市議会関係者に「JOGMECに異議申し立てを行う」と明言し、争う構えをみせたという。JOGMECを所管しているのは経済産業省。豊留氏は、国にケンカを売ると言っているに等しい。
そもそも、助成金申請が不採択になったのは、指宿市が“地元同意”という公金支出に必要な要件を満たせないまま、事業推進を強行しようとしたからだ。豊留市長は、書類が揃っていれば助成金が出ると考えているのかもしれないが、「3.11」以降エネルギーにかかわる施策で重要視されるのは地元の意見。市民の声を捏造するような指宿市に、簡単に公金支出が認められるはずがない。
霞が関のある関係者は、指宿市長のこうした姿勢を厳しく批判する。
「何度JOGMECに助成金を申請しても、地元の住民や旅館業者に理解が得られていないのだから指宿市のプロジェクトにお墨付きを出すわけにはいかない。当然だろう。市政運営の失敗を棚に上げて、JOGMECに異議申し立てというのでは、ただの責任転嫁だ。きちんと指宿市民と向き合い、地域がもろ手を挙げて賛成するような施策を再構築すべきだろう」
■疑惑の市長に批判の声
2015年にスタートした市の地熱発電事業は、市所有の温泉施設「山川ヘルシーランド」で蒸気を取り出す井戸を整備し、九州電力などが建設する発電施設に蒸気を売却、余った熱水を農業や観光に活用する構想だった。
しかし、泉源の枯渇を招きかねない杜撰な計画に、危機感を抱いた複数の温泉旅館業者が反発。温泉施設の許認可権を持つ環境省に「地元合意が得られていない」と訴え出るなど市民からも反対の声が噴き出し、事業そのものは平成28年に凍結されていた。
唐突に事業再開を言い出したのは豊留市長で、昨年2月の市長選で3選を果たした直後に「地熱の恵み活用プロジェクト」の再開を宣言。市民の同意を得ぬまま、環境省など関係機関に事業推進のための各種申請を強行していた。
豊留市長を巡っては、市長選の期間中に同氏の陣営関係者が地熱発電業者側から10万円ずつ2回、計20万円を受け取っていたことが判明。市長は、この問題を報道したHUNTERを「訴える」と公言している。
指宿市在住の会社経営者の話。
「市が計画した地熱発電事業は、市民の同意が得られていない。いったん凍結したものを勝手に再開して、国の外郭団体から二度にわたってダメ出しされたのだから、市民に謝って終わりにすべきだろう。九電と裏の約束でもあるのかもしれないが、それは市民と無関係。市の振興策を地熱ばかりに頼るのではなく、別の道を模索すべきだ。『できない、知恵がない』というのなら、責任をとって即刻市長を辞任すべきだが、それもやらない。政治資金疑惑にも口をつぐんだままで、実際にHUNTERを訴えたわけでもない。市長は、指宿に混乱をもたらしているだけだ」