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福岡県議会原中副議長 後援会の政治資金収支報告書を大幅修正
それでも消えない「虚偽記載」の疑い

2019年12月 5日 08:25

DSCN1192.JPG 労働組合「自治労福岡県本部」からの献金を政治資金パーティーの収入に偽装した疑いが持たれている福岡県議会の原中誠志副議長が、虚偽記載が明らかとなった資金管理団体「原中誠志後援会」の政治資金収支報告書を、大幅に修正していたことが分かった。
 修正された報告書は平成27年から30年までの4年間分。HUNTERが指摘するまで隠されていた収入が加算されているが、付け焼刃の修正だったため不十分で、取材に対する回答文書との整合性がとれていない。無理な修正をほどこしたため、かえって虚偽記載の疑いを強める結果となっている。

■疑惑の自治労資金
 原中誠志後援会が福岡県選挙管理委員会に提出した平成27年と28年の政治資金収支報告書によれば、同会は平成27年2月19日と9月3日、平成28年2月24日の計3回、福岡市中央区天神にある福岡自治労会館で、「原中まさし県政報告会」という名称の政治資金パーティーを開催。27年の2回はそれぞれ150万円、28年は100万円の売り上げで、すべてを自治労福岡県本部がパーティー券を購入した形となっていた。

 しかし、いずれの県政報告会も会場費などの経費が計上されておらず、実際は政治資金規正法が禁じる団体献金を、政治資金パーティーに偽装したのではないかとの疑いが生じていた。

 原中氏自身が不記載を認めた収入もある。原中後援会の収支報告書には、27年3月5日と28年2月25日、福岡市中央区天神の「福岡国際ホール」で県政報告会を開いた事業費として、それぞれ567,598円、676,096円を支出した記載がある。同様に、27と28の両年、「株式会社大吉フーズ」に「お弁当代」などの開催事業費として、それぞれ110,000円と56,000円が支払われていた。ところが、この4回の政治資金パーティーが、いつ開催され、どれだけの収入を得たかの記載は皆無で、収入を隠した格好となっていた。こうした疑問点について原中副議長に文書取材したところ、返ってきたのが次の回答書だった。

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 献金の偽装は否定したものの、平成27年に2回分計579,402円、28年にも2回分計618,133円のパーティー収入があったことを認め、その上で政治資金収支報告書を修正するとしていた。

■修正して傷口拡大
 原中氏側が修正した平成27年分の政治資金収支報告書は、11月29日の時点で保存期間が過ぎたということで廃棄処分になっていた。残った28年分の報告書では、27年から同年への繰越額が29,859円から738,859円へと709,000円も増えていた。ただし、原中氏が認めていた27年の不記載額は前述した579,402円。同年には、判明した不記載分以外にも収入があったということになる。

 28年の年間収入は、3,437,500円から3,917,500円に修正されていた。なぜか報告会の開催事業費支出が増加しているため、原中氏が回答した不記載額618,133円を下回る48万円しか増えていない。

 驚いたのは、取材の過程で、27年と28年に計7回の政治資金パーティーを開いたことを認めていた原中氏が、28年分の修正で3回あったはずのパーティーを2回にまとめていることだ。修正前のページに、どう修正されたかを示すとこうなる。

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 当初記載の自治労会館で開いたとしていたパーティーの収入は100万円。これとは別に、原中氏自身が認めた収入額583,904円のパーティー、さらには同34,229円のパーティー収入の記載が加わるはずなのに、なぜかパーティーの開催回数は2回になっている。100万円を150万円に修正し、会場も自治労会館ではない市内の別のホールに変えていた。“自治労会館でパーティーを開いた形にし、自治労からカネをもらう”という構図を、なかったことにしたつもりなのだろう。原中氏自身が回答した「収入額583,904円、同34,229円」との整合性もなく、付け焼刃の修正で事態を悪化させた形だ。

 27年から2年連続で収入が大きく増えたため、当然繰越金の額も増える。今年の春に提出されていた平成30年分の収支報告書まで修正されていたが、その内容を信用することはできない。

 原中副議長は「修正して終わり」と考えているらしいが、そうはいかない。政治資金収支報告書の記載内容は、基本的に「会計帳簿」に記入された収入と支出を転記したもの。その会計帳簿には、すべての収入と支出が記載されていなければならない。帳簿の記載に間違いがなければ、毎年の総収入と繰越額が狂うはずはないのだ。

 原中氏が、記載内容に疑念を持たれた4年間分の報告書の総収入と繰越額を修正したことは、会計帳簿の記載自体が不正確であることの証明だ。3年保存が義務付けられている会計帳簿自体が、存在していない可能性もある。複数年にわたって特定の収入が省かれていたことについては、“作為”があったと考えるのが普通だろう。問題が「自治労からのカネ」にあることを、原中氏は理解していないらしい。

 



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