昨年2月に行われた指宿市長選挙の際、選挙事務所で現職・豊留悦男氏(67)=自民、公明推薦=の陣営が地熱発電事業を計画中の業者から受け取った20万円が、市長の支援団体「豊留悦男後援会」が鹿児島県選挙管理委員会に提出した平成30年の政治資金収支報告書に記載されていないことが分かった。
業者からの20万円は、市長の選挙運動費用収支報告書にも解散した他の二つの関連団体の収支報告書にも収入として記載されておらず、後援会の記載内容がどうなるのかが注目されていた。賄賂性の高いカネが、闇に消えた格好だ。
■政治団体代表が認めた選挙事務所での金銭授受
同年1月28日に告示された指宿市長選挙は2月4日に投開票が行われ、元小学校校長で現職の豊留悦男氏=自民、公明推薦=が、元市議の新人を約2,500票差で破って3選を果たしていた。
問題の現金授受が行われたのは豊留市長の選挙事務所の中。選挙期間中と投開票日の2回、市内で地熱発電事業の計画を進めている業者が、市長に選挙事務所を提供していた政治団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に、毎回10万円の計20万円を渡していた。「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」は、平成29年10月2日に設立され、昨年年7月23日に解散していたことが確認されている。
「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者はHUNTERの取材に対し、「(業者は)2人で来た。事務所で10万円受け取ったのは事実」と業者から10万円を受けとったことを認めた上で、「10万円は『豊(ゆたか)にする会』としてもらったが、選挙事務所の会計の担当者に渡した。2度目の10万円は覚えていない」などと説明。同会の会計責任者は、「自分は体調を壊していたため、選挙事務所に行っていなかった。誰が収支報告書を作成したのか知らない。(自分は報告書を)作っていない。頼まれて(宣誓書に)名前を書いて、ハンコを捺しただけ」と関与自体を否定していた。
■事件性が問われる業者のカネ
「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者の説明内容を検証するため、同会が解散するにあたって選管に提出した政治資金収支報告書を確認したところ、業者からもらった20万円の収入は未記載。市長陣営の確認団体「指宿の未来を考える会」(昨年1月25日設立、2月28日解散)の政治資金収支報告書にも、該当する寄附の記載はなかった。
選挙期間中、それも選挙事務所の中で現金提供が行われた以上、業者からの20万円は選挙資金として候補者の収入になったとみなすのが常識。しかし、豊留氏の選運動費用収支報告書には、自己資金350万円の記載があるだけで、その他の収入は一切なかった。前述した通り、解散した2団体にも20万円の記載はなく、収入の受け皿として考えられるのは「豊留悦男後援会」のみとなったため、11月末に公表される平成30年分政治資金収支報告書の記載内容に注目が集まっていた。
鹿児島県選挙管理委員会が先月29日に公表した「豊留悦男後援会」の平成30年分政治資金収支報告書によれば、同団体のこの年の収入は前年からの繰越金だけで、寄附された政治資金はゼロ。業者側からの20万円が消えた格好だが、市長の懐に入った可能性も否定できない。
問題の20万円は、指宿市での事業展開を狙った地熱発電業者が許可権限を有する市長に届けた事実上の闇献金。業者は「地熱発電事業がうまく進んだ場合」の追加献金を関係者にほのめかしていたとされ、20万円は便宜供与への期待料だった疑いが濃い。市長が懐に入れたとすれば、“贈収賄”が成立する可能性もある。
HUNTERは今年1月、地熱発電関係者からの寄附金をどう処理したのか確認するため豊留市長に質問書を提出していたが、今日まで回答はない。