今月3日の県議会で、自民党議員の質問に答える形で再選出馬を表明した三反園訓鹿児島県知事。2016年の知事選で敵対した自民党と公明党から“推薦”のお墨付きをもらい、盤石の態勢を敷くつもりだったらしいが、ここにきて逆風が強まっている。
県内では、前回の選挙で三反園氏を支えた後援会関係者の大半が「反三反園」で走る構え。政策合意で騙された反原発派も、対立候補を模索するといった状況だ。
そうした中、頼みの自民党県議団が、三反園氏から出された推薦願への対応を巡って割れる可能性が出てきた。
■推薦拒む自民党県議団
16日、鹿児島県の自民党県議団が総会を開き、三反園氏が提出した推薦願の取り扱いを協議した。団総会での協議は先週に続いて二度目。長老議員の何人かが声を荒げて意見集約をするよう求めたが、多数の議員が難色を示し、18日の団総会に結論を持ち越したという。
自民党県議団の内情について、ある関係者は次のように話す。
「三反園支持は外薗勝蔵議長や元議長など約8名から9名。なぜかこの人たちは、総合体育館構想で知事と歩調が合っている。利権がお好きなんだろう。自民党県議団は38人いるが、三分の一が三反園派、三分の一が反三反園、残りは中間派という色分けになる。
長老組が三反園支持で一時は強勢だったが、ラグビーワールドカップのチケットをタダでもらい、公費を使って観戦していたことがバレたあたりから風向きが変わった。さらに、(知事が)前回知事選で反原発派と結んだ政策合意の問題などで、県民が知事の人格に強い疑念を抱くようになったため、三反園寄りになりかけていた県議の態度に変化が出た。たしかに、鹿児島市内などの都市部では、知事の評判は悪い。現職だった伊藤さん(祐一郎前知事)が敗れた前回の選挙の時と同じ状況になりつつある。知事が強いとみられているのは、情報が少ない田舎の方だけだ。多くの有権者は、知事は嘘つきだと思っている。
そもそも、三反園さんは前回の知事選で民進党や社民、共産の支援を受けた人物。我々(自民党)は野党会派だったはずだ。自民党が彼を推薦するのは筋が通らない。わざわざ嘘つきを推薦して、恥をかくこともない。どうしても三反園を支援したい人は、勝手にやればいい。県議団は、事実上割れているんだから」
県議団がまとまらなければ、自民党の推薦は得られない。公明は単独推薦などしない。そうなると、三反園氏が政党の推薦や支援がない状態で選挙に突入する可能性も出てくる。
■熱烈支持者も反原発派も“反三反園”
前回の知事選で三反園県政誕生に寄与したのは、反原発派と、伊藤祐一郎前知事の強権的な県政運営に反対する人々。保守、革新の違いを乗り越え、多くの人々が結集した選挙戦だった。
自民党は「公認並み」の扱いで伊藤前知事を支援したものの惨敗。保守王国鹿児島に「脱原発」の野党系知事が誕生したことで、全国の注目が集まった。
しかし、知事就任後の三反園氏は半年もせぬうちに変節。自民党、公明党にすり寄ると同時に、反原発派との接触を断ち、強引な県政運営をするようになる。この間、「みたぞのさとし後援会」の会長を一方的に解任し、追放。主な支援者を遠ざけて建設コンサルの代表者など利権にさとい連中を重用するようになる。
後援会の主なメンバーは、来年の知事選で反三反園に回るのが確実だ。ある元後援会幹部は、次のように知事を突き放す。
「政策的には、何も評価すべきところがない。歴代最低の知事だ。公約も守っていない。『原発を止める』と断言したくせに、九電に行って申し入れをしただけ。『指宿スカイラインを無料化する』という約束は、守らないどころかETCを設置するなど逆行する施策を実行した。県の財政も悪化しており、来年度にこれまでのような予算組をすれば、90億円近く足りなくなるという。私は、前回選挙の仲間たちと、三反園を倒す方にまわる」
「私を信じて下さい」の言葉に欺かれた反原発派の怒りも、沸点に達している。今年9月の県議会で知事は、三反園県政実現のきっかけとなった「政策合意」の当事者である平良行雄氏(現・県議会議員)と3年ぶりに対面。「合意内容を守った」と強弁した。
今月10日には、自民党の議員から政策合意についての認識を問われ、「知事就任後、実現に向けて取り組んでおり文書の趣旨、目的は達成している」と述べて、事実上の政策合意破棄宣言を行った。知事選から3年半、三反園氏から面会はもちろん電話やメールでの接触も拒否された反原発派は“打倒三反園”で結束する。
手弁当組が支えた草の根選挙から、政権与党や各種団体の推薦を受ける殿様選挙で再選――。変節漢が思い描いた選挙の構図は、どうやら実現しそうにない。