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“身を切る改革”とは程遠い日本維新の会所属議員の政治資金処理

2019年12月 4日 08:50

大阪維新.png 2018年の政治資金収支報告書が公表された。「安倍一強」の政治体制が続く中、自民党の年間収入は約263億円でダントツの一位。同党への企業・団体献金の受け皿である「国民政治協会」は、前年比3%増の約24億6千万円を集めている。
 一方、野党の収入は立憲民主党、国民民主党を合わせても100億円あまり。大半が政党交付金で、安倍政権の「強さと金権ぶり」が際立つ結果となっている。
 そんな中、国会議員に月100万円が支給される文書通信交通滞在費(文通費)の使途を「文書通信交通費使途報告書」で公開している日本維新の会の議員たちが、多くの疑わしい資金処理を行っていることが分かった。

■不適切とみられる資金処理がゾロゾロ
 文通費は領収書不要だが、日本維新の会はそれをいったん国会議員の政治団体に寄附して、使途を明かしているという。ガラス張りを強調したいのだろうが、政治資金の処理方法や報告書の記載などから、日本維新の会が唱える「身を切る改革」と相反する事例が多々見つかっている。

 問題を提起したのは、あるシンクタンクが2015年から2017年の、日本維新の会及び大阪維新の会所属の議員の政治資金収支報告書を精査した「報告書」。それによれば、文通費使途報告書に「寄附した」とされた文通費が、政治団体側の政治資金収支報告書に収入として記載されていないケースや、文通費使途報告書に記載のある支出が、政治資金収支報告書にも記載してあり、文通費と政党交付金の両方からカネを引き出したとみられるケースなどが数多くあるという。他にも問題のある資金処理がゾロゾロ――。以下、実例を見てみたい。

 2017年8月8日、日本維新の会幹事長、馬場伸行衆院議員が代表を務める「日本維新の会大阪第17選挙区支部」は、地元の「大阪維新の会堺市南区支部」に100万円を寄付している。だが、受けた側には収入の記載がない。同じ日、「日本維新の会堺市堺区支部」にも100万円を寄付しているが、こちらも記載がない。馬場氏は、南区支部についての報道を受けて“寄附を受けた”と訂正したが、堺区支部は8月8日の日付を9月30日と誤って記載していたのだと釈明した。党幹事長のおひざ元ですら、このようなお粗末さなのだ。

 2017年には同様に、日本維新の会国会議員団から、清水貴之氏(参院兵庫選挙区)の政治団体「清水貴之後援会」に2度、合計で200万円寄附されているが、後援会側の報告書には記載がない。

 井上英孝議員(衆院大阪1区)の「日本維新の会大阪第1選挙区支部」の2018年の政治資金収支報告書には、『ポスター制作費90,128円 SHOWPLANNING 2018年11月9日』という支出が記載されている。これ以外にもSHOW社には2018年で141万円あまり、2017年で154万円あまりの支出がある。また、SHOWPLANNINGと同じ経営者の「山田印刷」に対しては、2016年に149万円あまりを支出していた。

 SHOWPLANNINGと山田印刷を経営するのは、山田浩史という人物で、今年5月、大阪維新の会所属だった大阪市議の不破忠幸氏にウグイス嬢を紹介し、人件費を先払いさせて利得を得たとして公職選挙法違反容疑で逮捕されている。井上議員は、山田氏の「得意先」だったことになる。

 「山田氏のところの印刷代は、他より2割から3割高い。山田氏自身が選挙プランナーのような仕事もしており、印刷代のコンサルタント代金を上乗せしていたという話を聞いたことがある」と井上氏の地元、大阪1区が地盤の地方議員は言う。それが事実なら、支出の趣旨が違ってくるのでまた新たな問題となる。

 維新大阪第1選挙区支部の収支報告が、信頼性を欠いているのは確かだ。同支部の2017年分政治資金収支報告書には『為書きポスター制作費 83,700円 3月14日』の記載があり、銀行振込のコピーが添付されているが、文通費使途報告書を見ると同じ日付で83,700円を支出していた。こちらの挙証書類は、印刷会社の手書き領収書。同じ日に、87,300円づつ2つの印刷代を払ったかたちになっており、明らかに不自然と言えるだろう。
(*下が、同支部の2017年分政治資金収支報告書の記載。次が印刷会社発行の領収書)

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 吉村洋文大阪府知事の資金処理にも疑問がある。2016年の「吉村洋文後援会」(同年解散)の政治資金収支報告書には、開催した3回の政治資金パーティーの収入が約2,900万円と記されている。うち600万円近いパーティー券を企業が買っており、その社名が明らかになっているのだが、このうち30万円分のパーティー券を買ってもらった飲食業K社には「たこやき出張調理代」として60万円を支払い、同じく30万円分のパー券を買わせた製菓業T社には、品代912,960円を支払っていた。業者にとっては、“出すだけよりまし”ということだ。

 調査したシンクタンクの関係者によれば「維新は文通費を政治団体に寄附すれば、使途を明かすことになると言いたいのでしょう。しかし、維新の国会議員の飲食代を見ると、有名店での高額な支出が散見されます。税金で上等なメシを食っているということです」と話す。一例として挙げるなら、前出の井上議員の資金管理団体「井水会」の2018年の政治資金収支報告書には、10万円を超える高級寿司店での飲食が複数回記載されている。

 維新のキャッチフレーズは“身を切る改革”だが、「身を切ると言いながら、太っている」――そんな声が有権者から聞こえてきそうだ。



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