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暴走政権に急ブレーキ 桜疑惑にカジノ疑獄、辺野古移設は計画破綻 

2019年12月27日 10:00

img_primeminister.jpg 令和元年の年末にきて、7年間続いた安倍晋三政権に綻びが目立つようになった。
 政権が成長戦略の切り札に位置付けてきたカジノを含む統合型リゾート(IR)事業に絡み、東京地検特捜部が元内閣府副大臣の秋元司衆院議員を収賄容疑で逮捕。米軍普天間飛行場(宜野湾市)を移設するために強行されている辺野古の新基地建設は、工期が大幅に延び、整備費が当初見積もりの約2.7倍となる9,300億円にまで膨れ上がるのだという。
 英語に民間試験を導入することなどを軸にしていた大学入試改革も頓挫、「桜の見る会」の疑惑は拡大中と、次から次へと政権の施策にボロが出た格好だ。数の力にモノをいわせ、国民の声を押しつぶしてきた安倍の政治手法が、厳しく問われる状況となっている。

■IR疑獄は政権への警鐘   
 カジノの最大の問題は、ギャンブル依存症が増えること。日本はギャンブル依存症に陥る人の割合が多く、カジノ解禁で借金地獄に落ちたり、自殺したりする人が増加するのではないかと懸念されている。厚生労働省の調査によれば、ギャンブル依存症が疑われる人の数は推計で300万超。日本各地にカジノが設置されれば、この数字がさらに増大するものと見られている。

 IRは政権が成長戦略の柱に据えてきた事業の一つだ。そのため政府与党は2016年12月、カジノ、ホテル、商業施設などが一体となった統合型リゾート施設(IR)を促進する目的で「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(IR推進法)」を、19年には「特定複合観光施設区域整備法(IR実施法」を、それぞれ強行採決してまで成立させていた。

 観光資源に恵まれた日本になぜカジノが必要なのか分からないが、カジノ疑獄が拡大すれば、施策の先行きに影が差すことは必定。安倍政権は、大きな打撃を受ける形になる。

 カジノは博打だ。反社勢力が黙って見過ごすはずがない。巨大利権を巡って、怪しいカネがばら撒かれることは、すでに秋元逮捕で証明された。本当にカジノが成長戦略になるのか――。IR疑獄は、安倍政権への警鐘なのかもしれない。

■兆円規模になった辺野古新基地工事
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古に移設する工事も、“泥沼化”した。安倍政権は埋め立て工事を強行しているが、未着工の北東部・大浦湾側は「マヨネーズ並み」と言われる軟弱地盤。そのため防衛省は今月25日、工期が想定の5年から約9年に、総工費も約2.7倍の9,300億円になる見通しであることを、25日に公表している。

 ただし、沖縄県の試算では“新基地完成までに2兆5,000億円が必要。完成までに13年”――。工事関係者の間からは、「防衛省の推定した予算は最低のラインを示しただけのもの。実際の工事費は兆円規模に膨れあがるし、そもそも軟弱地盤をコントロールすることができるかどうか怪しい」という声が上がっている。

 工期や工事費が膨らむのが当然の公共事業とはいえ、県民の反対を無視して整備する軍用飛行場に、兆円規模の予算をつぎ込むという愚行が、許されるとは思えない。

 沖縄の民意は「移設反対」だ。2度の沖縄県知事選、県民投票、衆・参の選挙と、ほとんどの局面で辺野古移設は退けられた。その県民の反対を押し切り、巨額な予算を投じて辺野古に新基地を建設する必要があるのかどうか――本土に暮らす国民すべてに、そのことが問われている。
 
■頓挫した大学入試改革
 政権が進めてきた大学入試改革も失敗に終わった。口の軽い大臣が発した「身の丈」発言で、大学入学共通テストへの英語の民間試験導入も、国語・数学の記述式問題導入も事実上の無期延期。相次ぐ失態で、入試改革の目玉となった新制度に瑕疵があったことが明らかとなっている。

 税金を使って議論を重ね、決められた方針は一体全体何だったのか?教育現場の声を無視した一部政治家と文部官僚が、業者とつるんでいいように入試制度をいじった結果、残ったのは受験生とその親たちの国への不信だけだった。

■暴走を止めなかったのは……
 国民の声を無視してこの国の民主主義を踏みにじってきたのは、安倍首相と自民、公明の政治家たちだ。第2次安倍政権の発足以来、政権がやってきたことを振り返ってみたい。

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 特定秘密保護法、TPP、安保法、共謀罪法案、集団的自衛権の行使容認、武器輸出解禁、カジノ法――。いずれも、安倍政権以前なら一内閣でようやく一つ片付くかどうかの重要課題だが、首相は国民の声を無視し、数の力で強行突破してきた。無理筋の話がまかり通ってきたのは、庶民には何の恩恵ももたらさなかった「アベノミクス」という言葉に、多くの国民が踊らされてきたからに他ならない。

 安倍首相が掲げた「デフレからの脱却」と「富の拡大」を実現する経済政策が、“大胆な金融政策”、“機動的な財政出動”、“成長戦略”からなるアベノミクス「3本の矢」だ。しかし、成長戦略の一つであるカジノには疑獄事件で黄信号が灯り、首相自ら売り込みに精を出した原発輸出も失敗に終わっている。オリンピックで訪日客が増えるため、国内は一時的に活気づくだろうが、その後の経済戦略は描けていない。

 辺野古移設は事実上の計画破綻、入試改革も頓挫――。政権の責任が重いのは確かだが、行き詰まりが予想された政権の暴走を、止める努力を怠ったマスコミと国民にも責任の一端がある。



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