労働組合「自治労福岡県本部」からの献金を政治資金パーティーの収入に偽装した疑いが持たれている福岡県議会の原中誠志副議長が、虚偽記載が明らかとなった政治資金収支報告書の「修正」で幕引きを図ろうとしていることが分かった。
疑惑を抱えたまま副議長を続ける意向とされ、安易な対応に県政界関係者からも厳しい批判の声が上がる事態となっている。
福岡県議会は、この問題にどう対応するのか――。
■「修正」を言い張る原中氏だが……
献金偽装や収入の隠蔽といった極めて悪質な違法行為の疑いがある中、原中副議長は所属する国民民主党などの関係者に「政治資金収支報告書を修正すれば問題はない」との説明を繰り返しているという。
たしかに、一連の虚偽記載について確認を求めたHUNTERの質問書に対しても、原中氏は回答書の最後に《なお、記載不備については「収支報告書」の修正を行います。》と記していた(*下が原中氏からの回答書)。ずいぶん甘い考えである。
残念ながら、原中氏を巡る「政治とカネ」の問題は、“修正”で済むような軽い話ではない。原中氏がいう「記載不備」が何を指しているのは分からないが、少なくとも次の事項については明らかな「不記載」があり、意図的ならば「虚偽報告」だ。
・2015年2月25日(収入額:487,402円)、同年11月19日(収入額:92,000円)、2016年2月25日(収入額:583,904円)、2016年6月8日(収入額:34,229円)に開かれた政治資金パーティー「原中まさし県政報告会」の開催日及び収入額のすべて。
・自治労会館で開かれたことになっている2015年2月19日(収入額:150万円)と9月3日(収入額:150万円)、16年2月24日(収入額:100万円)の3回の政治資金パーティーにかかった費用のすべて。
さらに、一連の不記載事項を加えた場合は、2015年、2016年、2017年の収入総額及び繰越額が変わるため、3年分の政治資金収支報告書を修正する必要が生じる。しかも、これですべてクリアできるかというと、そうはならない。原中氏側が政治資金規正法の規程を守って会計処理を行っていれば、3年間分の収支を修正しなければならないような事態にはならないからだ。
どういうことかといえば――。政治資金収支報告書の記載内容は、基本的に「会計帳簿」に記入された収入と支出を転記したもの。その会計帳簿には、すべての収入と支出が記載されていなければならない。帳簿の記載に間違いがなければ、毎年の総収入と繰越額が狂うはずはないのだ。
原中氏側の収支報告に修正する必要が生じたということは、会計帳簿の記載自体が不正確ということ。しかも、複数年にわたって特定の収入が省かれていたことについては、“作為”があったとみるべきだろう。つまり、報告書に記載がなかった4回の政治資金パーティーの収入は、意図的に会計帳簿の記載から省かれていた可能性が高いということだ。そもそも、3年間保存が義務付けられている会計帳簿が、あるかどうかさえ怪しい。
■消せない「自治労からの資金提供」
収支報告書の何をどう修正しようとも、消せない事項がある。自治労が、150万円を2回、100万円を1回の計400万円、原中氏側に資金提供したという事実だ。それが単なる現金供与なら、政党及び政党の政治資金団体以外への「企業・団体献金」を禁じた政治資金規正法の規定に抵触することになる。
ある県議会関係者は、次のように話している。
「政治資金パーティーというのは、何十人、何百人といった広範な支持者にパーティー券を買ってもらい、政治活動費を作り出す仕組みだ。労組が対象のパーティーだったとしても、パー券は組合員一人ひとりが買うべきだろう。原中さんの場合は、収入額のすべてを自治労の組織が賄ったというのだから、これはもう政治資金パーティーではなく献金だ。普通ならあり得ない。
パー券は1枚いくらだったのか、経費はどれだけかかったのか、といった点について証拠を示してきちんと説明すべきだが、原中さんのHUNTERへの回答はあまりに不誠実。偽装の指摘を受けて、修正で事を済ませようなんて、虫がよすぎる」
別の国会関係者は、原中氏が所属する国民民主党にも厳しい目を向ける。
「これだけの疑惑を抱えて、副議長を続けるのはいかがなものか。収支報告書を修正するといっても、偽装献金の疑いは簡単には晴れない。実際に開いた政治資金パーティーの収入を隠していたことも、単なるミスで済む話ではない。虚偽記載は確かなんだから、この段階できちんと責任を取るべきだ。野党は国会で安倍首相のことを、公選法違反だの政治資金規正法に抵触しているだのと責め立てているが、原中のやってることも法律違反だろう。国民民主党の県連幹事長らしいが、自分たちの悪行はスルーするつもりなのかね」
じつは原中氏に浮上した「政治とカネ」の問題は、ある重大な疑惑の入り口に過ぎない。福岡県議会は、そのことに気付いているのだろうか……。